ツイッタートレンド「裏社会の住人」とは何者か 誰でも裏社会の住人になる可能性がある|久田将義
TABLO / 2020年11月14日 5時30分
誰でも裏社会に足を踏み入れる可能性はある(撮影・編集部)
なぜか13日に急遽、ツイッターに上がってきた単語、「裏社会の住人」。一体、どういう人物を指すのでしょうか。
SNSではゲーム「『龍が如く』の登場人物のようなものか」といったもの散見されました。確かにそういうイメージで良いかも知れません。あるいは漫画『闇金ウシジマ君』の主人公とその仲間たちを想像すれば良いでしょう。
先達と比べると、未熟者ですが僕も20年くらい「裏社会」と言われるモノに取材したり、その「住人」と呼ばれる人たちと接触したり話を聞いたりしてきました、僭越ながら。
裏社会とがあるということは、「表社会」もあるという意味になる訳です。表社会はざっくり「堅気の仕事に就いている人」と言えば良いでしょう。と、定義すれば堅気でない人、渡世の人間、稼業人と言われているヤクザが裏社会という事に自動的になります。
が、ヤクザも実話誌では有名親分の顔写真が堂々と掲載されたり、暴力団排除条例前は、顔写真付きインタビューもされてきました。僕も、同様に組織の人間や、今で言う半グレ・準暴力団にインタビューをしてきました。ヤクザは裏社会の住人と言えるかも知れませんが、顔写真を堂々と出す事から、表社会の住人とその時(掲載時)はなっていたような気がします。
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何せ、日本の五大新聞の一つである産経新聞に六代目山口組司忍組長のインタビューが載るくらいです。また、一昔前にはNHKでヤクザがインタビューに答えていました。さらに実話誌全盛期には、投書には「〇〇親分のファンです」といったものも掲載されていました。ちょっとしたアイドル扱いのような時代がありました。
が、皆さんがイメージする、またツイッタートレンドに上がった単語、「裏社会の住人」というのはこういった、顔出しすらせずに「何をやっているか分からない人間」の事だと推測します。
具体的に言うと、半グレと言われている準暴力団。が、それも実話誌と一線を画した「ネオ実話誌」と言われている、例えば、僕が編集長を務めていた『実話ナックルズ』(大洋図書)などでは、写真付きでインタビューが掲載されるようになり、そういった人達が表に出て来たように思います。17年以上前くらいからになります。
因みに『実話ナックルズ』のコンセプトの一つに「現役のヤクザは掲載しない」というものがありました。現役のヤクザは既存の歴史ある実話誌に任せておこう、という考えからでした。差別化を図った訳です。
裏社会の住人と言うと、このように表に出ない「裏の世界にひっそり住んでいる」というイメージでしょうが、上記のヤクザ、準暴力団たちは歌舞伎町などの繁華街に行けば、皆さんが気づかないだけでよく見かけられます。
歌舞伎町と言えば、例えば若者が集うアルタ前でこんな事がありました。以前、アルタ裏を歩いていたら、旧知の某組織の親分が一人で歩いていました。声をかけた途端、後ろからボディーガードの人間が僕の方に血相を変えて駆け付けてきました。「ああ、この人は大丈夫」と親分が言ったので、ボディガードは後方に下がりました。つまり、裏社会の住人は、一般人と同様に普通の道を歩いています。
ですから、僕は「裏社会という場所」があるのではなく、裏社会というのは時間・空間であると考えています。
そもそもヤクザ、準暴力団だけが裏社会の住人でしょうか。何が言いたいかというと、「裏社会の住人には誰でもなる可能性がある」という事です。
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以前、ある有名会社の社長が覚醒剤所持で逮捕されました。覚醒剤のシノギはヤクザと言われています。直で買うのではなく、売人がいる訳ですし、この社長はある組織の企業舎弟でした。ヤクザ、売人、そして一般人の社長のスキームは僕からすれば「裏社会の住人」と定義して良いと思います。
すなわち、堅気の人間がヤクザや準暴力団と違法ビジネスの相談をしていたとします。この「空間」がもう既に裏社会と言って良いでしょう。
「裏社会? 私とは関係ない」。そのように考える人がほとんどでしょう。ただ、裏社会の住人とは別世界の住民のことではないのです。表社会(堅気)と裏社会はともに人間社会が形成されています。コインの裏表のようなものなのです。(文◎久田将義)
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