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都市伝説拡散の背景にヤンキー文化 最恐都市伝説『犬鳴村』の前にあった『地図から消えた村・杉沢村』の真実|久田将義

TABLO / 2021年1月29日 6時0分

都市伝説拡散の背景にヤンキー文化 最恐都市伝説『犬鳴村』の前にあった『地図から消えた村・杉沢村』の真実|久田将義

東京近郊の廃団地。こういうところから都市伝説が生まれる(撮影・編集部)

『犬鳴村』伝説が広まった理由とは

皆さんは九州にある“最恐の村”と恐れられている「犬鳴村」をご存知でしょうか。映画化までされたこの犬鳴村、実は20年くらい前から騒がれていた都市伝説です。昔からの識者は当然、犬鳴村伝説は知っている訳ですが、最近知ったという方もいるかと思います。

そういった方の為に、まず犬鳴村伝説にはエピソードをざっとまとめると、

・九州北部に犬鳴村という村がある
・村の入り口には「この先、日本国憲法は通じません」という看板がある

それを無視して入ると村人が襲ってくる

といったものです。詳しいエピソードを掲載するとキリがないのでこのくらいで良いでしょう。というよりも、これだけでも「日本にこんな村があったのか」という驚きにかられます。

「本当にあるのなら面白い」。伝説が広がった当時、2000年前半、ライター達はこのネット情報の真偽を確かめにいきました。結論から言うと、この犬鳴村は存在せず、まさに都市伝説だった訳です。なぜこのような都市伝説が生まれたのでしょうか。

まず当時の状況を振り返ってみます。僕は当時ミリオン出版に勤務しており、『実話ナックルズ』という月刊誌の編集長でした。その前は『ダークサイドJAPAN』という雑誌の編集長で、その頃から廃墟や都市伝説について掲載していたので、「犬鳴村」についても当然、ライターさんに取材に行ってもらいました。振り返ってみると、時期的に都市伝説が誕生するファクトがいくつか存在していました。

2000年前後の都市伝説は識者たちが指摘しているようにネットを媒介として広がっていきました。元祖都市伝説「口裂き女」とは様相が違うような気がします。ネットとは、具体的には2ch(現・5ch)です。ちなみに2ch誕生以前は「あめぞう」が噂好きの人が好んで閲覧されていました。

都市伝説の拡散に2chやSNSの存在は、欠かせないファクタです。それは口裂き女時代と異なり、映像が貼り付けて拡散されるからです。真実性が増します。

また当時、映画『ブレアウイッチプロジェクト』がヒットしていました。三人の学生が「魔女に滅ぼされた村」跡を探しに行くという態のモキュメンタリーです。この村は日本語に意訳すると「地図から消えた村」と言って良いでしょう。「地図から消えた村」。このネーミングが何かしら日本人の郷愁感を抱かせと思われます。当時は、ロマンのようなものを感じた人は多かったと思います。

参考記事:マニアざわつく 伊藤健太郎事故現場は都内有数の恐怖スポットの近くだった 編集部が現場検証してみた | TABLO

これは今に始まった訳でなく、戦前では「日本に縄文時代からの原住民がいて未だに山中で生活している」というニュースが世間を賑わします。この原住民とは「サンカ」と呼ばれました。サンカは国籍を持たず、弥生時代に縄文人が山に移動し、日本語ではない独特の言語を使うといった人々。「瀬ぶり」と呼ばれるテントで山中を移動しながら生活をしていると言います。実際に、サンカと呼ばれる人はいたようで太平洋戦争中に秩父の長瀞でサンカと過ごした人の証言を『ダークサイドJAPAN』(元ミリオン出版)に掲載いたしました。

一時は陰謀論・都市伝説の類で、日本はサンカ出身の有名人がいて日本を牛耳っているというものがあり、元首相田中角栄氏もサンカだという噂まで広がりました。

ところが、サンカ伝説を広めたのは元朝日新聞社の三角寛氏で、独特の言語を持っていたという「ロマンの部分」ほとんどが彼の創作とされています。幻想が崩れましたが致し方ありません。

