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「団子を食わせろぉぉぉ...」 住みたい街ナンバー1の吉祥寺で幽霊の話を浴びる喫茶店|Mr.tsubaking

TABLO / 2018年11月9日 14時0分

 若者が行き交う吉祥寺駅のほど近く、人気の高いお出かけスポット井の頭公園。陽気のいい週末ともなると、カップルや家族づれ、ランニングや散歩をする人々で賑わいます。そんな「陽」な空気あふれるすぐ裏に、オカルト・スピリチュアル・幽霊などの話が止まらなくなるという、それだけ聞けば「陰」なスポットがあるのです。

 井の頭公園から、吉祥寺駅の反対側にでると閑静な住宅街が広がっています。何年にもわたって、住みたい街の上位にランクインするだけあって、便利さと落ち着いた雰囲気が同居した穏やかな界隈です。そんな住宅地を歩いていくと、控えめで古めかしい看板が見えてきます。

 こちらが今回ご紹介する珍スポット「糸きりだんご喫茶室ミカワ」です。一軒家を改装した喫茶店で、誰かの実家にお邪魔するような門から入り口をあけると、シックでモダンな調度品が配されほどよく照明も落とされた店内。

 おそるおそる入ると「こんにちは」と声をかけてきたのは、こちらの店主の木村さん。ぱっと見は何かに「ヤラレテいる」風もなく、宗教っぽさもありません。促されるままに席へ腰掛け、メニューを眺めます。メニューのはしに書かれた「もう一人も自分をみつけませんか?」の文字が、ここが普通でないことを伝えてきます。

 名物の糸きりだんごが4個ついた抹茶のセット(700円)を注文すると、名前と生年月日を聞かれます。そして「ひとりで作るし、あなたの占いもしてくるから少し時間がかかります」とのこと。もうはじまってます。さらに「待ってる間、こちらを読んでおいてください」と、何枚かの紙を置いて奥へ消えて行きました。
 その紙を読んでみると。

 わかってはいましたが、私はすでに「その世界」へ半歩踏み込んでいるようです。死の間際に見える風景、幽霊は科学的に証明されているといった文字が視界を通り過ぎて行きます。しばらくすると、糸きりだんごと抹茶が運ばれてきました。

 まずは、味わってみようとだんごに手を伸ばそうとした瞬間「前世は信じますか?」と、唐突な質問が繰り出されます。
 ここで、皆様には私の立ち位置を明確にしておかなくてはいけません。私は父の実家が寺であり、仏弟子としての名前も持っております。しかし仏教のいう輪廻転生について物理的に「ある/ない」の話に対しては「どちらでもない」としか思いません。その上で「あると想定しているほうが、豊かに生きられる」と考えています。そこで木村さんからの質問への回答はお茶を濁しました。
 しかし、その返答がどうであっても、そのあとに語られるのは同じ内容になるようです。
 前世の記憶を残した子供がこの喫茶室に来た話から、生まれ変わりが存在すると言う話、そこから魂を磨き続けなければならないと言う話。

 身振り手振りを交え、立て板に水でスピリチュアルのマシンガンが撃ちまくられます。木村さんがこちらの世界にのめりこんだのは、お母様が病床に伏してから。その歴史もまた、どこで息を吸っているのかというほどに止まりません。お母様が病院でたくさんの幽霊を見るようになった。死んだお父さんもやってきた。道が開いたのか、お母様の部屋には何十人もの幽霊が出入りするようになった。結果的にお母様は、幽体離脱をして家に帰ってきたりまでするようになった...大槻教授を連れてきても反論のスキを与えさせないほどの怒涛の勢いで、話は続いて行くのです。
 私が、だんごと抹茶を食べようと頭をかがめても、私の後頭部にオカルトワードの雨が降り注ぎます。
しかし驚くことに、この糸きりだんごが、美味しいうえに新食感なのです。

 だんごといえば、しっかりとした重みと歯ごたえがあるものが一般的ですが、この糸きりだんごは、軽くて柔らかくまるでムースを食べているよう。それでいて米の香りが広がります。そこにどれも甘さ控えめのごま・きな粉・白あん・こしあんがまぶされていて、とても美味しいのです。スピリチュアルトークがひと段落したのか、私がだんごを食べたことに気がついたのか、木村さんの話題は団子の製造方法へ。
 この糸きりだんごの食感は、蒸しては練って蒸しては練ってを普通の団子の十倍以上繰り返して完成させているといいます。そして、鉄の風味がついたりしないように包丁ではなく、糸で切っているとのこと。

 一通り、だんごの話が終わると、占いの結果が伝えられます。裏から資料を持ち出し、私の性格や生き方、職業適性などが語られて行きます。

「お茶をする」というと、友人知人と話したり、マスターとはなしたりする場合が多いですが、ここは違いました。これは講談です。神田松之丞もびっくりのオカルト講談。それを私たちは「浴び」にいくのです。

 最後に、この店と木村さんの名誉のために書きますが、宗教などの勧誘は一切ありません。特定の宗教というよりは、オーラの泉でブームとなったスピリチュアルな世界を煮詰めて煮詰めきった「スビリチュアルの煮こごり」のようなもの。
 そして、糸きりだんごは、ぜひ一度は食べて見ていただきたい一品です。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』第21回)


■糸きりだんご喫茶室ミカワ
東京都三鷹市井の頭4-9-22
12:00〜17:00
火曜・水曜 定休

あわせて読む:日本三大ドヤ街の一角、東京・山谷地区で緊張させられた「出してはいけな場所からでてくるカレー」

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