「吉本坂46」 作家・脚本家の旺季志ずかさんインタビュー 「これぞ熟女の鏡です!」(本サイト編集長)
TABLO / 2018年7月19日 17時9分
「女はその歳なりの美しさがある。胸が垂れてようがシワがあろうが、表に出すことでなんらかのメッセージになるんじゃないか」
秋元康と吉本興業がコラボした企画「吉本坂46」。「吉本がアイドルグループ?」と思ったのですが、芸人さんを抜いて現在、一位が作家・脚本家の旺季志ずかさん。特に水着審査で熟女の貝殻ビキニを披露。これに触発されて、早速旺季志ずかさんにインタビューに行ってきました。(編集部)
旺季志ずかプロフィール
「女にはその歳なりの美しさがあると思っているので」
――『ストロベリーナイト』とか僕の好きなドラマを手掛けてらした、作家で脚本家の旺季志ずかさんです。まず吉本坂46に応募したきっかけを教えてください。
旺季志ずかさん(以下・旺季さん):秋元康さんがこの前、「アイドル界の闇鍋を目指したい」みたいなことをおっしゃってましたけどそのゴチャゴチャ感がすごい興味を惹いて、これどんなふうにまとめるんだろうというか、どういうふうな着地をするんだろうかっていうことに対しての好奇心を抱いてです。
熟女といわれる歳になってアイドルのオーディションに応募できるだけでも面白いですし。私のファンは30代~50代の女性が多いんですけど、私がいまドラマも本も小説も全てで伝えてるメッセージが
「いくつからでも好きに生きられるよ」
っていうことなので、芸歴ほとんどゼロの私が応募する姿で「世の中沸くやん、世の中元気になるやん」みたいな(笑)。
――アメブロなどで、「自由であることが好き」とおっしゃってますけど、そういうところに基づいての応募だったりしますか?
旺季さん:世の中を元気にしたいっていう気持ちが強いので、「こんなオバチャンがアイドルになったら世の中おもろいやん」って。たとえば不登校の子がなんかやってみようかと思ったり、いろんなところで発憤してくれるんじゃないかなって。
――面白いと思います! 水着審査の貝殻ビキニは武田久美子さんを意識したんですか?
旺季さん:あんなすごい人、意識できないです(笑)。ただ最初に友達から「マーメイドにしたら?」っていう提案があったときに、「マーメイドだったらブラは貝殻やな」と思って。あとでそれを作ってほしいって友達にお願いしたときに、「武田久美子のあの感じ?」って言われたから、そこで気づいて「いや、あれはないよ!」って言ったんですけど。
――水着審査は、やってみてどうでした?
旺季さん:「ホントにありがとうございます」っていう感謝の気持ちでいっぱいです。あの水着を出すのは私なりにすごく葛藤があって出したので。若くてかわいい人だったらいいけど、「こんなオバチャンが」ってすごい葛藤があったうえで、でも応援してくれるチームがいるんで、その仲間が「これは絶対出したほうがいい」って言ってくれて何時間も悩んで出したので。
そこには日本の女性の年齢に対しての抑圧ってすごいものがあって、フランスとかヨーロッパではその歳なりの女性の美しさに対しての敬意っていうのが社会全体にあります。芸術作品とかドラマや映画の世界でも、年齢を重ねた人のいい作品が出るなかで、日本のドラマ作りをしてきたときに、やっぱり若い女の子の話じゃないとみたいな、ものすごい抑圧がうっすらとなんだけど、でも当たり前のようにあって。
私はそれに対しての違和感がずっとあったので、女はその歳なりの美しさがあるっていうことを主張してる手前、ここで引いてはいけないというか、いかに胸が垂れてようがシワがあろうが、それを表に出すことでなんらかのメッセージになるんじゃないかっていう思いは作家としてありました。
――大賛成ですね。僕は熟女好きなんですけど、20年ぐらい前は「熟女好き」って言うと「えぇ?」みたいな世の中の雰囲気でした。おっしゃるとおりで30、40歳になってからどんどんきれいになって、その歳なりの美しさがあると思うのでそれは素晴らしいと思います。世の女性たちにも、元気を与えるっていう旺季さんの言葉はよく分かります。
旺季さん:そうですね。女性もそうだけど、どっちかというと男性のほうが疲れてるなと思ってて、男性にも届けたいですよね。
――新刊の『誰かのためも大切だけど、そろそろ自分のために生きてもいいんじゃない?』でも旺季さんの生き方は、吉本坂に応募した事とつながってるわけですか?
