コロナ後の日本人の生活様式を予想してみた 「コロナに強い食べ物」が流行るか|中川淳一郎
TABLO / 2021年2月24日 10時30分
こんな日常が戻るのだろうか(撮影・編集部)
常に「謎のブーム」というものは到来する。今の世の中、「ブーム」とは言えぬものの「全員がマスクをつけなくてはならない」はブームに近いといえよう。あとは、戦時中の如き「欲しがりません、勝つまでは!」的に自粛生活を受け入れるのもブームになっている。
さて、2020年の実質GDPは前年比-4.8%。実体経済が伴っていないのに、2月下旬には日経平均株価が3万円を超えるなど、バブル崩壊間近なのでは……といった状態にもなっている。何やら1990年代前半の不景気突入時期の生活を思い出してしまうが、当時突然流行ったものを振り返ってみよう。
コロナと次期バブル崩壊は似たような流れを生み出すかもしれない。
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ナタデココだのパンナコッタだのナンノコッチャ!
1992年、突然「モツ鍋」ブームがやってきた。当時博多を発祥とするモツ鍋は目新しいものとして捉えられたが、当時はこのような言われ方をラジオやテレビではされていた。
〈バブルの時期、カップルは高級フレンチやイタリアンで舌鼓を打ったものですが、今のカップルは慎ましく2人して博多のモツ鍋を仲睦まじくつつき合うのです〉
〈今、モツ鍋がナウなギャルにバカウケです。モツといえば、モツ煮込みのように、オヤジの大衆居酒屋的メニューの定番ですが、博多発のモツ鍋は今もっともトレンディーな食べ物なのです〉
その後出てきたのは「ナタデココ」だ。今でも時々自販機のジュースに「ナタデココ入り」の商品があったり、カップに入ったゼリーに入っている食材だ。ココナッツを原料とし、元々はフィリピンでよく食べられていたが、ある日突然大ブレイク! 一時期は、フィリピンのナタデココ工場がフル稼働するも製造が追いつかず、フィリピン国内の需要が減り日本がフィリピン人から搾取している、といった論調になった。
その後、イタリアのスイーツ(当時は「デザート」)であるパンナコッタも登場し、オッサンは「ナタデココだのパンナコッタだのナンノコッチャ!」とオヤジギャグをぶちかますのがブームとなった。その後も「カヌレ」や「エッグタルト」など、数年に一度新スイーツがブームになった。
さて、2018~19年はタピオカがブームとなったがコロナ禍の20年は特に大ブームとなった食べ物はない。超高級食パンおよび「テイクアウト」ぐらいか。バブル崩壊後の食に関するブームはもしかしたら今後同様の展開を見せてくるかもしれない。
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勝手に2021年に流行るかもしれないものを羅列する
バブル崩壊がもたらしたもので大きかったのは「恋愛至上主義の崩壊」である。まだ残り香はあったものの、トレンディドラマは下降線を辿っていき、『29歳のクリスマス』(フジテレビ系・1994年)では、恋愛事情は描かれるものの柳葉敏郎、松下由樹、山口智子の3人が同居するなど、若干「恋愛に疲れた。気の合う友達と一緒にいれば良い」といった価値観も提示された。
つまり、「食べるものの単価が安くなり、恋愛以外にも大事なものはある。それは気が楽な相手だ」といった「飾らない生き方」が1990年代前半~中盤にかけてやってきたのである。
そしてこれからどうなるかを予測すると、マスク生活・自粛生活によりメイクの必要性も薄まり、ますます「飾らない生き方」が許容されるほか、解雇・雇い止め・ボーナス減額などの時代でもあるため、ますます安物志向が強まるかもしれない。
ここからはもう勝手に2021年に流行るかもしれないものを前回のバブル崩壊以後に流行ったものを参考にしたうえで羅列する。
・昭和・平成歌謡曲(制作費が足りないテレビ局の再放送・再編集で「意外といいじゃん!」と若者が思う)
・台湾スイーツ専門店(コロナを封じ込めた憧れの国の豊富なスイーツが人気に)
・一切恋愛模様が描かれないドラマ(恋愛が感染リスクと捉えられるため)
・豚バラ白菜鍋(モツ鍋よりもさらに安い)
・キノコ鍋(「免疫力を高めよう!」という時真っ先に出る食材のため)
ブームというのは誰かが仕掛けたうえで、世の中の「空気」が作るもの。もう少しパーッと元気そうなブームが来て欲しいものだが、現状仕方ないかもしれない。(文◎中川淳一郎 連載『俺の平成史』)
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