忘れてはならない大阪地震 震源地から離れた地域で暮らす筆者も次の地震が怖くて仕方がない
TABLO / 2018年7月3日 17時0分
北大阪に比べて被害が少なかった南大阪の人たちも緊張していたと思う
6月18日。
大阪で地震が発生した時刻、私は南大阪のとある地域から北大阪へ向かう電車の中にいました。月曜日のラッシュということで、車内は超満員。雨も降っており、湿度が高くムシムシとしていました。
その状況で、電車は急停車。吊り革に捕まっていた私をはじめ、まわりの人々は大きく横に体を倒される形になりました。かろうじて、転倒せず、体勢を整えたと思った途端、緊急地震速報のアラームが車内のアチコチから鳴り始めたのです。
そのときに一度目の恐怖を感じました。こんな満員電車の中で大きな地震が来たらどうなってしまうんだろう? それと、自宅に残してきた家族や、離れて暮らす両親は大丈夫なのかだろうかと。阪神淡路大震災を経験し、何度も南海トラフ地震の情報を見聞きしたせいもあるかもしれません。
結果的に、あの電車に乗っていた方々の多くは揺れを感じなかったと思います。震度は4だったそうですが、急停車しているときに揺れが来ていたのか、まったく地震は感じませんでした。
即座に、各所とLINEで連絡を取り合った結果、それほど大きな被害はなく、もちろん家族も無事とわかったときは、心底ホッとしました。それは、周囲の方々も同じだったと思います。
声をひそめて子どもを預けている施設に電話をする女性。会社の部下に自宅待機を命じるサラリーマン。冗談混じりで、「ほんまに、揺れたん?」と、友人か親しい人と会話をする若い男性。その後、電話が通じなくなる時間まで、多くの人が直接、声を聞きたい気分になっていたのだと思います。
そして、それからが地獄でした。
1時間以上、電車はまったく動きませんでした。エアコンから冷たい風は送られてくるものの、超満員でなおかつ雨も降っていたので、とにかく蒸し暑い。窓を開けようとした男性が、「雨が入ってくるから、開けるなや!」と怒鳴られ小競り合いが始まったり、濡れた傘がぶつけられた人が舌打ちをしたり、嫌な雰囲気が醸成されていきました。私も、すぐにでも電車から降りたい気分で、他の人同様にイライラしていました。
それもこれも、SNSなどで「まだ、余震がくるから注意をしてください」といった情報を見たので、緊張していたのです。やはり、Twitterから流れてきた駅ホームの看板が落ちている写真はインパクトがありました。
キタへ向かう進路は、ほぼ皆無、自宅に向かって急ぐ女性たち
やっと、電車が動き出し、つぎの駅で停車。「長時間、停車する見込み」といった車内アナウンスが入り、やっとのことでドアが開きました。とにかく、降りたい一心で多くの人たちと一緒に下車。すると、ホームには電車を待っている人たちも大量におり、どちらに行こうとしても人にぶつかるような小さなパニック状態。係員もどうしようか階段の上でオロオロするばかり。エスカーレータを全力疾走で駆け上がる人の姿を追うと真っ先に駅のトイレへ。しかし、すでに男女共に長蛇の列ができていました。
一応、駅員に北大阪へ向かう交通について訪ねてみると、想像通り全線ストップという返答。駅から出ると、ホームにいた2〜3倍の人が雨の中、傘をさしたまま駅を取り囲んでいました。
到底、こんな雨の中、いつ動き出すかもわからない電車を待つ気持ちにはなれず、自宅に帰ろうと思い、所属しているオフィスに自宅待機の連絡を伝え、線路沿いを歩くことに決めました。歩いて帰ろうと思えば、2時間弱はかかってしまうのですが、歩く以外の移動手段はありません。
これは偶然かもしれませんが、すれ違うのはサラリーマンばかり。おそらく、なにかしらの方法で会社へ向かうのでしょう。私を早足で追い抜くのは、女性が多かったように思います。保育園や小学校へ向かい、子どもを迎えに行くのでしょうか。
途中、さすがに歩き疲れてタクシーを拾おうと思い、手を上げてもとまってくれません。ちょうど信号待ちで目の前にとまったタクシーの運転手さんが窓をあけて、「車も、ものすごい混んでるから、休憩しながら歩いた方が早いですよ」と親切に教えてくれました。
線路沿いを歩いていたので気付かなかったのですが、道路をみると確かに、いつもそれほど混んでいない道が大渋滞。大阪南部であっても、これほど影響が出るのかと驚きました。
報道の仕方に疑問を感じる一方、テレビの報道は必要だと思う
10時前から休憩を挟みながら歩き始めて、結局、自宅に到着したのは13時頃。蒸し暑いなかを歩き疲れて、玄関に座り込むと、旅行用のカバンが2つ置かれていました。
家族にたずねると、大きな余震が来ることに備えて、貴重品などをまとめて置いているということでした。テレビやSNSでしか情報に接していない家族は、私が想像している以上に怖がっていたようです。それから、テレビで報道番組をつけっ放しで、SNSでも逐一、情報を確認していました。
以前TABLOで岡本タブー郎さんが、関西のテレビ報道について強く批判される記事を書かれていました。大きな部分では、共感しています。たしかに、救助活動をしている上空で、ヘリコプターを飛ばせば大きな音で助けを求める声は聞こえないということは想像できます。実際、ほとんど被害がなかった南大阪の上空でも何機かヘリコプターを目撃しましたが、かなりの騒音でした。
しかし、テレビの報道がなければ、正直、不安です。というのも、かつて大雨の影響で川が氾濫したことがあります。そのとき、すぐ近くの地域が浸水してしまいレスキュー隊が出動する事態が起こりました。
そのとき、テレビの報道番組だけが(ラジオは確認していませんが)、今回と同じように煽動的な演出を多用しながらも、正確な状況を伝えてくれていました。だからこそ、安全を確保できたと思っています。
一方、SNSはというと、道が川のようになったとはしゃいで写真をアップする人や、意図的かどうかはわかりませんが、とある地域が浸水したと誤解を与えるような情報を発信する人など、テレビ以上に悪質な煽動ばかりだった印象です。だからこそ、たとえテレビ的な商売のためにやっている報道があっても、いざというときは、テレビの報道に頼ろうという思いです。
その気持ちは今回の震災でも変わりません。SNSでいろいろな感想を読みました。重要な情報を発信している方もいました。同時に、テレビより悪質な煽動的な意見も読みました。だからこそ、最低限、公共性を保っているテレビの報道も同時にチェックしていきたいと思っています。
「下から押し上げられて......」 食器や棚が全部、投げ出された
大阪で暮らす人の多くは阪神淡路大震災を経験しているはずです。強い揺れは経験しましたが、家具が倒れるほどの大きな地震ではありませんでした。しかし今回、北大阪で暮らす人の多くは食器が落下して割れたり、家具が倒れたりする被害に遭っています。高槻市に暮らす知人は、つぎのような感想を教えてくれました。
「一度、下から押し上げられるような揺れがきてから、横に縦に思いっきり揺れた感じ。体感的には、かなり長い時間、揺れているような印象やったよ」
この方は、幼い子どもがいる家族で暮らしており、本人は仕事で家を空けることが多いので、安全のため避難所へ行こうかと考えたそうです。話によると、家具が倒れ、テレビが落下したとのこと。私も彼と同じように、大きな被害に遭えば、避難所へ行くことを考えたでしょう。
結局、いまのところ大きな余震は来ていません。しかし、突然、電車の中に閉じ込められたり、連絡を取り合えなかったり、家族の安全のことを考えると、怖くて仕方ありません。それは、私だけではないと思います。
地震から3週間ほど日は経ちましたが、今もスーパーなどでは大々的に災害に備える商品が売り出されていたところを見れば、心のどこかに恐怖を抱えているように思います。(文・写真◎石田健康)
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