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「東京一危険な男」に狙われた! 「彼」は迷惑系の走りだった あの時代YouTubeがあったら……|久田将義

TABLO / 2020年12月28日 10時30分

「東京一危険な男」に狙われた! 「彼」は迷惑系の走りだった あの時代YouTubeがあったら……|久田将義

写真はイメージです。

迷惑系という言葉が出てきてからしばらく経ちます。

僕が編集者になって駆け出しだったころ、ある男に接触しました。彼は恐らくYouTuberになっていたら、迷惑系になっていたのだろうなと思っています。「東京一危険な男」と雑誌に書かれるほどの人物です。

以前、拙著『トラブルなう』(大洋図書)でタイトルのような記事を書きましたが、当時の方が記憶がはっきりしていて、まあまあ詳細が書かれています。

当時、彼が作家萩野アンナさんの母上を脅迫したとして逮捕されたことがありました。読売新聞では、以下のように報道されました。

《「●●●●には気をつけろ! 目印は女みたいな声と独特なルックスだ」──。雑誌「クイックジャパン19号」(1998年5月・太田出版)には、強烈な見出しが躍っている。同誌によると当時からK容疑者は「役者としてオレを使え」などしつこい売り込みで、業界内では〝超〟のつく有名人だったという。

K容疑者の過激な自己アピールの実態は、「いきなり電話で『会ってくれ』って言われて、断ったら『僕に会うチャンスを逃す気か!』って逆ギレされた」(映画監督)など各界関係者が証言している。

当時のK容疑者の肩書は、自称ライターではなく役者志望。プロフィールや自己PRなどによると「年齢・性別不詳。不気味でキュートなキャラクター」で人気バラエティー番組にも出演。劇団〝猫ニャー〟では、舞台の上で踏んだ弁当を食べる壮絶な役を身長155センチ、体重78キロの体をフルに使って演じていたという。

事務所に所属していた時期もあったが、仕事が少なく「ストレスが爆発して、自分で動こうと思って辞めた」とK容疑者は同誌のインタビューに答えている。

自分で仕事を取ろうと各方面に電話をかけまくっていたというK容疑者。インターネット上ではその「被害者」が集う掲示板もある。山手署の調べでは、K容疑者は昨年12月21日夜、横浜市内の荻野さん宅に電話し、応対した母親に「アンナの携帯電話番号を教えろ。教えなければ命がないぞ」と脅迫した疑い。K容疑者は2年前、東京都内でアンナさんと面会し「自分の原稿を見てほしい」と話したことがあったと供述している。

K容疑者と同居していた両親によると、K容疑者は7、8年前から深夜に自室から熱心に電話をかけ「言い分が食い違っているのか、トラブルなのか、大きな声を出し、激しい口調で話していたことがあった」という。また最近、執筆や芸能活動をしている様子は「全くなかった」という。読売新聞2006/01/13(記事では実名)》

このような記事を書かれたK。僕は、そのかなり前に、ある人の紹介で彼とライターとして、20年以上前の話で恐縮ですが会う事になりました。まず、待ち合わせで遅刻約三十分。これは百歩譲ってしょうがないとしましょう。当時Kは二十歳くらいでそんなに社会経験もないと思ったからです。

風貌は漫画『ドラゴンボールZ』に「魔人ブウ」というキャラクターに顔は似ています。そして首が隠れるくらいの髪の長さ。身長150㎝と少し、体重80㎏くらい。新聞記事にあった通りです。声は女の子のように、あるいは子供のように高いです。

一瞬太った女の子が会社に来たかと思いました。そして遅刻の詫びも言わず、編集部に来るやいなや、かん高い声で「あのーっ、久田さんって人いますかあっ」と、叫びます。ぎょっとする編集部内の女の子たち。僕も声ですぐわかりましたが、一種奇妙な外見にちょっとびっくりしながら、あわてて「はいはい」という感じでKの所へ挨拶に行きます。

参考記事:凸撃系ユーチューバーが生配信中に拉致か 映像が乱れたあと「車に乗せろ!」の声 | TABLO

とりあえず、名刺交換しようと思いましたが、名刺がないと言います。その代わりA4の紙を差し出し、ここにプロフィールが書いてあるのことです。カン高い声で、

「あの、それ、十枚くらいコピーして下さいっ」

「コピーならご自分でしたらどうですか? そこにありますから」と返答。で、Kはろくな挨拶もしないまま、自分のプロフィールをコピーし始めました。

『クイックジャパン』(太田出版)にコラムを書いていると言って、見せてくれました。それと演劇をやっていると言います。プロフィールにも書いてあり、会場が僕の出身校、法政大学の関連施設とありました。僕は「ああ、法政大学にも行ったんですか。僕、あそこを卒業したんですよ」とお愛想のつもりで言います。

すると「へー」と一言だけ。鼻で嗤われました。

参ったなと困っていたら、詩を書いてきたので見て欲しいと言います。詩という時点で「ああ、うちの出版社と合ってないな」と思い読んでみると、まるで意味がわからない。つまらない。さーっと目を通し、とりあえず「興味深いものですねぇ」と言ったら「そんなに早く読めるもんなんですかぁ」とまた憎たらしい返し。そして、少し仕事っぽい話をして帰ってもらいました。

