営業に行ったら性暴力の被害に 立場を利用した卑劣かつ悪質な犯行 女性が感じた恐怖を自称天才編集者にも知ってほしい|裁判傍聴
TABLO / 2020年6月6日 13時55分
写真はイメージです
三浦祐介(仮名、裁判当時26歳)がいきなり立ち上がり窓のカーテンを閉めた時、被害女性は大きな不安を抱きました。それでも自然な風を装いながら話を続けました。相手が「お客様」だからです。不安な表情を見せることは失礼に当たる、と考えてしまったのです。
彼女はただガスの営業のために三浦の家を訪れただけでした。はじめは玄関でやりとりをしていただけでした。
「ドア、閉めちゃおうか」
そう言われ部屋に上がるように勧められた時に
「とてもイヤだったけどお客様なので断るのも悪いと思った」
と家の中に入ってしまったのです。
カーテンを閉めた彼は、
「(ガスの)検針表を持ってくる」
と言って彼女の後方にあるドアから部屋の外に出ていきました。その間に彼女は友人の女性にラインを送っています。
「ヤバい。ちょっと怖い」
という内容です。そして彼女は何気なく後ろのドアの方を振り返って見てみました。そこで見たのは、ズボンを下ろしている男の姿でした。
慌てて目をそらしました。前に向き直り、とにかく落ち着こうとしました。
しかし彼はいきなり後ろから抱きついてきました。服の上から胸を下から持ち上げるようにして揉まれました。
彼女は手で制止はしました。しかし相手は「お客様」です。強い言葉や態度で拒絶をすることはできませんでした。
「いやいや、ちょっと…」
と笑顔を作りながらやんわりと言うのが精一杯でした。
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彼女の危機を救ったのはボイスレコーダーでした。営業の際には常に持ち歩いているもので、これの存在に三浦が気づいたのです。
それからの彼はボイスレコーダーを気にするような素振りを見せながら、先程までとはうって変わって早く彼女を帰そうとし始めました。
家を出てすぐのことです。
「あの状況から抜け出せた」
そんな安堵の思いから、彼女の目から一気に涙が溢れでてきました。
その後の警察の取り調べで彼女は、
「事件後の今も恐怖は続いています。仕事は続けられなくなって退職しました。客に強く言えない営業の立場を利用した卑怯な犯行で、絶対に許せません。厳しい処罰を望みます」
と供述しています。
「営業で来た被害女性を見て『きれいだな』『かわいいな』と思いました。抱き締めたり、触ったりしたいと思いました。通報されたくなくてカーテンを閉めました。胸を触りたかったので触りました。頭では許してくれるはずがないとわかっていました。でも、もっと親密になれると妄想をしていました」
以上が彼が取り調べで語った犯行動機です。
再犯を防ぐために今後は実家で両親の監督の下で生活していく、と話していました。そして
「自分の衝動に対してもっと上手に対応、処理するため」
「相手の気持ちをちゃんとわかるようになるため」
という二点の理由から病院に行ってカウンセリングを受けるそうです。
検察官は彼の反省状況を認めながらも
「客であるという立場を利用し、さらに誰かに助けを求めることができない状況下で犯行に及ぶという犯行態様は非常に卑劣かつ悪質なもの」
と断じました。
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人は社会生活を営む中で様々な人間関係を築きます。そこには当然、上下関係というものもできてしまいます。
今回取り上げたような「営業と客」というのもそうですし、「上司と部下」や「編集者とライター」など様々なものがありますが、たとえ立場に上下があったとしても同じ人間です。どんなに立場が上だろうが、人に理不尽を強いる権利など誰にもありません。立場を利用した性暴力など言語道断ですし、検察官の言うようにそれは「非常に卑劣かつ悪質」なものです。
被害女性はいきなり胸を揉まれた時、「笑顔」を浮かべて対応しました。
この「笑顔」は彼女が恐怖に震えながら必死の想いで作ったものです。
こうして「笑顔」を浮かべて泣く人がいる一方、上下関係を背景にした暴力が表沙汰になり裁かれることはあまり多くありません。人の平穏を奪いながら、今日も彼らは平穏に過ごしています。(取材・文◎鈴木孔明)
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