女が虫を食い、男たちがトゲの上で暴れ、客席からは悲鳴......これがシンプルな『見世物小屋』だ!
TABLO / 2018年10月29日 21時30分
ゴキブリコンビナートを知ったのはいつの日だっただろうか。知人から「マジでヤバい集団がいるから見に行こう」と誘われたのが最初だったと思う。ここどこだよ!? というような場所でほぼ裸に近い男女が"意外と"深刻な内容の劇をやるのだが、そこには臓物や得体のしれない液体が飛び散り、客は全員カッパを着込んで見物するというものだった。あとから聞いた話だが、あまりにも演劇の内容がクレイジーすぎて、どの小屋も貸してくれないので「秘密の場所」でやるしかなくなっているからだ、との内容に心が震えた。
「.........カッコいい!!!!」
私は完全にハマってしまい、この"恐怖の集団"を牛耳っている男にインタビューをしたいと思った。方々に手をつくしてもらい、そして、主催のDr.エクアドル氏に会うことが出来た。
確かその時は夜遅く、現場からの「仕事帰りで...」と言っていたような気がする。研ぎ澄まされた表情、鍛えられた肉体に、私たちは圧倒された。
その時の御縁から、Dr.エクアドル氏は毎回舞台があるごとに律儀に招待してくれる。今回も、10月28日に阿佐ヶ谷ロフトAにて行われた『見世物ナイト』(なんてシンプルなタイトル!)へのお誘いを頂いた。見ると、TABLOでインタビューさせて頂いた「スーパー猛毒ちんどん」も出るではないか。これは是非に行かねばならぬということで、予定していたアイドルイベントをキャンセルした。
知的障害者で結成されたバンド
「スーパー猛毒ちんどん」
会場に入ると、いつもの阿佐ヶ谷ロフトではなかった。所狭しと、スーパー猛毒ちんどんのメンバーたちが客席側にもすでに登場しており、始まる前から盛り上がりを見せている。
なるほどぉ、こんなやり方もあるのか。お恥ずかしながら、たま〜に壇上に立たせてもらうことがある自分としては、ちょっとした「気づき」を頂いた。
「私たちは晒してナンボ、どうぞご自由にお写真をお撮りください。ゴキブリコンビナートを見に来たお客様、30分だけ我慢してくださいね」
と、マイクパフォーマンスで笑いを取る。ゴキコンの前に自分たちが前座として30分演奏しますよ、と笑いを交えながら客に正確な情報を与えているのだ。
19時ちょうど、スーパー猛毒ちんどんの演奏が始まった。曲はとてもシンプルなものが多く、明るいメジャー調や音頭のリズムを多用する楽曲だが、そのシンプルな音階に乗せた強烈な歌詞が胸に突き刺さった。
しょんべんしたいのに
呼んでも来ない
アハハ
漏れちまう
なんだ、なんてストレートな、いい歌詞なんだ! 私は障害者がカウンターに立つ『欠損バー』というものを運営させて頂いているが、このスーパー猛毒ちんどんの歌詞に「お前もまだまだだぜ」と言われた気がした。この、自分たちの上に降って湧いた運命を、こんな風に笑って、こんな風に歌えるなんて、とにかくシンプルに「すげえ!」と感動したのだ。
スーパー猛毒ちんどんの佐藤さんに、本サイト編集長の久田がインタビューしているが、前後編あるこのインタビューは必読だ。私はこのインタビューを読んでも感動し、実際にライブを見ても感動し、彼らの猛毒に今のところ100%やられっぱなしなのである。
【熱気】知的障害者バンド「スーパー猛毒ちんどん」を知っていますか?|聞き手◎久田将義【前編】
「施設に夢なんてない」知的障害者バンド・スーパー猛毒ちんどんを知っていますか?|後編
こんなに書けないことだらけの原稿
生まれて初めて書きます
さて、スーパー猛毒ちんどんの演奏が終わると、一気に機材を片付けるわけではなく、ちびちびと片付けていく中で徐々にゴキブリコンビナートの出番となる。
劇団の女性二人がステージに現れ、鼻から口へ通した鎖にバケツをかけ、そこに水を入れて上顎の力だけで支えるというプチ演芸(その後が酷いのでこれが軽く思えるが実はすごい)を見ていると、
ウギャーーーーーーー!!!!!!!
