総力取材・アマチュアボクシング界激震 日本ボクシング連盟・山根明会長を追い落としたのは誰か――!
TABLO / 2018年8月4日 7時0分
この記事を書いている8月3日現在、テレビや新聞には日本ボクシング連盟(以下日連)のニュースが溢れています。マイナースポーツの問題が、なぜこんなに世間の注目を集めているのでしょうか? 日連の独裁者である山根明会長の強烈なキャラクターが大衆の好奇心を刺激したのだとは思いますが、自分が管理するブログでこの問題を取り上げ続けてきた私からすれば、この数日の異常な熱の高まりには戸惑うばかりです。
この度のバッシング報道は7月28日に報じられた『<リオ五輪>ボクシング助成金流用 連盟、対象外選手に分配』という毎日新聞の記事が発端でした。ついこの間までは、終身会長である山根氏の独裁体制は絶対で、言い方は悪いですが78歳と高齢の山根氏に健康問題が生じない限り組織改革は望めない雰囲気でした。山根氏の強権支配に対して不満を持っている関係者は一定数いましたが、彼らの大半は教員や学校の職員という立場で、山根氏と対立することで自分が教えている選手が判定や選考で差別待遇を受けることを恐れ突出した行動を取れなかったのです。
そんな磐石に見えた山根体制にアリの一穴を開けたのが、当時近畿大学ボクシング部総監督だった澤谷廣典氏でありました。
日連の理事として山根氏に仕えていた澤谷氏ですが、昨年三月に大会の視察に行っていた岐阜県で脳梗塞を発症。命はとりとめたものの入院とリハビリを余儀なくされます。すると氏の不在を突いて近大で総監督の地位をめぐる人事抗争が勃発。コーチへの暴行事件を理由に山根会長から監督辞任を要求された澤谷氏は、これを呑んで近大を去りますが、このあと山根氏と抜き差しならない敵対関係になります。
澤谷氏の辞任後、今度はロンドンオリンピック代表から近畿大学ボクシング部監督に転進していた鈴木康弘氏が生徒にセクハラをしていたことが発覚し諭旨解雇となります。鈴木氏が山根会長の娘婿だったことから、これも内部抗争の延長ではないか? と様々な憶測を呼びましたが、近大を舞台にした暗闘ともとれる事件の頻発を見れば山根支配の水面下で何かが起こっていることは確実でした。
澤谷氏は近大OBですがボクシング経験者ではなく、同じく近大OBの俳優・赤井英和氏との個人的な結びつきから近大ボクシング部のコーチに就任し、その後退任する赤井氏から総監督の地位を譲り受けた立場でした。
生粋のボクシング上がりでないが故にもともと山根会長の呪縛が弱く、また監督を解任されたことで自由な立場で反撃を行うことが出来ました。
ボクシング界の人は、プロもアマもトラブルがあっても内輪で問題を解決しようとする傾向があり、マスコミを使うような戦略は余りとりません。マスコミに積極的に情報提供する澤谷氏の戦略は、「アマチュアボクシング村」ではかなり異質でした。氏は部員による強盗事件が原因で休部状態だった近大ボクシング部を再興するときも積極的にマスコミを活用し、地道に活動する部員の姿を世間一般に周知することで大学当局を説得し部を復活させた実績があります。
澤谷氏の反撃は昨年8月週刊文春に掲載された、『村田諒太も犠牲者「日本ボクシング連盟」のドンを告発』という記事から始まりました。私が澤谷氏にコンタクトをとったのもこの記事を読んだからです。私は以前、日本初の4団体世界王者になった高山勝成選手の練習を見学しに近大ボクシング部を訪ねたことがあり、澤谷氏と面識がありました。
記事中に澤谷氏の名前を見つけた私は「山根会長に楯突くとは無茶するなあ」と驚き、コンタクトを取るとすぐに内部告発のPDF資料が怒涛のように送られてきました。
そこからインタビューをしたり情報提供を受けたりして、都合8本の記事をブログに掲載しました。
こちらのリンクから当ブログの記事をご参照ください。
『お中元企画 日本ボクシング連盟記事詰め合わせ』
http://boxing2012.blog.fc2.com/blog-entry-615.html
本日付の毎日新聞で山根氏が暴力団関係者と長年交友があったことが報じられましたが、そのような噂は以前からも囁かれていました。日連の事務所に行ったことのある教員の方は、事務所に神棚や提灯があって、本当に稼業の方の『事務所』みたいだったと教えてくれました。
山根氏がなぜアマチュアボクシングに関与するようになったのか? はまだ分かっていません。ある指導者の方によると、80年代や90年代当時は大学や高校ボクシングのOBに暴力団関係者が複数いて、判定結果やレフェリングなどでトラブルになることがあり、山根氏はそれらの介入を排除したことでアマ関係者の信頼を得たのではないか? ということでした。山根会長が語る「体を張ってきた」という体験談はこの時代のことなのかも知れません。
バッシング報道が始まった当初は「これでやっと日連の問題が世間に伝わるな」と喜んでいましたが、まさか全ての民放ワイドショーが報じるような社会現象になるとは夢にも思いませんでした。世間はアマチュアボクシングにここまで関心があったんですね。
関係者やマニアの間の符丁に過ぎなかった『奈良判定』という単語がニュースやワイドショーで連呼されている。本当に世の中何が起きるか分からないものです。
先月末、澤谷氏に誘われて大阪府立体育館にプロボクシングの観戦に行きました。
試合が終わって地下の会場を出ると、澤谷氏は脳梗塞の麻痺が残る右手で手すりを掴んで、息を切らしながら階段を登っていました。私はその姿を見て、山根会長を追い詰めた澤谷氏の執念を再認識しました。利害や小異を超えて連携し、組織改革を進めている理事と役員の皆様にも今一度敬意を表したいと思います。(取材・文◎HARD BLOW!管理人 旧徳山と長谷川が好きです)
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