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「なかった事に出来る」安倍首相動静から見る『赤坂自民亭』騒動|プチ鹿島

TABLO / 2018年8月11日 12時19分


 最近「おっ」と思った記事があった。毎日新聞の先月末の記事。

炎上怖い? 首相公邸で夜会合 極秘開催』(7月27日)
安倍晋三首相は25日夜、首相公邸に地元・山口県の県議約30人を招いて会食した。出席者によると弁当と、お茶やジュースなどのノンアルコール飲料だけが用意され、酒は提供されなかった。

 あの「赤坂自民亭」への批判があって以降、首相は飲食店での夜の会食を控えているという。地元県議とのこの「会合」もノンアルコール飲料でおこなった。9月の自民党総裁選を前にした選挙対策の一つだろう。
 この記事の読みどころは、こうした会合の是非ではない。次の部分である。

「かん口令」(出席者)でこの会合は公にされず、報道各社の首相動静には記されていない。

 首相動静には記されていない......。とても、とても、重要だ。
 首相動静は、首相の一日が「すべて」載っているわけではないのだ。首相サイドの希望があれば「大事なひそひそ話」であればあるほど載らないということになる。

 となると、あの一件をもう一度考える必要がある。
 安倍首相と加計学園・加計孝太郎理事長が「2015年2月25日」に面会し、獣医学部新設の構想について説明を受けていたという文書を愛媛県が国会に提出した件だ(5月21日)。
 首相は説明に対して「いいね」と応じたと記されていた。獣医学部の新設は「2017年1月20日」に知ったと国会での答弁していたので矛盾が出る。
 しかし、愛媛県の文書が出たとき、首相は次のように否定した。

「官邸でも自宅でも、記者が出入りする人を逐一確認している。首相動静も確かめた」とし、「自宅も含めて会っていない」と否定した。》(朝日新聞5月24日)

 あのとき首相は自ら、首相動静に載っていないからと否定した。しかし今回「かん口令」さえ敷けば、首相動静には記されないことがわかった。
 つまり、首相動静になかった安倍首相と加計理事長の面会は「かなり大事なひそひそ話」であった!?
 だからこそマズいと思った加計学園の担当者が「二人の面会があったと自分がウソをついた」と言い出したのではないか。その可能性があることを、毎日新聞を読んであらためて思った。
 毎日の記事に触発されたのか、朝日も数日後に検証記事を出してきた。

首相会ってない、言ってない 記録ない 「なかったこと」次々』(8月2日)
安倍晋三首相と面会した事実が伏せられたり、首相官邸が否定したりする事態が相次いでいる。面会中に首相が語ったとされる発言が、後で否定されることもある。「あったことをないことに」する姿勢は、政治不信を招きかねない。

 そういえば、自民党総裁選への不出馬を表明した岸田文雄政調会長が記者会見で、「(首相に)直接お会いして話をさせていただいた」と言ったら、菅官房長官が翌日「会ったことはない」と否定した。あれも驚いた。こういう既視感ばっかりだ。
 こうして考えると、あの「赤坂自民亭」もホントは「なかった」ことにしたかったと思う。ただ赤坂自民亭はSNSに写真を公開して首相との近さをせっせとアピールした議員がいたせいで「ブツ」が残ってしまった。
「あったことをないことに」する姿勢をひっくり返すには、ああいう小物議員の活躍が必要なのかもしれない。
 今週、毎日新聞は、『安倍首相の動静 隠れた面会者も』とあらためて特集記事(8月9日)。

安倍晋三首相と面会したとする証言や記録を首相本人や側近が否定することが最近相次いでいる。いずれも毎日新聞の「首相日々」など各紙の首相の動静記事には載っていない。国のトップであり、公人中の公人である首相の動静が把握できないことが常態化することを危惧する声が広がっている。

 こうなると次回の「赤坂自民亭」が待ちきれない。早く開催しないだろうか。飲み会という名の情報のオープン化が待たれる。(文◎プチ鹿島 連載『余計な下世話』)

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