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RIZINとKー1は交わらない 魔裟斗と武尊の決定的な違いとは

TABLO / 2020年7月18日 13時30分

RIZINとKー1は交わらない 魔裟斗と武尊の決定的な違いとは

写真:編集部

 

RIZIN榊原社長のインタビューではコロナ禍での格闘技界を盛り上げるのには、ここで他団体が協力し合って、「メガイベント」だったり、オリンピアの参戦など、格闘技の地位向上という建設的なコメントを頂いて、一格闘技ファンとしては、応援したいという思いになりました。

そういった話題でやはりメインとなるのが、那須川天心vs武尊選手というカード。これはファンの間でもずっと語り継がれている「夢の対戦」です。

こういった事も含めて、コロナ禍での格闘技向上に向けて、K-1側はどのような考えを持っているのか、公平性を保つためにも、インタビューを申し込んだところ一時間くらいでNGの返信をもらいました。

これに文句を言うつもりは全くなく、K-1の方針ならにそれを尊重すべきだと考えました。運営内部にインタビューを出来ない代わりに、さる「事情通」に話を聞く事にしまた<読者の皆様には「事情通」で何となく察してください>(文・久田将義)

 

参考記事:コロナ禍で苦境に立つ日本格闘技界 「RIZIN」逆襲なるか 榊原CEOに聞く 「格闘技界は無くなってしまうのか」(前編) | TABLO

 

―ー先日、RIZIN榊原さんのインタビューをしたんですけど、内容としては今、格闘技界、RIZINが大変な時期でなりふり構ってられないみたいな話でした。そこで次はK-1の運営にお話しを伺いたいと思って、K-1さんにオファーしたんですけど、約一時間でお断りの返信がきまして少し驚きました。

「最初からそういう姿勢なんでしょうね。新規の取材が来たら断りましょうっていう」

――それで、コロナ禍を乗り切れるのかなと思ったりもしたんですね。K-1は「それでいいのか」「あるいは悪いのか」というところをうかがいたいと思いました。

 

 

コロナだからこそK-1は鎖国政策で行くのでは

「K-1はコロナだから余計に鎖国の姿勢でいくんじゃないですか」

――と、言いますと?

「要は広げようとしないんじゃないですかね。言い方は悪いですけど、信者ビジネスなんで。K-1は信者を増やしてやっていくということです。『100年続くK-1』と主催の方とかはおっしゃってますけど。昔のK-1は拡大路線だったじゃないですか。他団体と交流戦をやったり、強い選手を呼んできて、とか。その結果失敗したんで」

――失敗したという評価ですか?

「最後、潰れてしまったじゃないですか。だから新生K-1は堅実にどんどんファンを増やして、システムもしっかり作って、今、ジュニアとかも作ってるじゃないですか。で、直轄のK-1ジムをいっぱい作って、そこから育ってきた選手が活躍して、KHAOSがあってKrushがあってK-1があるというシステムですね。かつ、独占契約をしているので選手はほかに流出しない。そのパイを徐々に広げていこうっていう作戦だと思います。」

――誰が最強かという夢は置いておいて、ビジネスとしてマネタイズできれば良いということなんですかね。

「その中でやってる分には大きなハズレはないですからね。特にコロナみたいな不安定な状況だからこそ、一番手堅いところにいくんじゃないですか」

――なるほど。選手はそれでいいんでしょうか。

「それでいいからK-1にいるんじゃないですか?」

――K-1が出来た時って、「立ち技最強を決める」という石井館長の壮大な理想があって、それでブームになったと思うんですけど、今のK-1は違うという事でしょうか。

 

今のK-1と石井館長が創った立ち技最強を決めるK-1は別物

「今のK-1は昔のK-1とは完全に方向性が違うと思うんですよね。要はちゃんとシステムを作って、昔のK-1の反省点を踏まえている、と。昔のK-1ってオフィシャルジムもなかったし、アマチュア制度も、後半のほうになってK-1甲子園とか出てきましたけど、そういうのもなかった。昔は下部大会みたいなのもなかったじゃないですか。昔のK-1は、他団体のトップが参戦するみたいな感じで、K-1が立ち技最強の頂点の大会」

――今だと、選手が勝った後、マイクで「K-1最高」って言っていますよね。

「武尊も言ってますね。『K-1最高!』って」

――「最強」ではないんですね。

「最強ではないでしょう」

――最強を求める選手の心理として、より強い選手とやりたいっていうのないのでしょうか?

