『新潮45』が消滅 内外から批判され抗議デモまで誘発した「保守路線」とは何だったのか
TABLO / 2018年9月26日 6時6分
性的マイノリティーであるLGBTを抱える人々に対し、「生産性がない」とする杉田水脈衆議院議員の"論文"が大きな話題になり批判を集めました。
該当の文章を掲載した新潮社の月刊誌『新潮45』自体にはそれほど注目が集まっていなかったのですが、杉田議員を擁護する特別企画「そんなにおかしいか『杉田水脈』論文」を掲載すると、一気に大きな批判の矛先になりました。
これをさらにダメ押ししたのは同企画内にあった、小川榮太郎氏のLGBTを「擁護するならば、痴漢の触る権利も守るべき」とする持論が展開されていたことでした。
満員電車に乗った時に女の匂いを嗅いだら手が自動的に動いてしまう、そういう痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深ろう。再犯を重ねるのはそれが制御不可能な脳由来の症状だという事を意味する。
彼らの触る権利を社会は保障すべきでないのか。触られる女のショックを思えというか。それならLGBT様が論壇の大通りを歩いている風景は私には死ぬほどショックだ、精神的苦痛の巨額の賠償金を払ってから口を利いてくれと言っておく
小川榮太郎氏「政治は『生きづらさ』という主観を救えない」(「新潮45」10月号)より抜粋
このことから『新潮45』に注目が集まると、昨今の発行部数が危険水準であることが露呈し、苦肉の売上打開策として極論を展開しているのではとする疑惑が浮上。
さらに大きな批判を受ける形で、21日には新潮社社長自らが「あまりに常識を逸脱した偏見と認識不足に満ちた表現」との声明を発表し、25日夜には「深い反省の思いを込めて、このたび休刊を決断しました」と休刊の決定が発表されました。
ネットの声もエスカレートしています。
「言論の自由盾にチキンレースすりゃこうもなる」
「たけしとヤクザの親分の対談とか面白かったのにな」
「新潮46新発売!」
「新潮社にしてみれば不良コンテンツを処分できただけ、っていうのが何とも」
「最終巻はプレミアつくだろうから急げ」
何故か休刊を決定させた『新潮45』10月号がプレミア化するのではとの憶測から、購入を急ぐ者までが出るという不思議な現象が報告されています。
さらには、『新潮45』で書いていた執筆者が「編集長が暴走した」などとSNSで暴露したり、新潮社の中でも別の編集部が『新潮45』に対してのアンチテーゼとも取られるツイートやリツイートをしていることも注目されました。
現編集長は本当に暴走していたのでしょうか。『新潮45』関係者に聞いてみました。
「今の編集長は、ノンフィクションで多くの書籍を出してきた人です。僕はけっこうすごい人だと思っているんですよね。いい本をいっぱい作ってるんです」
「一冊作るだけで赤字が膨れ上がっていたようです。以前から休刊の話はずっとあったんですよ。でも、派生物を刊行するために本誌も何とか生き延びねばと頑張っていたようです」
「今回は少なからず広告主からのクレームもあたんじゃないですかね。『謝らない』特集ってすごいことですもんねえ」
と、至極冷静な意見が返ってきました。いずれも共通していたのは、本誌立直しのために保守路線へ舵を取ったのではないかというものでしたが、今回はそこが裏目に出てしまったようです。
内容は首を傾げるものだったにせよ、LGBTについて国民的に議論が巻き起こることは未来に対して明るい材料となると言えます。彼・彼女たちが生きづらくない国を作るのは急務だからです。
しかし、80年代から社会に問題提起してきた『新潮45』自体が消滅してしまったことは残念でなりません。(文◎編集部)
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