「中国から逃げろ」!? 脱中国に日本政府が補助金を支給 すでに87企業が脱出成功 製造メーカーは日本回帰と東南アジアへ
TABLO / 2020年7月27日 10時50分
写真はイメージです
〝世界の工場〟が終わるかもしれません。
これを聞いて「何のこと?」と思う人がほとんどでしょうが、この〝世界の工場〟とは「中国」のこと。安くて豊富な労働力や広大な用地を求めて世界各国の製造メーカーが進出し、いまでは鉄鋼や化学、機械などの工業製品全般で圧倒的な生産高を誇っています。つまり世界の工業製品は完全に〝中国頼り〟だったわけですが、その状況を変えるべく世界が動いているというのです。
2020年4月7日、日本政府は「2020年度予算補正予算案」を決定しました。その内容は新型コロナウイルスの感染拡大を受けての経済対策的な意味合いが色濃く、そのなかに「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」として2200億円、「海外サプライチェーン多元化等支援事業」として235億円を計上しています。これらは新型コロナウイルスの感染拡大で、主に中国などに依存していたマスクや医療品、部品や素材などの供給が滞ったことを受けて、既存の生産拠点を国内に回帰したり(こちらが2200億円)、アジア諸国に分散(こちらが235億円)しようというもの。もっとわかりやすく言うと、日本国内に工場をUターンさせたり、指定した東南アジアに海外拠点の工場を移転したら補助金を出しますよということです。
つまりはサプライチェーン(部品供給網)の〝脱中国〟を意図したわけですね。
これまでも世界的に〝中国頼り〟という状況を懸念する声はありましたが、日本では中国に対して弱腰ということもあって楽観的な姿勢を見せていました。しかし、新型コロナウイルスという予想外の事態に直面して、ついに「これはマジでヤバイかも?」と思ったのではないでしょうか。
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医療関連、航空・自動車・電子機器も
この動きに対して、中国側は余裕の姿勢を見せていました。「中国網日本語版(チャイナネット)」2020年5月14日付の『補助金で日本企業の中国撤退を支援?「いえ、遠慮します」』という記事では、日本政府が国内回帰する企業に補助金を出すことについて、「日本企業の大規模な国内回帰、もしくは東南アジアへの移転が生じる可能性は低いと分析されている」と紹介。トヨタ自動車やLIXILグループなど取材に応じた日本企業5社が「中国で製造を継続する意向を示した」としています。王者の余裕で構えているという感じなんでしょう。
日中両国の思惑が錯綜するなか、7月17日には日本の経済産業省から「補助金」の第1弾について発表がなされました。それについて「共同通信」が報じていて、「山陽新聞朝刊」2020年7月18日では『国内供給網強化 マスク生産など574億円を補助 経産省、第1弾』という記事を掲載。経産省が発表した補助金の採択事業について、「生活用品大手のアイリスオーヤマのマスク生産など57件に計574億円を補助する」とし、「供給網の分散化を進めるための支援事業についても30件を採択したと公表。20年度補正予算で計上した235億円のうち、半額程度が支払われる見通し」と紹介しています。
また、「読売新聞 東京朝刊」2020年7月18日でも『生産「国内回帰」57件補助 国、総額574億円 東南ア移転も支援』という記事で追随しています。補助金を受けた件数や金額についてはほぼ同じ内容で、補助金を受けた企業については「アイリスオーヤマのマスク工場をはじめ、医療機器や医薬品など医療関連が多かった。航空機や自動車、電子機器の関連部品の工場も対象」と紹介。支援事業については「東南アジアに拠点を作る企業では、タイやベトナムへの移設が多かった。マスクやガウンなど医療物資のメーカーが大半を占めた。ハイテク製品の生産に欠かせないレアアース(希土類)の関連企業もあった」としています。
これらのメディア以外でも、日経の英語版、アジアプレスなんかでも「補助金」の第1弾に関するニュースが掲載されました。それらを受けて、法輪功系列のメディアグループが発行する多言語メディア「大紀元時報」の日本版ではさらに詳しく紹介しています。
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それでも「余裕」を見せる中国側
まず、補助金を受けた企業としてアイリスオーヤマを挙げたうえで、さらに「洗剤メーカーのサラヤも支給要件を満たしている」とし、「そのほかに、シャープ、塩野義製薬、テルモ、カネカなどの大手企業も今回の補助対象に名を連ねた」と紹介。「光学ガラス専門メーカーであるHOYAは、工場の中国からベトナムとラオスへの移転を計画している」と続けます。
そして、次のコーナーでは『世界で動き出す、製造業の「脱中国依存」が本格化か』と続け、アメリカのサプライチェーン自国回帰の動きやイギリスの「プロジェクト・ディフェンド」を紹介。また、ドイツについても「2019年11月12日付けのAFP通信によると、在中ドイツ商工会議所(AHK China)が在中ドイツ企業526社を対象に実施したアンケート調査では、104社が中国から撤退することを決定、または検討している」とし、「そのうち3分の1は中国からの完全撤退を計画している」としています。そして、台湾企業についても「2020年事業計画の一環として、中国からの生産移管を検討している」とし、ホンハイやクアンタ、コンパルなどの台湾大手企業が生産能力の〝脱中国〟を計って多額の投資を行っていると紹介しました。
一方、中国側はこの段階でもまだ余裕の姿勢を崩していない模様。中国や韓国の情報を発信するポータルサイト「サーチナ」2020年7月23日付では『中国生産拠点の日本回帰に呼応した日本企業は「たった57社」=中国メディア』という記事がアップされました。同記事では中国のポータルサイト「百度」の2020年7月22日付の記事を引用しながら展開。日本の補助金を希望した企業を「わずか87社」「日本への拠点回帰を望んだ企業はわずか57社」と紹介しています。また、「そのうえで、帝国データバンクの統計として、2019年現在で中国に拠点を持つ企業は1万3685社である」とし、「(日本への拠点回帰を望んだ企業は)その大部分は中小企業であり、中国に拠点を持つ大手企業はなおも中国でのビジネスに自社の発展を托している」と紹介しました。
超大国たる中国は余裕しゃくしゃくのようですが、世界中で〝脱中国化〟が着々と進行しているのは間違いのない現実。隣国日本もその流れに無関係ではいられないでしょう。何も知らずにのほほんとしていると、とんでもないことになるかも?(文◎百園雷太)
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