1. トップ
  2. 新着ニュース
  3. ライフ
  4. ライフ総合

「相撲の語源はヘブライ語」発言で見えてくる元貴乃花親方の危険性 日本書紀に書かれている史実とは

TABLO / 2018年11月29日 16時0分

 元貴乃花親方が、日本テレビ系列「スッキリ」に出演し、「相撲の語源はヘブライ語の"シュモー "である」と発言しました。

 これに関して、現役時代の貴乃花ファンであったのに、氏を腐すのは本望ではありませんが、「一理あるけど一理しかない」というのが私の所感です。

 確かに旧約聖書には「シュモー 」という言葉が登場し、ヤコブと天使が相撲のような格闘をする場面が描かれています。また、ハッケヨイやノコッタという言葉、さらに塩をまいたりする行為もユダヤ教の古い神事に見られるものです。
 他にも、ヘブライ語と日本語の共通点も枚挙にいとまがありません。

 ここまでが「一理ある」という部分です。
 この数々の共通点を元に、明治時代以降「日ユ同祖論」(日本民族とユダヤ民族は共通の祖先を持つ)を謳う人が一定数いるのも事実。

 しかし、私たちは元貴乃花親方からどことなく危険な香りを感じています。それは「断言」してしまっている点にあります。
 共通点が多いということは、相関関係が強いとまでは言えても因果関係を語ることはできません。

 また、そもそも日本人は世界中の他民族からの影響を固めてできたようなものです。

 人類の起源はおよそ10万年前の東アフリカ。狩猟採集で暮らしていた人類は、食べ物の獲得競争に負けたグループが、別の場所に移動しながら食いつないでいました。
 東アフリカから西アジア、中央アジアを経て負けたグループの一つは、数千年~数万年かけて東へ東へと移動していきました。そしてたどり着いたのが東の果てにある、現在の日本がある土地。
 途方もなく長い期間をかけて、負け続けて移動してきたため、他者からの影響をたっぷり蓄えてこの場所にたどり着いたのです。

 そのため、ヘブライ語だけではなく世界各地に日本とそっくりな言葉や風習がいくらでも残っています。

 事実、相撲に酷似した競技も、パンクラチオン(古代ギリシャ)、ブフ(モンゴル)、ヤールギュレシ(トルコ)、シュアイジャオ(中国)など、各地に見られます。
これほど世界中から影響を受けている相撲であるにもかかわらず、ヘブライ語に起源があると断言してしまうのは、「一理しかないものを十理あるように語る」という、とても危険な行為であり、私たちが元貴乃花親方に感じている違和感もここにあるのではないかと思います。


相撲の起源は組み合う戦いではなかった!?


 改めて、現在のところ定説となっている相撲の起源をご紹介しておきます。

 垂仁天皇が「天下無双の同士の対決が見たい」とご所望になり、野見宿禰と当麻蹴速による取組が行われました。これが最古の相撲だと「日本書紀」に記されており、相撲協会のwebサイトでも紹介されています。
 絵巻物でも両者が組み合う姿が描かれていますし、誰もが組み合っての戦いをイメージするかと思います。

 しかし実際は、イメージとは全く違う戦いだったのです。

 なんと、取組開始とともにお互いにキックの応酬となり、最終的には野見宿禰が相手の助骨と腰骨をキックで粉砕して殺してしまったというふうに書かれているのです。

 こうなると、前述したヘブライ語に関しても怪しい部分が出てきます。旧約聖書におけるシュモーは組み合う戦いであるのに対し、日本最初の相撲はキックボクシングのような蹴り合いであったこと。またヘブライ語でハッケヨイは「投げうて」という意味を持ち、私たちが現在見ている相撲に当てはめれば繋がっているように感じますが、少なくとも野見宿禰と当麻蹴速の戦いでは、投げうつことがありません。

 ここまでお読みいただいて「結局答えはなんなんだ?」と感じられる方もいらっしゃるかもしれませんが、今のところは「諸説あり」という他ないのが事実です。

 今回の元貴乃花親方の発言から見えてきたのは、相撲の起源ではなく、諸説に目を向けず、断定的に言説を展開するところに「信じやすい」という、元貴乃花親方の危険なオカルト体質だけだったということになってしまうのです。(文◎Mr.tsubaking)


あわせて読む:神事を知らない日本国民 相撲が女人禁制なのは「穢れている」からではありません!

この記事に関連するニュース

トピックスRSS

ランキング

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

記事ミッション中・・・

10秒滞在

記事にリアクションする

デイリー: 参加する
ウィークリー: 参加する
マンスリー: 参加する
10秒滞在

記事にリアクションする

次の記事を探す

エラーが発生しました

ページを再読み込みして
ください