さて、映画『犬鳴村』(清水崇監督・東映)が公開され、本では『実話怪談 犬鳴村』(竹書房)が出版されました。初めに結論を申し上げると、都市伝説の広がりにはヤンキー文化がファクタの一つになっていると思います。

すなわち都市伝説の拡散の要因には

1・ネットの普及
2・ヤンキーの情報網

この2つが重要と思われます。

ヤンキー(暴走族と言っても良い)の特徴の一つとして、好奇心が多いという点が挙げられます。「知性」と言っても良いでしょう。彼らを取材していて気づくのは読書好きが多いと言う事です(漫画含む)。確かに、彼らに接した事がない人にとっては乱暴者・喧嘩好き・暴言を吐くといってイメージがあります。その通りです。が、もう一面として「読書好き=知識が豊富」「情報網がハンパない」といった面は忘れられがちです。

そして、犬鳴村伝説が広まった背景には廃墟ブームもありました。月刊誌『GON!』(ミリオン出版 現・大洋図書)では廃墟を掲載。それを参考に僕も『実話ナックルズ』『ダークサイドJAPAN』(ミリオン出版 現・大洋図書)でも廃墟や廃村跡を掲載しました。特に炭鉱で栄えた街は廃村化しているところが多かったです。その最たるものが「軍艦島」です。

『犬鳴村』以前から囁かれていた”地図から消えた村”を訪ねて

さらに特筆しなければならないのは、犬鳴村には「先輩」がいたと言うことです。それは「杉沢村」と言います。これもネットで広まり、“地図から消えた村”と称されました。どういう村かというと、

1・青森県のどこかにある。「空港の近く」「近所にゴルフ場がある」といった情報も
2・村の入り口には鳥居と猿田彦の石碑がある
3・村人は1人の人間によって殺害され全滅。よって地図から消えた

といったものでした。これも結論から言うと実際にこういった村はなく、特に3などは明らかに「津山30人殺し事件」を連想させます(横溝正史著の小説『八墓村』のモデル」。1人の青年が村人30人を殺害した戦時中の事件)。

上記1、2、3の情報を元に1999年末に「ダークサイドJAPAN」創刊時にライターさんと一緒に青森まで行き、飛び込み当然の無謀な取材を敢行しました。とは言え、青森から北海道に渡り「日本で一番小さい市」「幽霊団地」(いわゆる廃墟)「消えた街」(炭鉱町跡)などを回ったので、「杉沢村も行ければいいな」くらいのノリでした。取材費分くらいのネタは得たつもりです。

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季節は12月。青森市は当然、雪景色でした。

こういった取材はRPGに似ています。すなわち、街に行った際に一番、噂・情報が集まる場所、ドラゴンクエストで言う、「ルイーダの酒場」に行くのが良いのです。スナック(地元のお客さんから街の話が聞ける)、キャバクラ(キャバ嬢も都市伝説、オカルト好きが多い)でしょう。居酒屋もそうですが、客は飲食を目的に来ている人もいるので話すのを面倒くさがる人もいます。現に青森駅に着いたとき、居酒屋に行ったのですが店の人からは、青森の名物料理の話くらいしか聞けませんでした。途方にくれつつ、街をさまよっているとキャバ嬢の呼び込みにひっかかりました。新山千春似の美人。僕らはその美貌に魅せられ、彼女の勤務しているキャバクラに行くことに。

そこで楽しく酒を飲んでいる中、ころあいをはかって「杉沢村ってどこか知らない」と新山千春似のキャバ嬢に尋ねてみました。すると意外にも「マスターが知っているかも」と即答、マスターを連れてきてくれました。この店は夜12時過ぎるとサパーに店の形態が変わるとのこと。そのマスターが「杉沢村なら知っていますよ」と嬉しい答え。ネットで出回っている情報を言ってみると、まだ二十代と思しきマスターはにやりと笑いながら「ネット情報。あれは、杉沢村じゃないです。本当の杉沢村は違う場所にあるんです」と言います。

