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人間の「性」と「業」を飲み込んだ伊香保温泉で大火災......迫り来る炎から「あの子たち」は逃げ切れたのか

TABLO / 2018年6月10日 16時6分


 群馬県の伊香保温泉にやって来ました。温泉といっても湯浴みは二の次で、いちばんの目的は夜歩きです。

 石段街から脇道に入り、さらに路地を進んだところに、小さなスナックが並ぶ一角があります。夜10時頃、そのスナック街を歩いていると、店先にいた女の子が声をかけてきました。

「お兄さん、飲んでってよ」

 20代半ばぐらいでしょうか、見鼻立ちの整ったエキゾチックな美人です。名前はGさんといい、タイから来たそう。

 店は台湾人のママが仕切っていて、ホステスはGさんを含めタイ人が5人。店内はやたらと暗く、女の子たちは妖しい色香をむんむん漂わせています。普通のスナックじゃないことは明らかでした。
 外国人スナックで飲むことをライフワークにしている私の経験から言うと、ママが台湾人、ホステスがタイ人となれば、そこは連れ出しスナックの可能性大です。

 連れ出しスナックのママに台湾人が多いのは、彼女たちが「じゃぱゆき」の先駆けだからです。70~80年代に来日した彼女たちの一部が首尾よく日本人の配偶者に収まり、使われる側から使う側になって、後発組のタイ人を雇う仕組みができあがったようです。

 実際、この店もショート2万円、泊まり4万円の連れ出しスナックでした。ヤリ部屋は女の子の自宅アパートとのこと。

 Gさんはタイ東北部のウドンタニー出身、日本に来て6年になるといいます。そんな彼女に、伊香保の夜事情を尋ねてみました。

「タイ人はだいぶ減ったね。だいぶ警察に捕まっちゃったから。昔はタイスナックがたくさんあって、タイ人が100人以上いたらしいけど、今は4~5軒だけ。最近はタイ人の代わりに、インドネシア人とかカンボジア人が来るようになったよ」

 外国人色街への風当たりが強まるなか、伊香保はとりわけ摘発の頻度が高いようです。その理由を、地元の居酒屋のおやじが声をひそめて語ってくれました。

「ここはヤクザがべったりだから、警察から目の敵にされてんだよ。それに連中は外国人の女を使うから、警察も叩きやすいんだよ。不法滞在やら人身売買やら、突っ込みどころはいくらでもあるからね」

 スナックの閉店後、Gさんが近所にある別の店に飲みに行くというので同行させてもらうことにしました。そこはベテランのタイ人ママが営むスナックで、深夜はタイ娘たちの溜まり場になるそうです。

 店内には先客のタイ女性が5人いました。酔って調子に乗った私が「サワディーカップ(こんにちは)」とタイ語で挨拶すると、なぜかそのうちの3人が怪訝な表情を浮かべ、そそくさと出て行ってしまいました。

「警察や入管の内偵がよくあるから、初めての人は警戒されるの。先月も5人捕まったばかりだし、ちょっとピリピリしてるのね」とGさん。
 出て行った3人は不法滞在のようです。

 Gさん自身は大丈夫なのかと訊くと、「私は日本人と結婚してビザもあるから問題ない」とのこと。
 あっけらかんとしたものです。が、よくよく聞けば偽装結婚のようだし、売春も続けているのでリスキーな立場であることに変わりはないでしょう。

 この日は結局、ベロンベロンに酔いつぶれたGさんを店に残して、宿に戻ることに。帰る道すがら、浴衣姿のおやじとタイ娘が路地裏のアパートにしけ込むのを見て、つくづく思いました。こういう遊び場は潰しちゃいかんよなぁ、と。

 しばらくの間、警察や消防、マスコミが入り乱れるだろうから、身を隠すしかないだろうな......。燃えさかる炎をテレビで眺めながら、そんなことを思い、彼女たちの無事を祈ったのでした。(取材・文◎霧山ノボル)

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