帰ったあと、編集部内の先輩が「気味悪いなぁ」とか「危なそう。ナイフとか持ってそうだよな」と口々に言っていました。皆さん、そう見えたようです。

それから食事も奢ってあげたりしました。ただ話をしているうちに、ようやく彼の本性を理解しつつありました。まずだいぶ勘違いをしています。

「貴方は僕の才能をどう感じているんですか!」

「僕と仕事をしたくないんですか!」

「僕の才能を埋もれさせていいんですか!」

などの、勘違い発言に辟易してきました。

また会社に電話がかかってきたので、ハッキリ言ってあげた方が彼のためになると思い、「僕と仕事をしたいと思っているんですか! 僕の才能に触れたいと思っているんですか!」と始まったので「うん、全くない」と言いきりました。強引に受話器を置きました。

年末。歌舞伎町で飲んでいる時にまた携帯にかかってきました。今度は哀願口調でした。こちらも取り付く島もない態度で接してすぐに電話を切ろうとします。すると金がないので僕の家に泊めてくれと言うのです。しかも正月に。

「よく考えると、俺のことをナメてんのかな、こいつは」とようやく怒りへと感情のモードが変化します。歌舞伎町のど真ん中で携帯電話に向かって怒鳴っていました。

「おい、お前いい加減にしとけよ。俺はアタマ悪いけどよ、よく考えたけど、てめえ俺のことナメてるよなぁ、いや、ナメてんだよ。二度と電話してくんじゃねえぞ。二度とじゃねえ、一生だ」

と一方的に切りました。歌舞伎町では、この程度の怒鳴り声は珍しくありません。僕がまくし立てている間、Kは珍しくなだめるような口調で仕事くださいとか、金がないので何とかしてくださいと言っていた気もします。

そして、時を経て八年後。再び、Kから連絡があるとは思ってもみませんでした。僕はワニマガジンからミリオン出版に在籍しており、Kという名をすっかり忘れていました。

ある日、出社すると机にメモがおいてありました。「Kさんという方が連絡が欲しいそうです」。ライターでKさんっていたかなぁ。記憶の糸をたぐり寄せます。あ、KってあのKか。思い出しました。念のため、前の会社の後輩に確認。すると、子供というか女の子のような声だったと言います。アイツです……。

僕は会社内では怒鳴ったり、大きな声を出さないことを信条にしており、守ってきたつもりなのですが、この場合だけ例外を意識的に作ることにしました。Kの連絡先に電話をかけます。あの独特の女の子みたいな声で答えてきました。

「はい」

Kです。間違いありません。

社内であるし、ここで大声を出した場合、お客さんがいたらびっくりしてしまいます。「『実話ナックルズ』の編集長(当時の僕はこんな職でした)ってアウトロー雑誌だけあって、やっぱりって感じ」などと噂されるのも本望ではありませんが、Kはカマしておかないとつけ上がってくるでしょう。

周囲には人はいないことを確認します。

僕「お前、Kだろ。もうかけてくんなって言わなかったっけ。何すっとぼけてんだよ」

K「え? …んなこと聞いてねえよ」

いきなり強気に出られたので、当初は多少うろたえ気味のK。立ち直って反撃してきました。後ら調べたから『Kから受けた被害者の掲示板』というようなものがあり、Kはしつこく劇団関係者に電話し、相手が断ったりすると「暴走族呼ぶぞ」とか「今からヤクザを行かせるぞ」という脅し方をすると書いてあったのです。

劇団のような平和的な人達に脅しをかけるとは。女性や萩野アンナさんの母上のようなご老人にまで恐怖を与えるのは僕の基準では許しがたいことでした。とりあえずKに僕のような人間も編集者にはいるという事を教えてあげなければと思いました。

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僕は「トボけてんじゃねえよ、おい。てめえKだろうが」

Kは「うるせーと」とか「お前は何なんだよ」と応戦。

で、ついに、Kの得意の言葉が出ました。

「刺すぞ、てめえ」

ダメだこいつと思いました。もう止まりません。受話器に向かって怒鳴っていました。当時、僕も30代前半で気の短さを抑えられなかったのです。

僕「何だと、この野郎。やってみろ。久しぶりだわ、こんな頭キタの。今からテメエん家行ってやるからよ、一年ぶりくれーだよ、そんなセリフ言われたの」

K「だから刺すって言ってんじゃねーかよ」

僕「うるせっ。今から、てめえんとこ行ってやるからよ。会社に迷惑かけられねえから。辞表出すから待ってろ。確か、てめえんトコ○○市だったよな。辞めてその足で行ってやるからよ、サシで会おうじゃねえか。近くまでわざわざ行ってやるっつってんだよ。そんだけ上等切ったんだから絶対来いよ」

そんなやりとりが十分くらい続いたでしょうか。途中で一方的に切られました。もう電話はかかって来なくなったのですが、それからネットで彼の被害に遭っている人たちの掲示板を見ました。ああ、こいつはあの頃から全然変わってないんだな、そう感じました。

Youtubeがある時代だったら「最強」いや「最悪」のYouTuberなっていた可能性はあります。へずまりゅうだかよりも、怖い。何と言っても「東京一危険な男」ですから。が、彼はYouTubeに進出する事はありません。数年後、風の噂で鬼籍にはいったと聞きました。色々な人間に迷惑をかけたとは言え、1人の人の命に対しては合掌をしたいと思います。

彼の事を考えると、迷惑系YouTuberはずっと前からいましたし、今後もいなくならないのだろう、そう確信しています。(文◎久田将義)

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