「選手はあるんじゃないですか? 格闘技を始めてプロで試合しようっていう選手の殆どは、強くなりたくてやるんでしょうから」

――そうですよね。ですから、K-1の選手のモチベーションってどうなるのですかね。マネタイズもちゃんとしなきゃいけないのはわかるんですけど、僕らは格闘技をなぜ観るかというと夢を見たいからですよね。例えば、辰吉丈一郎vs薬師寺保栄戦とか畑山隆則vs坂本博之戦とか、10年前だったら山本“KID”徳郁vs魔裟斗戦なんかは格闘技がわからない人も観ていたぐらいでしたけど、そういう格闘技ファンの向こう側をK-1の選手は求めてないんでしょうか。

「求めてない人も、いそうな感じですね」

――一ファンとしては村社会化している感じがするんですよ。

「K-1とキックボクシングは違うからっていうことなんでしょうね。K-1はK-1という競技であり、ジャンルだっていう」

――そうするとK-1というものが創立当時のコンセプトと違っていますよね。最強を決める大会ではなくなっているというか。

「『K-1 WORLD GP』っていうトーナメントやってますけど半分は日本人ですしね。外国人も強いのは他と契約して来られない選手もいますし。昔のK-1とは全く別物です。」

――それは、K-1ファンには良いかも知れませんが、他の格闘技ファンには届かないのではないでしょうか。

 

関連記事:姉・山本美憂氏にかけた言葉にファンも涙 さらば「神の子」山本”KID”徳郁 永遠なれ! | TABLO

 

K-1ファン=格闘技ファンではない

「K-1ファンと格闘技ファンはイコールじゃないんですよ。格闘技ファンはK-1も観るんですよ。K-1も観るしRISEやRIZINなど他団体も観るんですけど、K-1ファンはK-1しか観ない人もいるんです。特に若いK-1の固定ファンみたいな人はそういう傾向が多いようです」

――そういう傾向があるんですか。

「K-1というジャンルのファンなので、K-1の誰々選手が好きとかなんですよね。K-1が目指してるところは、ある意味そこなんです。そういう人がどんどん増えていけば良い訳です」

――さっき言った辰吉vs薬師寺戦みたいな何十年経っても語り継がれたり、いま観ても震えるような試合となると、先日インタビューしたRIZIN榊原さんは「武尊vs天心だよね」と言ってましたけど、実現はないですかね?

「私はないと思います」

――天心選手はやりたがってますよね。

「天心はそんなにやりたいという気はないんじゃないですか。やりたかったらやってあげるぐらいの感じで(笑)」

――武尊選手はどうなんですかね。

「武尊は絶対やりたいでしょう。試合後のマイクで言ってますし、世間的な評価も完全に天心選手のほうが上ですし。メイウェザーともやって世界的に名前も売れてますしね」

――やるとなったら違約金払ってK-1から出ちゃうしかないんですかね。

「今のK-1の体制だとそうだと思いますね。ただ私は武尊はK-1から出る気はないと思います。武尊はあくまで『K-1の武尊』としてやりたいと思うんですよ」

――それはなぜですか?

「K-1に愛情もあるしプライドもあると思いますし、恩義も感じているでしょう。それに『天心がちゃんと手続きを踏んでK-1と契約してくれたらやります』って昔からインタビューで言っていますし」

――自分からは行かないっていうことですね。

「彼は行く気がないでしょう」

――格闘技の歴史から言って、日本人対決って盛り上がるわけじゃないですか。

「実現したら武尊vs天心戦は間違いなく盛り上がりますよね」

――そうすると、運営と選手の思惑はファンと相反するものになっちゃっている気がするんですけど。

 

武尊選手はK-1から出る気がないならマイクアピールも何も言わない方が良いのでは

「そうですね。K-1の運営が離さないでしょうし」

――どうなんですかね、ファンとしてはモヤモヤするんですけど、選手としてはしょうがないんですかね。

「逆に、天心がK-1と契約すれば現状できると思うんですよ。独占契約になりますが。ただ、天心はそこまでしてやりたいかというと、やりたいわけではないと思います。天心はもちろんですけどRISEにもRIZINにもなんのメリットもありませんし」

――地上波でも放送もないですかね。

「天心はそのままRIZINでフジテレビに出られますし」

――地上波の影響は大きいと思うんですよね。

「だから、K-1に出るメリットが天心にないんですよ。」

――ないですね。大晦日にフジテレビの生放送のほうがいいですよね。でもそうなると、格闘技界がつまらなくならないですか?

