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歌舞伎町・中国人の殺し屋に会ってみました|久田将義

TABLO / 2018年7月29日 15時0分

 歌舞伎町を取材しているうちに、そのヤクザに当たる事になったのですが、彼自身は在日二世でプロレスラーのような体格で、圧が凄かったです。彼は中国人の殺し屋を取材してみないかと言いました。取材費を彼に払う訳でもないので、金銭目的ではなく、なぜそのような事を言ったのか意図が分かりませんが、とりあえず会っておきたいと思いました。取材者の好奇心からです。

 中国から来た人間に組織から依頼して殺人を頼む......。小説のような展開があるものなのかと恐々、アポを取ってもらいました。仮に名前を張としておきます。かなり、渋っていましたが、そのヤクザの仲介で会ってくれる事になったのです。

 ダメ元のインタビューです。張と会う事に多少の恐怖を覚えていた僕は、時間帯を昼間にしてもらい、場所も新宿アルタ付近の人通りが多い喫茶店にしました。

 約束の時間に張は日本人女性の通訳と一緒に来ました。どんな男かと、内心ドキドキでした。外見はこんな感じ。


・量販店が売っているような背広を着ている

・小柄

・普通のサラリーマンに見える。

 顔もほとんど印象に残らなかったです。 当然、向こうは警戒心丸出しです。


 「どのくらいの相場で「仕事」するのか」

 「どのようなシステムで依頼が来るのか」

 などを質問しました。相場は十万円と言います。「安いとは聞いていたけどそんなものか」と僕は思いました。その金額の安さにびっくりしながら、質問を重ねるうちに、張はゆっくりとした日本語で

 「あなた、どうして、そんなことばかり聞く」

 と言って僕の目を見つめました。
 

 その眼つきの不気味さ。アノ眼つきでした。眠そうな、トロンとした眼。ぞっとしました。僕はその場を何とか取りつくろいました。それから、張は何も言わずさっと帰っていきました。

 普通の人は、人を殺した人間に会う事はあまりないと思います。今でもその「トロンとした眼」「眠そうな眼」をした表情の人間の顔を見る事が出来ます。

 僕は新撰組のファンなのですが、副長土方歳三の生前の写真が保存されています。「役者のようないい男」と称された土方歳三ですが、眼に特徴がある事に僕は、ある日、気付きました。

 優しげな眼です。しかし見方によってはトロンとした眼です。幕末、何人斬り殺したのかわからない彼もやはり「殺人者の眼」を持っていると感じたものです。(文・久田将義 連載『偉そうにしないでください』)

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