権力にヨイショするテレビ番組『警察24時シリーズ』 単なる労働者を「闇の組織」に仕立てるテレビ屋に天誅を
TABLO / 2018年6月16日 12時30分
警察24時シリーズの「お約束ネタ」のひとつが外国人ネタです。あの番組を見ていると、よくこんなシーンを目にしませんか。
風俗店やパブに警官や入管が踏み込み、そこで働く外国人女性たちに、「パスポート出して!」「ビザはある? ないの?」などと問い詰めるシーンを。
過日、ある温泉地の、私がたまに訪れるスナックがこれに登場してしまいました。「闇の組織を摘発!」などと仰々しいテロップを打たれた画面には、店のママとホステスたちが摘発される場面が映し出されました。
さも大捕物のごとくセンセーショナルに「編集」されていましたが、実際は客が10人も入れば満席になるような小さな店でした。ホステスをしていた7~8人の女性たちは皆、自らの意志で働いていた出稼ぎ外国人です。
私が親しくしていたタイ人のKさんは、昼間は工場で働いているものの、給料が安すぎて故郷に仕送りができないため、夜はそのスナックでバイトしていました。彼女たちは借金で縛られているようなことはなく、店で働くのも辞めるのも自由でした。これのどこが「闇の組織」なのでしょう。
テレビ放映後、同店を訪れてみたら案の定、看板が外されていました。苔むした路地裏にたたずむ風情あるスナックで、知る人ぞ知る穴場だったのですが......。
夜の色街は静まりかえり、かろうじて開いている店には閑古鳥が鳴いていました。あるスナックの親父がぼやきます。
「参っちゃうよね、テレビに出ちゃうんだもの。あれ以来、女の子たちは怖がって辞めちゃうし、お客だって気軽に来れない。テレビは本当にタチ悪いよ」
この色街は多少の「お目こぼし」もあったようで、たまに摘発に遭いながらも、しぶとく生き残ってきました。けっして目立つことなく、数軒のスナックがひっそりと夜の商いを続け、地元の旦那衆を癒していました。
そんなささやかな田舎の色街を潰して得をするのは、自分たちが稼ぐことしか頭にない東京のテレビ屋ぐらいでしょう。
警察や入管が色街を取り締まるのは、職務だからある程度は仕方ないと思います。けれども、権力に金魚のフンのごとくへばりつき、相手が社会的弱者であっても遠慮なくカメラを向けるテレビ屋には憤りを覚えます。
出稼ぎ外国人を「犯罪組織」に仕立て上げ、正義面してこれを叩くのが連中の常套手段です。しかもターゲットにするのは、社会的に無害の水商売や風俗の女性ばかり。
日本には中国人の武装強盗団やアフリカ人の詐欺団など、本当に危ない連中もたくさんいるので、ぜひそっちも取り上げてほしいものです。
もっと言えば、ノーリスクの警察ヨイショ番組なんか作っていないで、やるなら「警察不祥事24時」をやってくれませんか。
日本はすでに人口減少社会に入りました。都会にいると気づきませんが、地方には過疎化、高齢化が進行し、外国人を受け入れなければ地域の維持すらおぼつかない町もたくさんあります。不法就労は確かに違法ですが、昼も夜も外国人に頼らざるを得ないのが実情なのです。
もはや安直な「外国人いじめ」をしている場合ではないし、そんなもので視聴率を稼ごうとするテレビに明るい未来はないでしょう。(取材・文◎霧山ノボル)
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