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コロナ禍で苦境に立つ日本格闘技界 「RIZIN」逆襲なるか 榊原CEOに聞く

TABLO / 2020年7月17日 5時30分

コロナ禍で苦境に立つ日本格闘技界 「RIZIN」逆襲なるか 榊原CEOに聞く

日本格闘技界をけん引する那須川天心vs堀口恭司。

 

6月17日、RIZIN・榊原信行CEOのツイートが気になりました。

 

とにかく今、焦っています

国の要請に従い3つの大会を中止し
7億円の売上が飛んだ

夏のメガイベント再開を目指してここまで来たが
現状では大観衆を入れたイベントは難しい

選手たちも困窮していて
生きていけなくなってしまう

……このままでは座して死を待つのみになる

次の一手をどうすべきか

 

そして、8月9日・10日の2日間にわたり、横浜のぴあアリーナMMで『RIZIN.22』『RIZIN.23』開催が決定。

RIZINと言えば、地上波で唯一、放送している格闘技団体。目指している格闘家が数多く存在します。

しかし、東京都内のコロナ感染者は連日200人超えの報道。格闘技はこの危機にどう立ち向かうのか。一格闘技ファンとしてRIZIN・榊原信行CEOに伺う事にしました。

 

――先日の榊原さんのTweetが話題になりました。真意をうかがいに来ました。

「僕はTwitterで自分の胸の内とか思いをつぶやいたことがなくて、今までプロモーション的なことしか載せていないんですよ。今回は、こういう時だからこそ自分の思いをSNSを通じて伝えるべき、発信しておくべきだな、と思ったんです」

――意図したツイートだったという事ですね。現在、コロナ禍で世の中が「格闘技どころじゃない」という雰囲気になっていると思いますが、いかがでしょう。

「RIZINは大丈夫だろうときっとみんな思っているんでしょうけど、実はそんなことはないんです。コロナの影響は深刻で、格闘技界に向けられた目も……これはべつにK-1がどうのではなく、ただ結果的に政争の具みたいにされてしまったところがありますよね。あの局面(3月22日のさいたまスーパーアリーナ大会)で、もし私が同じ立場であれば、そこまで試合の準備をしてきた選手、試合を楽しみにしていたファンのことを考えたら、大会を中止するにせよ、実行するにせよ相当迷ったと思うんです。結果的には、そのあとから格闘技界に対して風当たりが強くなってしまったと感じています」

 

格闘技大会開催は世間のひんしゅくを買った?

――確かに当時は、ワイドショーやニュース番組でも「格闘技の興行なんかやって大丈夫?」という論調でした。

「そもそも格闘技界って色眼鏡で見られている業界なんです。政府系の支援もなかなか届かないですし。安倍総理とか毎日、『過去最大規模の支援をして』と言うけども、今が大変なわけです。あまりにもシリアスな状況を僕らは実感しているし、選手にもどこまで話していいのか難しいところですが率直なところをツイートしました。

でも、このタイミングだから、苦しいことは苦しいとちゃんと伝えておくべきかな、と。ホントににっちもさっちもいかないんですよ。興行に打って出れば『自粛』という名の下、『コロナ警察』みたいな人たちから袋だたきに遭う。それでも大会を開かないと売上は上がらないわけです」

――「世間vs格闘技」みたいな図式にも見えました。でも興行をしないと選手も運営も生活できないというジレンマですね。

「そうですね。4月が終わり5月が終わり6月になって、突然血液であるお金が止まることの衝撃ですね。それを乗り越えていくことの苦しさというのはRIZINなんかは言ってしまえば吹けば飛ぶような運営母体なので、このままだと座して死を待つことにもなりかねないなという、あのツイートは心の叫びですね」

――それはファンの方とか格闘家の方たちにも伝わったと思います。

「強烈な形で伝わっちゃったかもしれないけど、下駄も履かずに7億……僕らは4月19日の大会、これはチケットも売っていましたが開催できずに払い戻しです。そこで上がるはずだった売上がなくなった。

5月17日の仙台大会も同時に中止した。そのタイミングではなんとかやれるかなと思っていた7月5日の大阪の大会もゴールデンウィークぐらいに発表しなくちゃいけないところで、一番感染者数も増えていたタイミングだったし、これは無理だな、と。

実はめちゃくちゃ水面下でもがいていたわけですよ。何とか、この中でも三密を避けた大会を模索してみたり、いろんな自治体とも話を繰り返してきた。ファンの人とか選手には緊急事態宣言が出て、「我々としてはこの時間を前向きに捉えて夏にメガイベントをやる」という形でカムバックしよう、とも言ってきました。