という声が客席の一番後ろから聞こえて来て、身体を真っ黒に塗った「野人」たちが数名乱入してくる。それが客席内を動きまわり、女性の悲鳴も聞こえてくる。
来た来た来た、これがゴキブリコンビナートの"やり口"である。とにかく彼らの現場で、こちらが無事であった試しはない。ほぼ「絶対」に、客も巻き込まれるのがゴキコンなのだ。ただ、私は知っている。昔は知らないが、今のゴキコンは客に当たりそうで「0,2ミクロン手前で当てない」という芸当ができることを(笑)。
で、やっとステージにあがった野人たちは、あんなトゲの上であんなことをしたり、『強』で回っている扇風機に対してあんなことをしたりした!(自主規制許せ!)
次に司会の2人が「では、狂ったOLさんです、どうぞ〜」と紹介すると、リクルートスーツを着た女性が出てくる。
地味めな女性はポケットから領収証とホッチキスを出し留めて見せた。
嫌な予感がした。
その後、嫌な予感は的中し、OLは自分で「ホッチキス」するだけではなく、客にもホッチキスを渡し「ホッチキス」させた。全身はホッチキスで綺麗に仕上がり、ドヨメキとともに女性ははけて行った。
次に、Dr.エクアドル氏扮する「達人」が出てきた。この時点でもう嫌な予感しかしない。ああ、長い鉄製の串を持っている。ああ、どこにそれを刺すのだろうか、ああああああ、やはりそこに!
さらにカテーテルを持っていて、一生懸命そこにローションを塗りたくっている。嘘だ嘘でしょ、それをまさかどこかに挿れるんじゃないでしょうね、あああああ、やっぱりそこに挿れるのね!!!!
その後「やもり女」が出てきて、虫を食べまくる見世物をやって休憩に入った......。
この後はもう書くことを諦めます
休憩が終わると、ぽっちゃり女性三人組『D−STAGE』が登場。とてもかわいらしいダンスと、巧みなMCで緊張しっぱなしの客席を和ませてくれる。
彼女たちのステージがあると無いとでは大違いだ。D−STAGEさんには感謝しかない。最終的にはかなりセクシーな衣装も披露してくれたのだが、それは観に行った人だけのお楽しみということで。
で、また急にゴキブリコンビナートの全体芸が始まるのだが、もうここから先は書けない。書いたらいろんな人が怪我をしてしまうだろうし、自主規制しようと思う。
この日はタイトルが『見世物ナイト』だから、見に行った人たちだけが事件を目撃できるわけだ。ゴキブリコンビナートはずっと一貫してこの姿勢を貫いている。
毎回、見終わったあとは、トイレで汚れを流したり、服を着替えたりして、ぐったりと疲れてしまうのだが、実はその疲れが心地よかったりする。彼らがシンプルに人を驚かしたり、笑わせたり、怖がらせたりする姿勢は、演劇とか音楽とか、あらゆる「見世物」の根幹なのではないかといつも感じる。自分たちを「見世物だ」と言える彼らは本当にカッコいいと私は思う。
そう、世の中はシンプルなんだ!
冒頭に書いたインタビューの時、Dr.エクアドル氏は私たちにこう言った。「メジャーになりたい」と。ずっと私の心に残っている言葉だ。
世間的には不気味なアングラ集団と思われているかもしれないが、シンプルに客を楽しませたい人たちの集まりなのである。
見世物ナイトの出演者の皆様と、勇気ある決断をした阿佐ヶ谷ロフトAに敬意を表して。(文・写真◎岡本タブー郎)
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