旺季さん:初めての自己啓発エッセイということで、どうやったら心が楽になってどうやったら自分の夢が叶えられるのかっていう心の持ち方とかあり方をダイレクトに書きました。
私のドラマの主人公ってどん底から頑張るみたいな人が多いんですね。不遇とか不運とか、自分は悪くないけど何かが起きてしょうがなくて会社クビになるとか、そういう構造のものが頑張って、たとえば銀座の女帝になるとか頑張って人生を切り開いていく主人公が多いので。そういうセリフを拾ってエールを送るというか。私にエール送られてもどうなんだとは思いますが(笑)。
私自身がよくつまずいて転んでた人生なので、つまずいて起き上がるときにそこにあった本だったり誰かの言葉だったりがあったので、そういう存在にしてほしいというか。
――いろんなアルバイトをなさってましたものね。
旺季さん:この前、数えたら50種類でした。
――高層ビルにのぼったり。
旺季さん:高層ビルの窓掃除ですね。
――どん底から頑張るっていうのはご自分の人生を反映させながら作品をつくられてきた、と。吉本坂もその一環ですか。
「ダンスレッスンをやってみてアイドルを尊敬しました」
旺季さん:吉本坂は私のなかの大きなネタです。
――あー、なるほど(笑)。
旺季さん:つまり自分でチャレンジして、そのときそのときの心の葛藤がすごいんですよ、私。器用な人じゃないので、水着でもいちいち悩む、歌でも悩む。いまここで「脚本書いてください」って言われたらわりと軽くできると思うんですよ。
だけどやったことがないことをやらなきゃいけないわけで、でもそのひとつひとつにこの年齢で悩んで、1回1回葛藤してること自体がネタというか。その姿がきっとみんなに面白がってもらえると思うから、だからブログがあってよかったと思って。
――なるほど、そういう意味のネタなんですね。ブログにも綴ってますね。
旺季さん:そうなんです。それがいちいちみんなの勇気になるのですごくうれしいです。
――あえて悩む方向にご自分を追い詰めてる感じなんですか?
旺季さん:追い詰めてなくても悩むんですよ。
だってやっぱり受かりたいんで。
せっかくみなさんが応援してくれてるのに......。正直、いまダンスのオーディションでかなりヤバいなと思ってるんですよ。その先がどんな世界か見てみたいけど、でも実際に入って周りの足を引っ張るようなことになるんだったらそこで落としていただいたほうがいいんだろうなって思うけど、やっぱり頑張りたいじゃないですか。
頑張ったらダメなときはそれなりに傷つくだろうし、人間がチャレンジしないのってそのときの挫折感とかプライドが傷つくとかそういうことでチャレンジできないんだけど、私もそれがないわけじゃなくて、怖いし落ちたらカッコ悪いなって思うし、受かったら受かったでその先どうするんだっていう不安もいっぱいなんだけど、でもとりあえず一歩一歩進んでるよっていうのをブログで実況中継してるんで。
そういう意味ではネタなんだけど、ネタだからといっていい加減にやってるのかっていうとぜんぜんそんなことなくて、ガチで毎日真剣勝負してます。
さっきも友達に頼んでダンスの個人レッスンやってきて、ちょっとアイドルっぽく笑顔作って踊ってきました。
阿波踊りはめちゃくちゃ得意なんですけど(出身は徳島県)ダンスはやったことがないからこのままだとヤバいなと思って。アイドルを尊敬します。
――アイドル的な振付けをやられたんですか?
旺季さん:乃木坂の曲かけて、「ついていけない!」って(笑)。
――旺季さんのブログにあった、「寂しさをごまかさないで自分と向き合う」みたいな一文に感銘したんですけど、それはどういうお気持ちで書いたんですか?
旺季さん:私、心オタクでセラピストの資格とかカウンセラーの資格持ってたりするんですけど、そのニワカ知識みたいなことで言うと、ちゃんと感じてそれが突き抜けると本当のポジティブにいけるんですよね。その感情を押しやって起こす行動じゃなくて、ちゃんとその感情が終わったあとの欲求って出てくるんですよ。
だから悲しみとか寂しさを感じたくないからごまかすために友達に会いに行く、お酒飲みに行く、私の場合は仕事しちゃいますけど(笑)。
そういうふうにごまかしてるとその先の感情をうまく乗り越えたときに本当に自分がやりたいことに到達できないんですよ。だからちゃんと向き合って、そこが終わったあと本当にしたいことってそうですかっていう。
――当たってるなと思いました。
旺季さん:そこをごまかしてるとすごい忙しくなっちゃって、本当にやらなきゃいけないこととか自分がやりたいことってそんなに多くはないはずなんですよ。だけど感情をごまかそうとする人っていろんなことしちゃうので......これ私もそうなんですけど(笑)。
――人間関係の話も書かれてましたよね。
旺季さん:はい、寂しさをごまかす人間関係はよくないっていう話を。
――たしかにそうかもしれませんね、薄っぺらいものになりがちというか。
旺季さん:結局そういうごまかした人間関係って何かあったときに無くなりますから。
――あ、そうですよね! 心当たりあります。世の中を面白くしたいといか、女性が歳を重ねることとか、そういうのはこの世界にいらして感じることではあるわけですか?