「もうひとつ現状でやれるとしたら、武尊がK-1を飛び出すか。違約金を払うなり、たぶん訴訟沙汰になると思うんで、そこまでしてもやるか。もっと言うと今まで自分が育ててもらったと思っているK-1に泥かけて出られるかっていうと、たぶん武尊はK-1とケンカする気はないと思います。武尊はあくまでもK-1の武尊としてやりたいっていうところで、じゃあどうなるかというとK-1側が特別に1試合契約を認めるとかするしかないでしょうね」

――ただ、武尊選手は過去にRIZINに上がってますよね。

「そうですね。あの頃はK-1選手何人か出てましたね。まだ天心が出てなくて、会場で武尊に声かけて、やりたいみたいなことを言って」

――リングで武尊選手が天心戦をにおわすマイクが何回かありました。どう捉えていますか?

「私は、(K-1から)出る気がなければ何も言わないほうがいいと思います。今のK-1の運営を見る限り。『天心とやりたい』とか『動いている』とか、ホントに動いているかどうかは具体的な動きが出るまでは言わないほうがいい。具体的にOKってK-1サイドが言うまでは言わないほうがいいんじゃないかなと思います」

――武尊選手から「今、実現に向けて動いています」みたいな事をリングで言われるとファンは期待しますよね。

「そうなんですよね。期待するし、言ってるのか言わされてるのかわからないですけど、言ってまた揉めることもあるじゃないですか。一般社会の仕事だって決定してから、リリースするじゃないですか」

――K-1を築き上げて来たレジェンドファイターはリング外でも身体を張ってきたのではないでしょうか。

「魔裟斗にしろ佐藤嘉洋にしろ、自分を貫いて出たわけですよ。それで時代を作ってきた。彼らにはその覚悟があった。佐藤は全日本キックをいきなり出てしまって、当初は裏切ったみたいな感じになった。所属ジムの会長も裏切った、という雰囲気になっていたんですけど、それでも自分が出たいっていうことで自分を信じてやって、それで最後はちゃんと和解しています」

 

魔裟斗選手は団体を出て自分で道を切りひらいた。佐藤嘉洋選手もそう。だから評価されている

――魔裟斗選手もですね。

「魔裟斗は、全日本キックから出て自分のチームを立ち上げました。魔裟斗の場合は何の当てないところに覚悟を持って一人で出て行ってK-1 MAXという舞台を作り上げた」

――カッコいいですねえ!

「カッコいいですね。魔裟斗があれだけ評価されて、人気があるのって、例えば、ブアカーオ・ポー.プラムック、アンディ・サワー、ジョルジオ・ペトロシアンなどのK-1 MAXのチャンピオンっているじゃないですか。キャリアでいうとサワーもブアカーオも2回チャンピオンになっているし、ペトロシアンは2年連続だし戦績は魔裟斗よりは上なんですけど、魔裟斗があれだけ人気があるのって、道を自ら切りひらいていったからなんですよ」

――いまの言葉で鳥肌立ちました。魔裟斗さん、カッコいいですね。

「そこが魔裟斗のすごいところなんですよ」

――武尊選手と違いますか。

「魔裟斗と武尊と比べるなんてとんでもない話です」

――すごい勇気と覚悟がありますよね。

「パンクラスのジムを間借りして練習したりして」

――練習場もなかったってことですか。

「当初は自分のジムはなかったみたいですよ。そんな中でK-1 MAXっていうのを作り上げていった。だから魔裟斗はレジェンドなんですよ」

――まさにミスターK-1ですね。

「魔裟斗がいなかったらK-1 MAXはもちろん、今のK-1もないです」

―ーテレビで見ていましたが、最初に優勝したアルバート・クラウスにストレートで負けて、でも日本人選手は魔裟斗選手ひとりしか出てなくて、それなのに盛り上がっていましたね。

「昔のK-1ってそんな感じだったんですよ、世界大会になったら日本人一人か二人、あとは外国人選手のトップどころみたいな感じだった。今のWORLD GPとは違うんですよ」

――今のWORLD GPは日本人ばかりですね。とにかく、強いのはもちろん魔裟斗選手の生きざまみたいなところを合わせて彼がカリスマとかと言われている所以ですか。

「そう、そこがカリスマたるゆえんですよね」

――選手からの人望もあるワケですね?

「K-1 MAXに出ていた選手はみんな『魔裟斗さんのおかげ』と思っているんじゃないですか(笑)」

――スケールが違いますね。

「そうなんですよ。だから申し訳ないけど魔娑斗と武尊を比べちゃダメです」

 

RIZINとK-1は交わらないのか、と格闘技地位向上を願う者としては残念ですが、実現は難しそうです。ですが、インタビューにあった通り、魔裟斗のように団体を飛び出て道を切り開く覚悟があるのなら、「夢のカード」が実現し、「ファンの向こう側」にまで届くのではないでしょうか。(インタビュー◎久田将義)

 

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