都知事選直前に浮上した小池百合子の経歴詐称疑惑 嘘をついてるのは一体どっちだ!?
TABLO / 2020年6月7日 13時55分
画像はイメージです
本書の読後感は、陸から海をのぞき込んだら、真っ暗な深海が広がっていた、その深海の底まではどうやっても辿り着けないのでは――。そんな怖さを感じました。
世間一般の小池都知事のイメージは、
『兵庫県、芦屋のお嬢様。カイロ大学卒業後、ニュースキャスターへ。日本新党立ち上げ時に政界へ転身。細川護熙、小沢一郎、小泉純一郎ら時の権力者の間を渡り歩き、自民党を飛び出し、一人で東京都庁に乗り込んでいった働く女性のシンボル』
といったところでしょうか。
日本新党、新進党、自由党、保守党、自民党という政治歴を見れば小池都知事には、「政界を上手くわたってきた」という評価が大部分だと思います。
が、本書――『女帝 小池百合子』(文藝春秋)では世間一般のイメージよりさらに深い「何か」を抱えている人物。それが現・東京都知事であると、暗に述べています。生い立ちに起因するのではないか、というのが著者の解釈です。
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【芦屋という土地が彼女に与えた影響は、見栄を張らせるという以上に、もっと根深いものがあるのではないかと、私(註・著者)はこの街を歩いてみて考えるようになった】(『女帝 小池百合子』より。以下「本書」とする)
確かに、東京で言う高級住宅街だと田園調布や成城、自由が丘と言った地名が頭に浮かびますが、少し歩けば分かるようにお屋敷もあれば、つつましやかな生活をしている人もいます。街というものは、一概に「高級住宅街」とくくれないものです。
そして、本書で最も力を入れたのが、小池都知事のカイロ時代の事でしょう。小池都知事と一緒に暮らしていたという「早川さん」(当然偽名)と接触に成功。「早川さん」のインタビューを軸に、ルポを展開していきます。
結論から言うと「早川さん」は小池都知事がカイロ大学を卒業していない。ましてや首席はあり得ないと確信しています。小池都知事の語学は【小池は英語とカタコトのアラビア語口語を必死に務めていたらしい】(本書より)といったレベルとされているのです。
その語学力でカイロ大学を日本人で二番目に、そして日本人女性では初めて、しかも首席で卒業できたのか。官邸ホームページでは小池都知事が防衛大臣だったころの学歴は、
「昭和51年10月エジプト・カイロ大学文学部社会学科卒業」
となっています。
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6月3日の都議会本会議ではこの事について質問され知事は「(『女帝 小池百合子』を)読んでいないのでお答えできない」という答弁に終始しました。とは言え、メディアも小池都知事への援護射撃を行っています。
プレジデントオンラインは5月27日『「カイロ大学卒業は本当」小池百合子東京都知事の学歴詐称疑惑』というタイトル。文中にも「カイロ大が一貫して『卒業』と回答していることは重い事実でもある」とあります。
一方、本書はカイロ時代のルームメイト「早川さん」のインタビューを前面に押し出しています。答えはシンブルです。
「卒業したのか、していないのか」。
これは正に小池都知事vs石井妙子氏・「早川さん」のどちらがが正しくて、どちらかが嘘を言っている事になります。
ちなみに小池都知事国会議員時代の記者対応で、少し興味深い記述がありました。
【(小池議員に)インタビューを始めたが、下を向いて筆を走らせながら、「ぐもーん(愚問)、次」「それで?」「はあ? それ私に聞くの」と言うばかりでまともに応じてくれなかった、あんな嫌な思いをしたことはない、という取材者の声がある。】(本書より)
僕は10年ほど前に、週刊朝日編集部に籍を置いていた事があります。その時に新人の男性記者が、小池議員(当時)にインタビューをしました。まだ取材に慣れていないその記者は、副編集長に「小池さんの本を持っていけ。付箋をつけて」とアドバイスされ本当に読んだのか分かりませんが、その本持参で小池議員に会いに行きました。
帰ってきたその男性記者に副編集長が「どうだった?」と尋ねます。僕は彼らと同じ島(デスク)でしたし、興味があったので聞いていると、「付箋の本を差し出すと、凄く喜んでくれて『あらー、そんなに読み込んでくれたのー』とめちゃ艶っぽかったです」といった主旨の事を言っていたのを覚えています。
因みに、嫌な目に遭ったのは【大抵が無名の女性たちである】(本書より)とあるので、若い男性記者で朝日ブランドをぶら下げたくだんの記者は幸運だったのでしょうか。どちらが本当の「小池百合子」さんなのか、本書の「嫌な目に遭った女性記者」の記述を読んでそんな考えが頭をよぎりました。
いずれにせよ、夏に都議選です。小池都知事が断然有利との下馬評ですが、本書『女帝 小池百合子』を読んでから誰に投票するのか、しばし熟考しても良いかも知れません。<文中敬称略>(文◎久田将義)
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