旺季さん:そうですね。
「吉本坂46でやりたい事、たくさんあります。一つは......」
――例えば、どういうときに感じます?
旺季さん:今は年齢が高い層がテレビを観ないと視聴率上がらなくなったので、だいぶ変わってきたと思うんですけど、ちょっと前に70代の恋愛を描きたくてそういう企画を出したときに、「ありえないから」っていうふうに。
要するに「そんな歳いった人の恋愛なんて気持ち悪い」みたいなこととか、そういう感覚で言われたことがあって。年齢を重ねて死が近づいてるゆえの恋愛っておもろいんじゃないかなと思ったんですけど。で、そういうことを演じられる女優さんがいまいらっしゃると思うので。
――それで思い出しましたけど、ジャック・ニコルソンが奥さんを亡くしていろんな恋愛する『アバウト・シュミット』っていう映画はよかったです。『ミザリー』のキャシー・ベイツと混浴のシーンとかあるんですけど、オッパイ出して一緒にお風呂入ってるんですけど、それを気持ち悪いって言う人もいるんだろうけど、僕はすごいよかったです。人生を重ねているいい味が出ていて。
旺季さん:ジャック・ニコルソンは年齢を重ねてもセクシーな魅力が出てるからいいですよね。
――そういう歳を重ねた人々の恋愛を描きたいっていうところはあるわけですね。
旺季さん:そうですね。
――「自由が好き」とおっしゃってたので、それが全部、旺季さんの生き方につながってらっしゃると思うんですよね。まず基本に自由があると思うんですけど。
旺季さん:うん。
――でも、吉本坂も自由なんですかね?
旺季さん:集団行動がちょっと不安なんですけど(笑)。
――でも、けっこう有力な候補になりつつありますよね。
旺季さん:いやいやいや、ダンスがヤバいんで。
――でも、一番目立ってたと思いますし。
旺季さん:「自分CM」は私の得意分野なので。絵コンテまで書いて自分でやったから、ああいうのは大好きで。そのあとから試練がやってきてるんです(笑)。
――本を書きながら吉本坂やられたらすごい大変ですよね。
旺季さん:いまちょうど次の作品の取材期間なので実際は作品書いてないので。作品を書き始めると引きこもり体質になるので、ちょっとたいへんかもしれないですね。でもずっとそういうふうにやってきてるから。
――受かってほしいですねぇ。
旺季さん:フフフフ。
――吉本坂で何がやりたいとかってあります?
旺季さん:それはアイドルの私っていう感じじゃなくて、こんなのやれたら楽しいなと思ったのは、『グレイテスト・ショーマン』の作中歌の『ディス・イズ・ミー』が大好きなんですよ。あれを日本語訳にして友達に歌ってもらってるんですけど、それが素晴らしいんです。
その曲を聴いただけで泣いちゃうので、『吉本坂46 ディス・イズ・ミー』みたいなミュージカルを作演出したらめっちゃ楽しいと思って。ゆりあんちゃんとかなだぎさんとか、自分が変わり者で世の中に受け入れられなくて『ディス・イズ・ミー』って歌うところが感動的なので、それぞれが心に傷を持ってるけど笑って泣いて最後に歌うようなものができたらいいなって勝手に思ってます。それはアイドルとしてじゃなくて制作側のほうだから(笑)。
でもその中に入ってみんなと仲良くなれたりすると、みんなには見せない一面も見れたりして面白いだろうなって勝手に思ってます。
――他には何かやりたいことあります?
旺季さん:『紅白歌合戦』に出るとか秋元さんが言ってるんですけど、私は隅っこでいいので......っていうか隅っこがいいんですけど、あんまり目立たないところで舞台の上から客席を見てみたいですね。
――なるほど。どんな光景か、あそこに立った人にしかわからないですもんね。
旺季さん:あっち側に立ってみたいです。楽屋とかもなんとなく想像つくので、あの場所に生で立つっていうのはそんなにできることじゃないので。やっぱり体験したことがないことをやってみたいです。
――すごいチャレンジなさってますね。バイトもそうですし脚本もそうですし吉本坂もそうですし。
旺季さん:チャレンジしてる分、転んでる回数も多い気がします。だから転んで傷つくことを恐れないで好きなことやろうって思います。転ぶと毎回痛いんですけど。
――どうやって立ち直させているんですか?
