怖い話をします ペット原理主義者たちが造りあげた「動物殺し」は現代の口裂け女|春山有子
TABLO / 2018年7月23日 15時48分
連日の猛暑で熱中症による救急搬送や死亡が相次ぐなか、7月15日、SNSを賑わせたこんな出来事がりました。
<あたしの不注意で、○○○○○○○(※原文は名前)6人が今日の昼に亡くなりました。
今回の名古屋の小旅行が最後になってしまいめちゃくちゃ悔やんでも後悔しても仕切れません(原文ママ)>
とある女性のSNS。こうしたコメントとともにアップされたのは、ずらりと横たわる6匹のチワワ。つまりは、亡くなったチワワたちを撮り、アップしたのです。
これにネット民たちが大憤慨。
「死体を並べて撮るなんて信じられない」「ペットをアクセサリーとかSNS映えとしか思っていない証拠」「犬たちが本当にかわいそう。もう二度と犬を飼わないでほしい」
などのなかで多かったのが、
「この暑い日に車中に放置して熱中症にして殺すなんて動物虐待だ」
という声。
この女性は確かに、自宅から車で名古屋に向かった、というところは本人のSNSで確認できますが、「車中放置」「熱中症」という事実は、上記の亡くなった当時の投稿が早々に削除された現在は、知るすべがありません。いわゆる、「ソースがない」のです。
この出来事を取り上げたニュースサイト「弁護士ドットコム」も、
<元の投稿はすでに削除されているが、拡散されている情報によると、飼い主は7月中旬、6匹の飼い犬(チワワ)を連れて、東海地方を旅行した。その際、不注意から、車内に犬たちを放置してしまったところ、すべて死んでしまったという。「熱中症」とみられる。>
と、随所で明言を避けています。
亡くなったチワワ6匹をずらりと並べて撮影するという行為についてはエゲツないことは否めませんが、「車中放置して熱中症になったから断罪するべき」と、この女性を全力で叩きまくる行為を、ちょっと待て落ち着け、と思ってしまうのは、わたしだけでしょうか。
特に、一部ペット原理主義者はその愛が深すぎて、一般社会が見えなくなることが......と、思ってしまうことがあります。
インスタグラムのハッシュタグで、猫虐待の様子を撮影し5ちゃんねるの「生き物苦手板」に投稿したほか、猫13匹を虐待し殺傷したとし、昨年8月に動物愛護法違反の疑いで逮捕された元税理士の男の名前を検索すると、ペットを愛する人たちによる男への怒りを見ることができます。
男の残虐非道な行為のほか、懲役1年10カ月執行猶予4年という量刑の軽さも、怒りに拍車をかけるきっかけとなったようです。厳罰化を求める署名も行われており、愛猫家で知られるタレントの杉本彩さんも、
「動物虐待は深刻な問題だが、軽く扱われており、法律の限界を感じる。厳罰化が必要」
と、誰もが納得の訴えかけをしていました。
で、男の名前のハッシュタグにしている人たちの投稿を個々に見てみると、
<呪われろ>
<死ね>
<クズ野郎を追い込め>
<SNSの怖さを思い知れ>
といった過激な文言が並ぶほか、
<この顔に整形した。拡散希望!>
<○○の○○○○(コンビニ名)でバイトしているらしい。拡散希望!>
という、真偽不明な情報に対する拡散希望がたくさん行われているのが特徴です。
また、ほかの動物虐待犯たちの情報拡散量もすさまじく、
<譲渡会に○○○という男が現れたら要注意! 虐待用に里親になるやつです!>
<整形を繰り返して譲渡会に出没している!>
などの同じような書き込みが溢れます。実際にこうした輩がいて、拡散により抑止力になっているかもしれません。
あ、これ.........例のやつじゃん
そんななか、ある一人のユーザーの投稿を過去へ遡ると、こんな投稿に出会いました。
<拡散希望! ○○で、アンマンマンとメロンパンナのお面をかぶった不審者が現れたらしいです。腕を掴んで車に乗せようとしたそうです。車は紺のフォルクスワーゲンでナンバーは上から「○○○」です。また、○○○では、男女2人組が子供に声をかけ、そのうしろからその子の母親がくると、「なんだ、お母さんもいたのか」と言い残して逃げていったようです。みなさん注意してください!>
ちょっとした『デマ好き』のあなたなら、すぐにピンとくるはずです。
これ、都市伝説(デマ)のなりたちじゃね? と。
・まず子どもを連れ去ろうとする人間は、高い確率で2人組ではやらない
・アンマンマンとメロンパンナのお面、というゾクゾク要素
・詳しい車情報
・詳しく覚えている台詞
都市伝説要素が満載。ですがこれが瞬く間にSNSで拡散され、区役所から「不審者情報」として周囲の警戒を強めるようお達した出るほどに。
これに、やはり都市伝説のなりたちと思ったのかはわかりませんが、NHKが動き、事の顛末を大変興味深く報じていますので興味のある方はコチラまで。
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20180614/k10011478421000.html
要は、「事実を確かめた情報よりも、不確かな情報が広まっていった」ということを伝えているのですが、なんでわたしがこんな記事を書こうと思ったのかというと、最近インスタグラムで繋がったわたしの地元の同級生が、愛猫家として動物虐待犯の情報を鬼拡散していたからです。
わたしが小学生のとき、同級生の母親がうちに乗り込んできたことがありました。
「お宅の○○くん(わたしの弟)が、うちで飼っている鳥を、うちで飼っている猫に食べさせたそうですね。うちの子が言っていますよ。残酷なことするんですねえ。ちょっとひどいんじゃないですか? うちの子、ショックで寝込んでいますよ」
えっ、と目を剥き驚くわたしの母親。だけど、どうにも納得いかなかったそう。「ウチの子どもに限って」という親特有のアレのほかに、弟は同級生とほぼ接点がなく、家は近いけれど一緒に遊んだことも家に行ったこともなかったからです。
忍び込んで、小鳥を鳥かごから取って警戒心が強い猫に近づいて食わせることが、小学校3年生の弟にできる可能性も、なきにしもあらずですが。母親は釈然としないまま弟に尋ねると、当然「やっていない」と否定。
数日後、事態は急変しました。同級生が、父親とともに謝罪に現れたのです。
「うちの子がやったことを、お宅の子のせいにしてすみません」
と。
同級生は昔から現在まで、「おしゃれで美形で動物好きで優しい人」という印象で通っており、違和感を持って接しているのは、事実を確認した人たちだけ。
同級生は一体、どんな心境で、動物虐待犯に過激な言葉を投げかけているのか。
......なんてことを、彼がチワワの件で飼い主に向け<おまえが死ね! ゴミクズ!>と投げかけている書き込みを読んで、思うのでした。(文◎春山有子)
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