「忖度しない検事」が巻き起こす旋風の行方…社会派に薦める韓流ドラマ|李策
TABLO / 2021年3月6日 17時24分
ドラマ『秘密の森』(tVN提供)
4日、韓国の尹錫悦(ユン・ソギョル)検事総長が電撃的に辞任した。文在寅(ムン・ジェイン)政権は、政権や与党要人らの疑惑に容赦なく切り込んできた尹氏を疎んじ、あの手この手で検察からの追放を目論んできた。そうした攻勢を跳ね返し、「聖域なき捜査」を押し通してきた尹氏だが、与党が「重大犯罪捜査庁」設置法案を準備するに及び、もはや検察の内部にとどまって戦うことは不可能だと判断したようだ。
韓国では、犯罪に対する捜査権と公訴権を独占する検察がたびたび政治に介入。社会の不公正の根源のように見られてきた。特に現政権と与党は、同じ進歩派の廬武鉉(ノ・ムヒョン)大統領が強引な捜査により自殺に追い込まれたこともあって、検察への怨念は深い。これまでも捜査権の一部を警察に移管させるなどして検察の力を削ぎ落してきたが、残った捜査権も完全に取り上げ、起訴と公判だけを担当する組織に作り替えようとする同法案で、検察改革の総仕上げを期している。
しかし実際のところ、そうまでしなくとも、現在の韓国検察はこれまでの改革ですでに、以前とは違う形になっている。同法案の本当の目的は、検察がいま進めている政権と与党に対する捜査を、うやむやにすることにあると筆者は見ている。何しろ検察が捜査に取り組む事件の中には、文在寅大統領が被疑者となり得るケースまで存在するからだ。
そうした事件についての説明は別の機会に譲るとして、今このタイミングで是非とも見て欲しい韓流ドラマがある。チョ・スンウ、ペ・ドゥナ主演の『秘密の森』(シーズン1・2)である。シーズン1が放映された2017年には、米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)が選ぶ「国際TVドラマTOP10」に入った社会派ミステリーの秀作だ。
参考記事:『パラサイト』だけじゃない! 韓流ラブコメ『愛の不時着』が描いた北朝鮮のリアル……金正恩夫妻もこっそり見ている!?
シーズン1のストーリーの縦軸は、ワイロや接待で検察に食い込んでいた実業家の殺人事件だ。ある理由から感情を失った冷徹な検事ファン・シモクと、人情派の女性刑事ハン・ヨジンが真相を追ううちに、第2、第3の事件が発生。「次はいったい何が起きるのか」と見る者を引き込む脚本の力はすごい。そしてドラマの横軸として、韓国の政財界からエリート検事が何を期待され、どんな役回りを担い、どのようにして正義に背を向けてきたかが描かれる。
個人的に面白かったのは、感情を持たないはずの主人公の表情の変化だ。ラスト近くの取り調べのシーンでは、チョ・スンウの演技力に感嘆させられた。ちなみに、主人公は「忖度しないキャラ」が特徴でもあるが、この点は現実の世界の前検事総長、尹錫悦氏とも重なる。
【公式映像】犯罪スリラーの秀作『秘密の森』深い闇の向こうに…
シーズン2は、先述した検察と警察の捜査権調整が重要なテーマになっており、そこに双方の暗部が複雑にからまる。ミステリーとしての魅力は前シーズンが勝るが、リアルさの点ではこちらの方が上だ。そして前シーズンにも増して脂の乗りきったペ・ドゥナの演技は、見て置いて決して損ではない。(取材・文◎李策)
おすすめ記事:実は「日本語がペラペラ」だった韓国の大統領
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
韓国野党、大統領代行の弾劾訴追手続き開始へ…国防相・法相・検事ら20人以上の弾劾案提出
読売新聞 / 2024年12月24日 20時46分
-
野党「弾劾カード」で圧力=苦境の大統領代行―韓国
時事通信 / 2024年12月23日 18時35分
-
〈韓国動乱〉妻はカルト崇拝に株操作、その伯母はユーチューバーにバラマキ…尹大統領“暴走戒厳令”は身内のスキャンダル潰しだった? 復帰したらまた戒厳令も…
集英社オンライン / 2024年12月19日 17時10分
-
韓国・尹大統領の「非常戒厳事件」は逮捕者続々…日本にも「高位公職者犯罪捜査庁(公捜庁)」待望論
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月12日 9時26分
-
尹錫悦大統領を「国政に関与させない」のに「弾劾」には反対…韓国与党の次を見据えた“思惑”
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月9日 10時58分
ランキング
-
1《女性に解決金9000万円》中居正広を支えていた薬指に指輪の“10年愛”パートナー…トラブル前後で打ち明けた「お酒を飲まないと女の子と話せない」状態
NEWSポストセブン / 2024年12月26日 16時15分
-
2神山健治監督、アニメは最大の武器 『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』に見出した可能性
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年12月27日 7時5分
-
3ぐるナイ 「ゴチ25」最終戦…やす子&見取り図・盛山のクビが決定 やす子涙「下手すぎる~」
スポニチアネックス / 2024年12月26日 23時14分
-
4霜降り・せいやが「M-1」で最も感動した1シーン「あんなん言われへん」 意外なコンビの、思わぬ一言
スポニチアネックス / 2024年12月26日 21時56分
-
5松本人志〝地上波回避〟での復帰を選んだ思惑 「ダウンタウンチャンネル」独自のプラットホーム構想 スポンサーも及び腰か
zakzak by夕刊フジ / 2024年12月27日 6時30分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください