日本三大ドヤ街の一角、東京・山谷地区で緊張させられた「出してはいけな場所からでてくるカレー」

TABLO / 2018年7月13日 14時7分

「うんこ味のカレーと、カレー味のうんこだったらどっちがいい?」

 そんな愚にもつかない質問にもかかわらず、なぜか誰しもが子どもの頃、その答えを考えたし「本物のうんこよりは、うんこ味だとしてもカレーであるほうが絶対にいい」などと、もっともらしい(そのくせ不毛な)回答を導きだしたりしたものです。


 さて、ここは東京の山谷地区。
 大阪西成、横浜寿町とならんで「日本三大ドヤ街」と言われ、かつては、道端でワンカップを傾けながら空中と会話する人がいたり、殴り合いのケンカが日常的に起こっていたりと、治安がいいとは言えない場所でした。しかし最近では、安宿目当てに世界中からバックパッカーが集まり始めていて、その様子も少しずつ変わってきています。

 そんな山谷地区の脇を走るアサヒ通り。地元に根付いた老舗の飲食店が並ぶ一角に、こんな暖簾を出しているお店があります。


「大釜本店」という焼きそばで有名な店の隣に、大釜本店の弟さんが出したというカレー店です。
 店内は一見、なんの変哲もない下町の食堂といった風情で、壁ぎわに小さめのテーブル席が2つ、カウンターは6席ほどでその中の厨房があり、店の奥にお手洗い。60がらみのご夫婦が切り盛りしていらっしゃいます。

 早速、カツカレーライスを注文します。
 すると奥様がおもむろに動き出し、お手洗いに入っていきました。客の注文が入ってすぐにトイレに行くことに、少しの違和感。
 ご主人はそれを気に留めることもなく、先客の食器を下げたり、伝票を整理したりして、カツカレーライスを作っている様子がありません。そしてついには、厨房内のイスに腰掛けて、テレビを眺めはじめたのです。

「私の注文は無視されているんだろうか」

 3分、5分と時が経ち、気の長い私もいよいよご主人に声をかけようとしたその時。

「カレーどうぞ!」

 お手洗いの中から、奥様の声がしました。


 奥様の一声を合図にして、ご主人が立ち上がりました。私は戸惑いながら見守るばかり。まさかだけど、奥様がトイレでだしたものをカレーと呼んでいるわけじゃないよね。
 そんな私の、悪い予感は現実になりはじめていました。なんとご主人、お手洗いへ向かっていきます。


「うんこ味のカレーと、カレー味のうんこだったらどっちがいい?」
 子どもの頃、無邪気に友だちと投げ合ったあの質問が脳裏をよぎります。あの頃は、現実的に考えていなかった。しかしそれが今、本当に私の目の前に現れようとしています。

 信じたくない。「ウンコ味のカレーもカレー味のうんこも、やっぱりどっちも嫌だ」あの時、そう答えていればこんなことにはならなかったのだろうか。
 けれどもう、手遅れのようです。


 お手洗いからでてきたご主人の手には、カレー皿。湯気がたっています。そしてそのまま「おまたせしました」。
 奥様の体内発、お手洗い経由、私の体内行きのカツカレーライスが、目の前にやってきてしまったのです。


 しかしそこに、カレーはかかっていません。よくみると、ご主人が厨房の大鍋をかき回し、別盛りのカレーをよそっていました。そして本当に、ニューダイカマのカツカレーライスが完成したのです。


 食べてみると、これが美味しい。インドカレーの店が日本中に林立する昨今、カレーという「和食」を久しぶりに食べたような気がします。しっかり煮込まれた肉と野菜の旨味が、たんなる下町食堂のカレーよりもしっかり出ていて深い味わい。

 だし、食べている途中も「これ、トイレからでてきたやつだよなぁ」という思いが何度か去来しますが、「カレーの店」というのれんを出すだけあって、まさに「のれんに偽りなし」の美味しさです。

 食後には、インスタントではありますがコーヒーのサービスも(コーヒーと同量のシロップをだしてくるあたりもさすがです)。


 実は厨房内には揚げ物用の設備がなく、カツカレーライスの注文が入ると、お手洗いと書かれた扉の奥にある、自宅の台所でカツを揚げているということなんだそうで、決して奥様がお手洗いでひり出した物を提供しているわけではありません。

 不思議な気持ちにさせられるカレー、ぜひ一度召し上がってみてはいかがでしょうか。(取材・文◎Mr.tsubaking連載 『どうした!? ウォーカー』第13回)


『ニューダイカマ』
東京都台東区清川1-29-5
11:30~18:30
木曜定休

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