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現在"女性たちの間で"流行っているそうな『エロ・ブーム』について吉原の地で考える

TABLO / 2018年11月14日 12時1分


 若い女性たちの間で「エロ」がブームだ、と言われてしばらくたつ。先日、資料を購入するために、東京・吉原にある遊郭専門書店「K」を訪れた。書店を出た後、吉原大門近くの寿司屋で腹ごなしをしたのだが、筆者が手にした遊郭本を目にした大将が、「Kに行ったの? あそこは女の子の客も多いんだよねぇ」と笑顔で話しかけてきた。

 確かに「K」は女性客が多く、各種マスコミにも取り上げられている。しかし、このような現象は"カルチャー臭"漂う同書店だけではなく、他のエロスポットにも波及している。その代表例が、温泉地・熱海にある「熱海秘宝館」だろう。かつては酔客や団体旅行のオヤジが冷やかしで訪れるような場所だったが、現在ではそのレトロ感(好意的に言えば)が、一周回っておしゃれらしく、カップルはもちろん、女性同士の客も増えているだ。

 降ってわいたような、これら女性のエロブームだが、社会学者などの専門家のなかには、女性たちの社会進出、あるいはその逆で進まないことへの鬱屈とした反動ととるムキもある。それはそれで一面なのかもしれないが、実はこのテのブームは一定周期であらわれるのも事実で、20年前ほどにも女性のエロブームが話題になったことがあった。

 当時はレディコミの黎明期で、森園みるく氏などの第一人者が人気を博していた。さらに、女性スタッフが編集し、女性にターゲットを絞った"初の女性による女性のためのエロ本"と銘打った「K」が発行され(この雑誌はなかなかエロかった)、若者の街・下北沢に男子禁制の大人のオモチャ屋があったのもこの時期だ。

 20年前、このように隆盛を誇った女性のエロだが、結論を言えば尻すぼみ状態に終わる。レディコミは現存するが、ティーンズラブ(TL)やボーイズラブ(BL)などよりマニアックに細分化され、女性専門エロ本もエロ本の危機が訪れる遥か前に休刊し、女性専門大人のオモチャも閉店して久しい。

 これら当時の女性エロが社会学者らの言うように、「女性の社会進出」や「ジェンダー」に影響されていたのかと言えば、そうかもしれないし、そうでないかもしれない。だが、実際にはそれらブームはことごとく一過性で収束しているだ。

 筆者は専門家でも評論家でもないので、論評する立場にはないが、ひとつだけ言えることがある。それは、これら女性のエロブームはあくまで「一般女性」向けの物であって、セックスワーカーなど"プロ"の女性たちのなかにはほとんど波及していない、ということだ。

 本来、女性のエロを真面目に見つめるなら、いま現在、働いている女性を抜きにしては成り立たないハズだ。しかし、一般女性とセックスワーカーの距離はことのほか遠く、特に一般女性側に距離感が見られる。秘宝館で嬌声をあげる何分の一でも、セックスワーカーを「理会」する心持があれば、良い意味でのエロブームが訪れるとも思うのだが。(文◎鈴木光司)


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