聞けばマスターは地元出身。結構なヤンチャをしていて、いゆる典型的なヤンキーでした。聞きはしませんでしたが多分、暴走族に入っていたと思います。「十年後、青森の繁華街を支配するのが夢」と語っていました。こいういった「街を支配する」「地元の顔になる」という発想も彼らの特徴です。暴走族からヤクザになるケースは多い訳ですが、ヤクザの語源も「役座」と言われています(諸説あり)。地元の顔役が街を守るため、という意味があります。街を支配するというか地元を守るという思考です。

東京からこの雪の中、杉沢村を探しに来たという変わり者に興味を持ったのでしょうか。「朝、店終わったら真の杉沢村に案内しますよ」とマスターは親切に言ってくれました。夜十二時になるとサパーになり、僕ら男性は居場所がなくなり、朝までぼんやりと過ごす事になりました。

朝、閉店後マスターが席に来てくれました。「行きましょうか」。マスターの車で「真・杉沢村」に出発です。マスターの車はフロントにキラキラ光る独特の飾り物(名称は分かりません)、レディース仕様の車でした。よく見たら新山千春似のキャバ嬢が運転していました。何のことはない、マスターの彼女だったようです。

車を走らせていくと、どうやら郊外に向かっています。雪がどんどん深くなり、轍も怪しくなるほど運転には危険な山中でした。これは地元の人間しか分からないでしょう。途中、ネット情報の杉沢村の跡とされている鳥居、猿田彦の石碑がありますが、「まだまだ向こうです。ここではないです」とマスター。

しばらくして停車します。何の目印もありません。マスターは「ここからは2人で行ってきてください」と言います。全く道がない雪中です。「ここで待っていますから。まっすぐ行けばいずれ着きます。小屋が目印です。その奥です」とのこと。膝まで入る雪の中を十五分くらい歩いたでしょうか。小屋が見えてきました。

さらに道なき雪中を進みます。すると、確かに小さな建物が見えてきました。そこへ行こうとすると、ヤバい事に吹雪いてきました。これ以上進むと、足跡が消えて帰れなくなってしまいます。ライターさんと僕はそう判断し、写真だけ撮って帰る事にしました。戻ると車内でマスターが新山嬢と話し込んでいます。「あったでしょ?」マスターがにこやかに聞きます。はい、何とか見つけました、有難うございます。

真・杉沢村の写真は「ダークサイドJAPAN」に無事掲載。その記事を読んだテレビ番組「アンビリーバボー」からライターさんに連絡があり、写真を貸したそうです。当時はデジタルではなく紙焼きでしたから貴重な写真なのですが、それっきり返却がなかったそうです。

ヤンキーの情報力、特に地元における都市伝説・オカルト伝説に関してはかなり重要度があります。現在ではツイッターなどで地元の情報はまたたくまに広がります。地元のヤンキーかその周辺の人間が書き込んでいるのでしょう。

因みにですが、少年犯罪の場合、ヤンキーネットワークから地元の情報はかなり出回るのが近年の犯罪の特徴です。ネットが発達していない時代と違うのは、有象無象さが増大した事でしょう。

都市伝説の拡散にはヤンキー文化が大いに関わっている事を実感した「真・杉沢村」取材でした。都市伝説好きの方には、もし、コロナ禍が静まり、地方に行く事があったら、是非地元のスナックやキャバクラを訪ねる事をお勧めします。そこでしか聞けない怪しくて魅力的な情報が聞けるでしょう。

ついでに、前記したように青森取材と兼ねて北海道取材に行ったのですが、北見市のキャバクラでは「ふみの家」(漢字忘却)と呼ばれる、殺人現場がそのままになっているという話も聞けました。(文◎久田将義)

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