旺季さん:しばらくちゃんと味わいますね。その挫折感とか傷ついた気持ちはなかったことにはしないで思いっきり悔しがるし思いっきり泣いてるし。そこでちゃんと挫折を感じてあげることが大事で。感じなくてもいいんだけど、ちゃんと感情の整理を自分のなかでできることが大事で。それをちゃんと向き合ってないと次のチャレンジは怖くてできないです。
――マイナスの自分を昇華して次に行かないと、と。
旺季さん:そうすると、次に転ぶときもあんまり怖くない。「ああ、あのぐらいだったな」みたいな。初めての失恋ってしんどいけど、2~3回目になると、「あ、まただ」みたいな(笑)。
――なるほど、そうかもしれませんね。
旺季さん:そこで傷つくことを怖がるからチャレンジもできないし、チャレンジしたとしても中途半端になるし。傷ついてもいいと思っていけば、だいたいたいしたことないです。
――傷つくの前提ぐらいに。
旺季さん:なんかやったら傷つくんだから。絶対いろんなこと人に言われるやん、チャレンジすればするほど。
――悩み相談もけっこうされますか?
旺季さん:悩み相談されますね。
――悩んでる方、多くありません?
旺季さん:多いでしょうね。でも悩んでる人のほうが軽傷かなと思います。悩んでるのって、何かやりたくてもできないとか、自分の願望がハッキリしてるわけじゃないですか。何もなくてズルズルッと生きてて死ぬときに後悔するほうがキツいですよね。
――なるほど。旺季さんに励まされてる方は多いでしょうね。脚本家の域を越えて世の中に還元したいみたいなところがあるわけですね。
旺季さん:そうですね。
――「元気になりました」みたいな反応が来るとうれしいですよね。
旺季さん:めちゃくちゃうれしいです。あと今回一般投票があったじゃないですか。「票を入れるのはいままでの恩返しです」っていう言葉がすごく多かったんですよ。「いままでこんだけ生きるのを楽にさせてもらったから、今回はしーちゃんに恩返しで応援します」みたいな。
――それは泣いちゃいますね。
旺季さん:ホントに泣いちゃいます。
――「書いてる人冥利」に尽きますよね。
旺季さん:そうなんです。私はただ好きなこと書いてるだけなんですけど。そういう言葉がすごく多かったです。
――自分がいままで生きてたなかでもこのプロジェクトは大きいっていうことですね。
旺季さん:そうですね。というのは、よくわからないんだけど、どうなっていくんだろうっていうこともわからないし。
――そうですよね、まずは受かってからっていうのもありますけど。
旺季さん:受かってからでもあるし、私の人生の大事な時期の大事な時間を使ってこれをやって......私はけっこう真剣にやってるので。だからどうなるんだろうって思います。
この前、ブログに「あなたはアイドルなんかに挑戦して、もう書くことで勝負するのはやめたんですね」みたいなコメントが来たんですけど、そういうことじゃなくて、でもそういうふうに思う人もいるんだろうなと思って。私のなかでは全部が手段なので。脚本も表に出ることも手段なので、なんであってもいいんです。
――そんなこと言ってくる人いるんですね。
旺季さん:「あなたは書くことで勝負すべきなのに髪の毛をピンクに染めて目立とうとするなんて最低」みたいな(笑)。
――SNSが発達したから余計にそういうことダイレクトに言えちゃうっていうのはありますよね。
旺季さん:だけど私、心理学とか心が好きだからかもしれないですけど、その人がなんでそう言うのかみたいな心を見ちゃうんですよ。こういう考え方してたら毎日たいへんやろうなと思って。でも5年ぐらい前は私もこんな感じやったなとか、「脚本家たるものは!」みたいに思ってた頃もあったから、そういうときだとこんなふうに思うだろうなって。
――有名な人に絡みたい人はいるんで。
旺季さん:でもその方は自分ももの書きで、きっとすごいまじめに書いてらっしゃるんだろうなと思います。ものを書くのってホントに孤独な作業でつらいので。
――ダンスがヤバいとおっしゃってましたけど、欅坂っぽいダンス期待してます、平手友梨奈みたいな!
旺季さん:無理ですよー(笑)。
(インタビュー◎久田将義 / インタビュー撮影◎岡戸雅樹)
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