感染拡大の原因は『エピセンター』か 火急の対策がなければ「目も当てられない状態に!」
TABLO / 2020年7月22日 5時30分
写真はイメージです
「エピセンター」という言葉を知っていますか?
これはウイルスの「感染集積地」や「震源地」という意味です。
7月16日に開催された国会・参院予算委閉会中審査に参考人として招致された東大先端科学技術研究センターの児玉龍彦名誉教授が、新型コロナウイルスの感染拡大に懸念を示した際、頻繁に口にしていたことで注目されています。
いま“第2波”の兆しが見え始めているなか、児玉教授はこの「エピセンター」の対策こそが急務だと熱弁していました。なんでも、この「エピセンター」の対策をすぐに行わなければ、「今日(7/16)の(感染者数増加の)勢いでいったら、来週は大変になります。来月は目を覆うようなことになります」とのこと。
緊迫する事態を迎える前に、私たちもこの「エピセンター」についてきちんと知っておきましょう。
クラスターとの違い
まず、これまでの新型コロナの感染ピークは大まかに3つに分けられます。
1つは3月に東京で始まったもので、中国の春節に絡んだ旅行者由来になります。次は4月のピークで、こちらは欧米からの帰国者がもたらしたものです。そして、6月からの広がりについては、無症状者やそのなかで免疫のできにくいスプレッダーが増えたことに由来する可能性が考えられるとのこと。
つまり、日本国内に「エピセンター」が形成されたことで感染が広まっているというのです。要するに自粛しにくい日常生活圏のなかに、感染する確率が高いエリアが次々と増えていくということで、これは本当にまずいと思いました。
次に「エピセンター」をもう少し詳しく説明します。
新型コロナのニュースでよく耳にするのは「クラスター(集団感染)」ですが、児玉教授いわく「エピセンター」は「クラスター」と全く違うのだとか。
この「エピセンター」は、先述したように「無症状者やそのなかで免疫のできにくいスプレッダーが持続的に増えていき、そこが震源地となって周囲に感染を広げていく」ということになります。
つまり「クラスター」が発生する土台が「エピセンター」ということになるわけで、ここを何とかしないと感染者の増加は止められないことになります。
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全国一律のステイホームに意味はない
教授も言ってましたが、全国一律のステイホームには意味がなく、「エピセンター」を見つけて重点的に対策するのが重要とのこと。ちなみに「エピセンター化」している地域としては、東京都の新宿や埼玉県、大阪府などの大都市圏だと言われています。
そして、この「エピセンター」を対策するためには“物量”が必要です。
無症状者が持続的に増えることが原因なのですから、「エピセンター化」している地域の住人や就労者を網羅的に感染者隔離・追跡していかなければなりません。
実際、海外のエピセンター対策では「エピセンター」になりそうな人に対して大規模なPCR検査を行っているそうです。
例えば、韓国がクラスターを出した宗教団体の信者20万人以上に対してPCR検査を行っていますし、シンガポールは外国人労働者30万人超に対して抗体検査とPCR検査を実施しました。
無症状者は外から見るだけではわからず、自己申告もできないわけですから、これまでの状況から「エピセンター化」している地域を特定して、しらみつぶしに検査をすることでしか対策できないというのは、専門家じゃなくても頷ける話じゃないかと思います。
また、ちょっと怖いのがガイドラインについてです。
現在の日本では、感染者増加の対策として国やさまざまな機関がガイドラインを設けています。「2mのソーシャルディスタンス」とか、「入場者数の制限」なんかですね。このガイドラインというものは、ある一定の条件に基づいて「劇場ならこうしましょう」「電車は大丈夫です」というように決められているのだそうです。
しかし、感染者数とか「エピセンター化」みたいな状況によって、ガイドラインは流動的に変えなければ意味がないのだそう。つまり基準から外れてしまうような状況になったとき、ガイドラインを守っているから安全とはならないということです。
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大人の事情により対策を打つのが難しい
だからこそ、大元である「エピセンター」の“制圧”を進めていくべきということなのでしょう。
それならすぐに対策したらいいと思うかもしれませんが、いろいろな事情で厚生労働省や医療機関が単独で進めるのは難しいようです。
例えば、感染検査は厚生労働省が指定した検査所でないとできないため、何万件できるという検査能力のある機関や企業があっても、任意で検査できないのだとか。
そういった大人の事情や法律的な制限みたいなものを鑑みると、国会しか先頭に立って動けないんですというのが児玉教授の見解でした。でないと、冒頭の「目を覆うような事態になりますよ」ということになるわけです。
ちなみに、参院予算委閉会中審査の翌日(7/17)に内閣府の新型コロナ担当大臣(全世代型社会保障改革担当大臣)・西村康稔氏の定例記者会見が行われました。
そこで、前日審査で児玉教授が語った懸念を受けての今後の対応策について記者から聞かれると、「今の感染状況に対して、あるいは今後の感染がどのように広がっていくかについては」と答え、「極端な楽観論はないが、当然、誰にもわからない。神のみぞ知るという部分がある」と述べました。
国も“大人の事情”でやれないということかもしれませんが、それではどこがやってくれるんだろうと…。
少なくとも、私たちは「エピセンター」の危険性を念頭に置いて、これまで以上に自粛や自衛の意識を高めていく必要がありそうです。(文◎編集部)
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