なぜ? コロナ禍で路上に立つしかなかった売春婦達 通報されるも逮捕者ゼロ
TABLO / 2020年6月27日 10時30分
新型コロナウイルスの感染拡大で三密を避けるのが難しい風俗業が深刻な影響を受けているのは世界共通です。東南アジアのタイでは路地に立つ売春婦らが住民の通報を受けたことから様々な人間模様が浮き彫りになりました。
問題の場所はタイの首都バンコクの北隣に位置するパトゥムタニー県タンヤブリー郡ラムプーククート町。国道305号線から北へ伸びる路地ソイ・パンスック(地元住民はソイ・ローギーと呼ぶ)には10年ほど前から売春婦が客引きのために立っています。
毎日20~21時頃になると、路地入り口から奥へ500メートルまでの範囲に売春婦の姿が見えます。その数は10人以上で、若い女性から年配まで。たいてい数人のグループでたむろして、車で近づく客に声をかけています。
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しかし、新型コロナウイルスのこの状況下、マスクもせずに客引きをしている売春婦がウイルス感染源になることを心配した地元住民が警察に通報。そこでパトゥムタニー県警トップが警官50人ほどを引き連れ6月13日21時半頃に摘発に訪れました。
ところが、一人の売春婦も発見できなかったのです。
さらに不思議なことに、同じ夜の午前1時頃にテレビ局がこの路地で売春婦の立つ姿を撮影しニュースに流しました。このことから、県警トップは所轄のタンヤブリー署が摘発情報を売春婦側にリークしたと疑っているようで、今後再び同様のことが起きればタンヤブリー署全体を調査すると語っています。
実は摘発前にある男性がこの路地で声をかけた売春婦とホテルの一室にいるところを隠し撮りした動画が拡散していました。動画の中では警察の摘発が心配と語る男性に対して売春婦が「警察も郡長も話を通してあるから心配なく遊べる」と返答する様子が映っていました。県警トップはこのことも意識したのだと思われます。
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地元住民に寄ればソイ・パンスックに売春婦が立つようになった経緯は、かつて路地の中ほどに女性が接客をするとともに売春も行っているカラオケ店が多数あったからだそうです。その後、多くの店が摘発に遭い閉店。職を失った女性が路地に立つようになったのでした。その誰もが地元出身ではなく他所から来た女性とのことです。
さらに政府による新型コロナウイルス対策での営業停止措置で残りのカラオケ店も休業。食べていくために路地に立って客引きをせざるをえなくなった女性らに同情する声も聞かれます。
実はカラオケ店が軒を連ねていた一帯から少し先にあるホテルを利用客の大半は使用しています。ホテル代込みで1,300バーツ(約4,500円)前後が相場のようです。ホテル側は誰が売春婦なのか判断がつかないので客を選ぶことは不可能と答えました。
今後新型コロナウイルス対策での規制が解除されると、この路地の状況にも変化があるかもしれません。路地名の「パンスック」とは「幸せを分け与える」という意味。この路地の誰もが幸せになることを願ってやみません。(取材・文◎赤熊賢)
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