これは自分に対する鼓舞でもあり目標設定でもあり、選手とかファンにも、やっぱり希望がなくては生きていけないので、漠然としたものかもしれないけども、そういうものに向かってみんなでいまの時間を乗り越えていこうっていうひとつのメッセージでした」

――先ほど「メガイベント」っておっしゃいました。メガイベントっていうと僕らファンとしては「K-1とも共闘するのか」みたいになるわけです。格闘技って国民的スポーツ・競技の相撲や野球と違って、世間的には率直に言ってしまうと、まだ認知されていないジャンルですよね。そこから底上げしていくには、業界全体で協力し合ってこの苦境を盛り上げていかないと、と思うのですが。

「コロナ禍が逆にひとつのきっかけになって、大同団結するようなことは本当にできればいいなという気持ではあるんですけどね。われわれとしては常にウェルカムだし、それはK-1に対してもUFCに対してもONE に対しても、こんなときだから何か一緒に協力してやろうよということは呼びかけて僕もアクションを起こしたんですけどね」

――つまり実際に、K-1など他団体に働きかけてはいるんですか。

「もちろんです。口だけで言っているだけではありません。実際にそれ対してアクションもして、そういうコミュニケーションの機会を持ったり、具体的なやり取りをしたりしているんです」

――アピールだけではなく、「実務として」動いていらっしゃるってことですか。

「そうですね。そうでないと、それこそメガイベントは、歴史に残るようなことにならないと思うんです。RIZINの中だけのスペシャルマッチではなくて、ほかの団体とかプロモーションとの、このときだけの一期一会の大会があってもいいだろうなと思っています。あきらめてはいないです」

――その気持ちは今でも持っていらっしゃると。

「ピンチをチャンスに変えると言われるけど、ライバルで向き合っている団体同士は、こんなタイミングぐらいしか大義名分も持てないですよね。ただRIZIN自体はもともと団体同士の争いのなかに、2015年に後発で出た組織なんで、そういうことで火に油を注ぐのは嫌だから、当初からフェデレーション構想でプラットホームになって各団体が垣根を越えて出てこられるようにしました。

シュートボクシングもRISEもK-1もパンクラスもDEEPも修斗も、団体同士で団体対抗戦っていうと、それもまた大きな座組でどう向き合うかっていうところがあって一足飛びにいかない。なので僕らが中立の第三者として2015年から、格闘技界で必要とされるのはそういう組織だろうということで、その方向性を決めたんですね」

――まさに、構想はプラットホームですね。

「最終的にはサッカーのチャンピオンズリーグみたいな形で、それぞれの組織がそのなかの順位を決めて、その団体のトップの選手が出てきて、みたいな形でトップのなかのトップを決めるような舞台ができるといいんですけどね」

――実現したらそれこそ、格闘技の世間の認知度があがると思います。

「そうです。全部がそのカードにはなってないですけど、カードによってはAという団体とBという団体のチャンピオン同士がRIZINの舞台で戦うということはこれまでもあったし、RIZINのグランプリというのも、プロモーションのなかのトップアスリートたちの対抗戦にしたいんですよ」

 

参考記事:天心対メイウェザー戦になぜ「八百長説」が出たのか 武尊対天心戦の価値が下がったのではという危惧 | TABLO

 

大晦日と言えば格闘技だった時代

――それで言うと、17~18年前はPRIDEとK-1が社会現象になるほどのブームでした。大晦日でやるほどの国民的イベントでした。今との違いはどこでしょう。

「スケールが違いますね。今は格闘技がブームと言えるほど社会的に認知はされていないと思うんですよ。PRIDEとかK-1全盛期は、ほかのメジャースポーツと向こうを張っていました。野球よりもサッカーよりも、大晦日は格闘技、と。今、RIZINとか格闘技を観るのと野球とかサッカーを観るのとどっちが面白いかっていうと、圧倒的に野球とかサッカーですよ(苦笑)。

当時は、みんなの興味のあるものベスト3で格闘技が、野球、サッカーを抜いていたことがあるんですよ。でもいまはバスケットのBリーグや卓球のTリーグ、バドミントンも面白いし、みんなの興味があるスポーツの種目が増えている。一方で格闘技は、相変わらず「プロレス・格闘技」って、似て非なるものなのに一緒のカテゴリにされている、というのが実情ですよね。

格闘技もたくさん団体がありますけど、そこまで知っている人は少数派。その当時、吉田秀彦や小川直也もそうだし、秋山成勲とかも出てきたし、そのあと私は直接関わることはなかったけど石井慧にしても、アマチュアのトップアスリートたちが金メダルぶら下げてプロの舞台に挑んでくるみたいなところまでいっていたじゃないですか。今は到底そこまで及んでいません」

