良識やマナーにばかり強いこだわりを持った人がおちいる「電車内暴力」 身に覚えがありませんか?
TABLO / 2018年9月15日 11時0分
園川幸彦(仮名、裁判当時54歳)は憤りを感じていました。
西武新宿線電車内でのことです。
彼は端の席に座っていたのですが、パイプフレームに寄りかかるようにして立っている若い男の尻のあたりが肩にぶつかるのです。わざとやっている、と彼は思いました。注意をしようと思いましたが、その時電車内は非常に混雑していたので周りに迷惑がかかると考えて注意はしませんでした。
情状証人として出廷した妻は彼について、
「主人は良識や社会的なマナーを守ることに強いこだわりを持つ人です。理由もなくこんなことをする人じゃないのでそうなるだけの理由があったんだと思います」
と話していました。
電車を降りる際に、彼は先ほどの若い男に注意をしました。
「おい。お前のしたことは迷惑なんだよ。気をつけろ!」
いきなり知らない人に喧嘩腰な口調でこんなことを言われた男性はもちろん謝ったりはしませんでした。満員電車でのことです。おそらく、電車内で身体が彼に当たっていた自覚もなかったのだと思います。
「何だよお前、バカか」
そう吐き捨てて電車を降りていこうとしました。
「謝る気はないんだな、とひっかかりを感じました」
という彼は若い男を捕まえ、
「謝れ!」
と詰め寄りました。若い男は当然謝りはしません。口論をしているうちに電車のドアは閉まり、大勢の客が降りた後の人がすっかり少なくなった車内で二人は口論をし続けました。
「いい加減な人や卑怯な行いをする人に嫌悪感を感じます。被害者はとても不誠実でした。私が注意をしても謝罪もなく、それどころか私に侮辱の言葉を吐いていました」
そう供述していた彼は目の前にいる若い男がどうしても許せませんでした。激昂した彼はいきなり若い男の髪の毛を掴み、上下に揺さぶりました。
「いてえよ! 離せよ!」
と言う被害者の言葉には耳も貸さず、被害者の身体をシートに押し付けて、
「人に迷惑をかけてケンカ売るからこういうことになるんだ! わかったか!」
と怒鳴り付けてから、被害者の頭を数回電車内のパイプフレームに叩きつけました。
「言葉の暴力を暴力で返しただけです。イヤな思いを人にさせれば、イヤな思いは返ってくるんです」
という考えで被害者に暴力を加えた彼は電車が駅に着くとその場を立ち去ろうとしました。そんな彼の背中に被害者は、
「逃げんのかよ...いい年齢して残念な人ですね」
という言葉を投げかけました。すると彼はまた電車内に戻ってきて
「お前、面白いやつだな」
と言って、さらに被害者の顔面に膝蹴りをしてから逃げていきました。その後、すぐに駅員に捕まり傷害罪で逮捕されました。
この暴行で被害者は鼻骨骨折、打撲など全治1ヶ月のケガを負いました。
他人への暴力は最低中の最低
彼は空手をやっていた経験があり、体格もかなりいい人でした。検察官の請求した証拠によると、身長は167センチで体重は95キロだそうです。
検察官に、
「髪の毛を掴んだりして力ずくで相手を屈服させて何か解決するとでも思いました?」
と質問された際に彼は、
「深くは考えていませんでした。しかしもし私が殴れば、もっと大きなケガをさせていました。殴らない方向では髪の毛を掴むのは最善だったと思ってます」
と答えていました。
そもそも初めの喧嘩腰の注意がおかしい、「ちょっと、当たってますよ」くらいの柔らかな言い方でもいいんじゃないか、というようなことも指摘されていましたが、
「迷惑行為をする人間に注意をすることに関して、やり方や言葉遣いを改めるつもりは今はない」
そうです。彼は今回の事件以前にも何度か、事件にこそなっていませんが電車内でのトラブルで警察の世話になったことがあります。
奥さんによれば彼は「良識や社会的なマナーを守ることに強いこだわり持つ人」です。そして今後も迷惑行為をする人を見かけたら注意をしていくそうです。
もっとも良識や社会的なマナーを守れていないのは一体誰なのか、彼にはまだわかっていないようです。(取材・文◎鈴木孔明)
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