『映画秘宝騒動』にひと言だけ言いたい あの「だいしゅきホールド起源事件」の様に綺麗に終息させましょ|春山有子
TABLO / 2021年2月5日 11時45分
写真はイメージです
日々、何かが燃えては朽ちてゆくツイッター界隈ですが、最近では映画専門誌『映画秘宝』の岩田和明編集長が、彼が出演したラジオの女性リスナーへ、雑誌公式アカウントから「死にたい」とメンヘラDMを送ったことが発端の騒動が最新炎上といったところではないでしょうか。
「死にたい」とリスナーをDMで恫喝し『映画秘宝』が炎上 僕も以前DMを貰いました DM癖ってあるのでしょうか
「被害者」「加害者」「恫喝」「廃刊」「セカンドレイプ」など物騒な言葉が外野から飛び交い、ついには2月2日、公式アカウント上で岩田編集長の辞任と自主退社を発表するにいたりました。
これにて幕引き……といかないのがツイッター界隈ではよく見受けられる事象。前出の女性リスナーは、岩田編集長の退任発表数日前から騒動に特化したツイッターアカウントを開設して経緯をまとめており、19年12月に『映画秘宝』相談役で映画評論家の町山智浩さんと絶縁経験のある著述家・春日太一さんが同アカウントを応援するなど、まだまだくすぶっている印象を受ける周辺です。
現に退任発表後、女性リスナーの「何も聞いてないしこちらから辞任の要求などは全くしていません、ただただ驚いています」というツイートには、「公表前に事前に連絡も入れていないのですが」といった、“まったくもってけしからん!”とした姿勢のリプライがついています。女性リスナーは心強く応援してくれた春日さんの本を購入したり、自身のラジオで騒動について言及し憤ってくれたフリーアナウンサーの宇垣美里さんに感謝の気持ちをひたむきにツイートするなどし、日常を少しずつ取り戻しつつあるように見えますが、はたして……。
こうして尾を引きがちなツイッター界隈発の騒動ですが、近年まれに見るすっきりとした解決が訪れた騒動といえば、”だいしゅきホールド起源事件”ですよね。
ことの発端は20年3月8日、ライトノベル作家の三国陣さんが自身のツイッターにて、
「『だいしゅきホールド』とかいう知能指数0の妄言を生み出したのは私だ。正直すまなかった」
と発言したことでした。さらに自信たっぷりに、
「『いいや私こそが本当のだいしゅきホールド考案者だ!!』という人がいるなら、その人に譲ってあげても構いませんが……欲しいかその称号? そうか?」
「狙って生み出せたなら凄いだろうけど、あれは酔っぱらいが世迷い言を口走ったら偶然流行っただけなんだよ。つまり私じゃなくて拾って流行らせたお前らが悪い(責任転嫁)」
と追ツイートしました。
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すると親しい同業者らしきアカウントが、「だいしゅきホールド」初出と思われる2ちゃんねるのスレッドの書き込みを拾ってきて提示します。日付は2009年10月3日。
<どうでもいいがオレはこのことを『だいしゅきホールド』って名前つけて呼んでる>
という書き込みです。三国さんは「すいません…」「そのころ私コンビニの夜勤だったんですけど、昼間だと眠れなくって酒飲みながら2ちゃんやってた」とやんわり肯定します。するといっきに”起源者”として拡散され、三国さんの元に「神」「偉人」など賛美の言葉が続々と集まるのです、が。
あるユーザーの引用リプライで流れが変わります。
「『だいしゅきホールド』って名前考えたの僕なんですけど、『アレ書いたのオレなんスよw』って自慢するのが恥ずかしくて今まで黙っていたら、ラノベ作家さんにお仕事の宣伝に使われはじめてしまいました。
とてもつらい。おなかいたい。ぼくのものじゃなくていいけど あなたのものではないハズです」
三国さんは、人生イチ赤面を隠すかのごとくやけにあっさりと、「そうですか。じゃ貴方で。皆さんこの人だそうです」と返信しますが、そのユーザーは撤回を求め「スラングやミームは宙ぶらりんなままネットの海に還しましょう」とネット人としてのリテラシーの高さを見せつけます。
三国さんは「嘘つきになるのは困る」とごねにごね、「起源者を主張するぶんには構いませんしどうぞ」などと往生際の悪さを披露し、真剣なレスバトルに発展します。
往生際の悪い三国さんの一方、起源者の主張は終始一貫していました。
「僕『コピペとかネットスラング、発案者が自慢しはじめるとクッソつまんなくなる』と思ってるので、誰かが後乗りしてきた上で『俺はこの人が発案者でないことを知っている』立場として『少なくとも誰のものかわからない状態』は作っておきたいと思ったからなんですね」
一方、同時進行で外野による検証がはじまると、ネットに落ちていた痕跡の点と点が線となり、前出のユーザーが起源主であることが確定したのです。
こうなるとごねていた三国さんは、真摯な謝罪文をツイート。前出のユーザーは自身の矜持ゆえこれ以上言及しなかったこともあり、外野もすっきりと引いたのでした。
ツイッター界隈では珍しい幕引きではないでしょうか。
さて筆者は岩田さんと面識がありますが、実生活で会えば「みんなちがって、みんないい」で済むキャラクターで(DMを送られた女性にはそんなことは関係ありませんが)、もちろん筆者だってひとを断じることができるような清廉潔白な人格ではありません。映画誌で天職を得て、読者から支持され、女優ののんさんと親しくなり、そして騒動を巻き起こして退任……人生は本当に、山あり谷あり。誰もが一寸先は何があるかわからないからこそ、1日1日を噛み締めて生きてゆきたいですよね。(文◎春山有子)
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