――とはいえ、いま現役の選手はそれを観て育った人が多いわけです。

「それはよく言われるんですよ、特に海外でよく言われる。『俺はPRIDEを観て格闘家になった』っていう選手が」

――現在と当時の大きな違いは何なんですかね。

「そもそもの出身母体、PRIDEはやっぱりその前にプロレスという大きな文脈がありますよね」

―ーああ、なるほど。

「その分母を持ってPRIDEという舞台が誕生していくわけじゃないですか。世界的な規模で考えると、UFCを遙かに凌駕していた総合格闘技がPRIDEだったわけですよ。今はそれぞれ自国でローカライズされているものになっていますよね。

世界的なスケール感でこのコンテンツが進んでいかないっていうこともあると思うんですよ。それと圧倒的に団体が増えたことで選手が分散されています。当時は世界中の選手が海を渡って日本に来たんですよ。だからレベルの高い選手がレベルの高い試合を見せる。今は特に外国人選手はいい選手を発掘してくるのが大変で、大半のトップアスリートはUFCにいて、二番手はベラトール。それ以外は自国のプロモーションに何人かいるんですけど、アメリカという大きなマーケットに独占的にいい選手が囲われていますよね」

――PRIDEの選手のレベルの高さは凄かったですね。日本人選手が出てなくても盛り上がっていました。

「そうですね。日本のファンの方たちはそういうものを観るだけの教養とか知識があるんですよ。2015年の頃は、格闘技の醍醐味を魅せるのはヘビー級しかない、という指針でヘビー級にもう一回スポットライトを当てて、ワールドワイドで世界中からトップアスリートを集めようということでやってはみたものの……。パフォーマンスが悪いわけでもないんですよ、ヘビー級の試合も面白いし、いいものを提供できていると思うんだけど、何か足りないんですよね」

 

関連記事:「誰にも媚びない」総合格闘家 朝倉未来選手(YouTuber) 格闘技界は朝倉未来・海兄弟を中心に回り始めた|聞き手・久田将義 | TABLO

 

色気のある選手がいない

――たしかに足りない気がしますね。僕はセルゲイ・ハリトーノフが好きだったんですけど、凄みがありました。

「(うなずきながら)ヴァンダレイ・シウバにしてもそうですね。凄みという点もそうだし、試合のなかで圧倒的な『魅せる力』もありました。今でもUFCなどを観ていると、『この選手いいな』っていう、色気もあるし、オーラのある選手って当然いるんですよ。以前はそういった選手を全部日本に呼んで来られました。僕らは日本にもう一回そういう選手たちに来てもらえるような、それだけの場所としての地場や経済効果をもう一回作り上げたい、という思いはあるんです。でもそこは正直、簡単なことじゃないんですよ」

――「強くて色気のある選手」の参加が難しいということですか?

「端的に言えば、UFCに経済活動の規模で勝たない限り、無理だということです。当初はUFCの牙城を崩すために、RIZINにお金や人を集めるチャレンジをしてみた。でも日本のマーケットだけを軸足というか、ここだけのマーケットが8割9割の売上を占めるということでは難しいんだろうなって早いタイミングで気づいたわけです。

もちろん海外のポテンシャルのある未知なる強豪を呼んで、その限られた人材のなかから自分たちでオリジナルで磨くということはやっています。ただ外国人の選手たちをPRIDEとかK-1の時代のように呼んできて、単純にヘビー級の選手のどつき合いとか戦いを見せても、いまのファンの人たちにはそこまで届かなかったんですよね。

それは2015年にスタートしたときもそうだったし、2016年に入っても、今はここじゃないんだなっていう。日本で熱を入れるには、当然日本人選手が活躍することだし、2016年にも試行錯誤を繰り返していました。例えばミルコ・クロコップが制した無差別級GPは盛り上がったんだけど、でも社会現象になるようなものとか、K-1の頃、PRIDEの頃に匹敵するようなものに一足飛びにはならなかったんですよ。それは残念ながら、ミルコだからですよ」

――ちょっとローカル感があったんですかね。

「PRIDEの時代に活躍した選手が、10何年ぶりにまたベルトを巻くっていうのはドラマチックではあるけども、未来とか新しさとか希望にはつながらなかった。と、いうところで堀口恭司を獲得するんですよ」

<後編に続く>(文◎久田将義 写真◎©RIZIN FF)

 

あわせて読む:RIZIN 浅倉カンナvsRENA戦で勝利者インタビューがCMでブッた斬られた件 | TABLO

 

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