「名刺を見てバカにしちゃう人」 あなたは忘れていても、やられた方は覚えています|久田将義
TABLO / 2018年6月10日 15時44分
偉そうにした人は忘れませんよね。
今回は、政治家もヤクザも右翼も愚連隊も暴走族は出てきません。
業界内の話です。という事は出版業界となるわけです。出版業界と言えど、特別な業界ではなく、皆さんと同じビジネスの世界の話です。ですから、「ああ、こういうやつ、いるいる」と思って頂ければ幸いです。
僕は30歳ちょうどくらいに、編集長になりました。これは僕の考えでは早すぎで、当時はミリオン出版に在籍していましたから、中堅出版社のなかでは普通だったとは思います。大手なら考えられません。
また、僕は24歳で三才ブックスという出版社に入ってから、編集長になれるとは思っていませんでしたし、また、なる器でもないと自覚していました。
三才ブックスでは「ラジオライフ」「別冊」ラジオライフ」(僕はここの一番下でした)「バックアップ活用テクニック」(「後にゲームラボ」)「裏モノの本」(旧「ラジオパラダイス」。のちに鉄人社として独立)、計四人の編集長がいました。それぞれ仕事ができました。とても、僕は彼らのようになれるとは考えていませんでした。編集長に怒鳴られてばかりのダメ編集でしたから。
ちなみに、「裏モノの本」編集部は以前には「月刊寺」という雑誌を出しており、伝説でした。僕は一度も見ていないので誰かご存知の方がいらしたら教えて下さい。すぐ廃刊になってしまったようです。
僕が最初に仕えた編集長は誰にでも怒鳴り、毎月一人辞めていくほどで、上司の編集部長に「君の部署は何で、こんなに人が辞めていくだ」と問い詰められていました。仕事は出来る人だったのですけれどね。
体育会系で育った僕にとって、大学では星座研究会みたいなところに入っていた編集長の文化系の怒り方には逆に、イライラしましたが逆らう訳にもいきません。我慢していましたが、一回、めちゃくちゃ抵抗しました。会社中がシンとなるほどの怒鳴り合いでした。僕は24歳のガキでしたから「こいつ、話だけですまさない」ぐらいのことを思いましたが、もちろん今では感謝しています。
この出版社の逸話は結構ありまして、「ラジオライフ」は最高で書店売りだけで15万部の発行があったとされます。凄いです。「グリコ森永事件」の犯人が警察無線の傍受をしていて、「ラジオライフ」の愛読者ではなかったのか、という話が巡ったからだとも言われています。
さて、そんなダメ編集の僕でもワニマガジン社を経てミリオン出版に入った時でした。「別冊GON!」の「副編集長で来て」と、「GON!」「ティーンズロード」で一世を風靡した比嘉健二編集局長(当時)に言われ、移籍したのですが、「別冊GON!」が二冊くらい発行して、自然消滅してしまいました。
宙ぶらりんになった僕は一か月半、何もしていませんでした。が、給料が出ているので、これではいけないと考え、とにかく色々な人に出会いました。結果、「喧嘩をしてやろう」と考え、全方位的に攻撃する雑誌「ダークサイドJAPAN」という「噂の真相」を意識した雑誌を出しました。 喧嘩を売ると買われます。初号から裁判沙汰になりました。
ある晩、ゴールデン街で飲んでいたら。知り合いの編集者から人を紹介してもらいました、ライターやデザイナーなどなど。
中に、大阪の人がいました。当時絶好調だった「『Tokyo Walker』で仕事をしています」と強調していた編集プロダクションの若い社長さんでした。名刺交換をすると、薄笑いしながら「だ、だーくさいとじゃぱん? って?」という反応をされてしまいました。
当然と言えば当然ですね、「何の雑誌?」と思うでしょう。しかし、あからさまに態度に出してはいけません。バカにした方は気づきませんが、された方はよく覚えているものです。ですから、僕は「大阪の編集プロダクションで『Tokyo Walker』」という事を覚えています。
僕の力不足で「ダークサイドJAPAN」は一年少しで廃刊をしてしまうのですが、「噂の真相」「東京スポーツ」などで取り上げて頂いたり、岡留安則「噂の真相」元編集長からは「後継になり得る」という言葉も頂きました。
それから月刊化した「実話GON!ナックルズ」の編集長になるのですが、当然この雑誌もまったく浸透しませんでした。月刊5号くらいでロフトプラスワンに登壇しましたがお客さんで知っている人は誰もいませんでした。
いつこ頃からか、「何となく知っている」という存在になった辺りから売り込みが増えてきました。当時、来るものは拒まずだった僕は色々な人に書いてもらったり話を聞きました。
僕はふと思いました。「大阪の『Tokyo Walker』も引き受けていた編集プロダクション」の人はどうしているのか、と。2008年くらいにリニューアルしたのは出版不況からとも言われていました。その時に外部スタッフが刷新されたら、あの「大阪の人」も切られてしまったのかなとも思いました。どしているのか分かりません。
それでも彼に薄笑いされてから、ある言葉を金言にしました。
「人を名刺で判断しないようにしよう」と。
正確に言うと「名刺の会社の名前を知らなきくても侮ってはいけない」です。
名刺で判断できる事もあるのです。名刺に肩書四行とか五行くらい書いてある人を見ると「肩書多すぎ」とか「アピール力凄すぎ」と思ってしまいますから。(文◎久田将義 連載『偉そうにしないでください。』)
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