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2001年9月1日に発生した『歌舞伎町・明星ビル火災』から17年 教訓は活かされているのか?

TABLO / 2018年9月4日 17時30分


 この時期、どうしても残暑と台風の話が中心になりがちだが、歌舞伎町観察をルーティンワークとしてる者として、いまから17年前の2001年9月1日の出来事を忘れるわけにはいかない。

 ゲーム「龍が如く」の影響で、外国人観光客に人気の撮影スポットともなった歌舞伎町一番街で起きた明星56ビルの火災である。地上4階地下2階、建築面積83平方メートルほどの小さな雑居ビルだが、火災による死者は44名という戦後5番目の被害者数を出す惨事となった。

 当時、筆者も新宿近辺で飲んでいたはずなのだが、深夜1時というコアタイム、「歌舞伎町」「火災」「雑居ビル」というありふれたキーワードからこれほどの被害が出た火災とは正直、想像もつかなかった。いきつけの店に入った直後、「(記者クラブ所属の)記者が呼び出されて歌舞伎町に飛んでいったわよ!」という言葉を聞いて初めて、「これは少し大事かもしれない」と思ったのである。

 この火災が、ここまで甚大な被害になった最大の理由は、再三の所轄消防署からの指導を無視、火災報知器は誤作動が多いとして切りっぱなし、防火扉の前が荷物置き場......などなど、無責任極まりない管理状態だったことに尽きる。ビル管理者の責任は大......と言わざるを得ないのだが、9億円近い賠償金支払いや刑事罰(執行猶予付き)も受けていることなので、ここで言及することは避けよう。

 大切なのは"なぜ火災が起こったのか"と"大惨事の教訓は活かされているのか"の二点である。まず、前者から言うと、筆者は事件後から複数回、火災原因についての記事を書いてきたが、消防庁や警視庁関係者の見解は、「放火の疑いもあるが、放火と断定できないところもある」という玉虫色のものだ。しかし、歌舞伎町の裏事情に精通している人物の見解は、放火の可能性が高いとしたうえで、火元となった3階のテレビ麻雀店(賭博店である)のケツ持ちを巡るトラブルではないかと推測していた。

 この頃、歌舞伎町の裏社会はさる大勢力の進出が盛んで、そこと従来の勢力の鍔迫り合いから起きた出来事......というワケである。

 また、この火災では火元の3階と4階のセクシーパブに被害者が集中したのだが、その場にいて助かったのはわずか4人。みな、3階麻雀店の従業員で、控室の窓から脱出した(責任を放棄したとも言えるが)が、実はそこに「第4の男」がいたという噂も根強いのだ。このように、すべてが霧の中、ぼんやりとしており、原因究明という意味では完全にデッドロックに乗り上げている。

 そして、教訓は行かされているのか?という点については、活かされたとも言えるし、まだまだ危険性は残っているとも言える。この火災をきっかけに消防法などが改正され、ビル管理者の責任はより重大となった。しかし、その反面、現在も歌舞伎町には無数の雑居ビルが林立しており、そのすべての防災意識が高まったかと言うと、正直、疑問符がつく。

 喉元過ぎれば熱さを忘れる、ではないが、明星ビルの火災を忘れたというより、知らない世代が増えており、いま一度火災の恐ろしさを周知・徹底させる必要があることは必要だろう。二度とあのような惨事は起こさない......少なくとも、そう心がけることが、44人へのせめてもの慰霊ではないだろうか。(取材・文◎鈴木光司)

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