スポ根少女漫画の金字塔『アタックNo.1』を舞台化 演じるのはアイドルグループ・アンジュルム
TABLO / 2018年12月9日 18時0分
ハロー!プロジェクトのアイドルグループ・アンジュルムが主演を務める舞台『演劇女子部「アタックNo.1」』(全労済ホール/スペース・ゼロ、11月29日〜12月9日)を観劇してまいりました。
原作はご存知、スポ根少女漫画の金字塔、浦野千賀子の『アタックNo.1』。ライバル関係にある鮎原こずえと早川みどりの友情を軸に、全国制覇を目指してバレーボールに打ち込む女子高生たちの熱い青春を描く作品です。主人公の鮎原こずえを演じるのは現在24歳のリーダー・和田彩花。こずえに対するライバル心を剥き出しにする早川みどりは19歳の上國料萌衣が演じます。
マンガやアニメを原作とした舞台ということでは、いわゆる"2.5次元"の舞台やミュージカルというものが昨今のトレンドです。そして、"2.5次元"というと、「原作のキャラクターをいかに人間で再現するか」という点に重きが置かれていることが多い印象。"原作のファン"をターゲットにしているがゆえに、役者の個性よりも原作キャラクターのテイストこそが重要視される傾向にある......というイメージでしょうか。もちろん、全部が全部そうではないし、舞台シリーズが続くことで"舞台のファン"も増えてくるから状況も変わってくるとは思いますが、あくまでも「"原作ありき"なのが"2.5次元"」ということは間違いないはずです。
では、アンジュルムの『アタックNo.1』はどうなのか......というと、おそらく"2.5次元"的な要素は少なめ。基本的にメンバー全員が自分のパーソナリティーに近い役を割り当てられており、さらに自分の個性をしっかり発揮する形で演じています。
アンジュルム主演 演劇女子部「アタックNo.1」稽古の様子をお届け!演出:星田良子インタビュー - YouTube
アンジュルムの公式YouTubeチャンネルでは、舞台稽古の様子とともに演出を担当した星田良子さんのインタビューが公開されています。そこで星田さんは、女子高生を演じるにあたって「年齢を落とした芝居」をしていた24歳の和田彩花に対し、「それはやめよう」と指示したと明かしています。星田さんいわく「今の和田彩花がどうやってこずえを造形できるのか」こそが見どころであるとのこと。演者が役になりきるのではなく、役の中に演者のパーソナリティーを落とし込んでいく──そんな演出がなされていることがわかります。言い換えれば、"原作のキャラクターありき"ではなく、"演者のパーソナリティーありき"の演出と言えるかもしれません。
つまり、この『アタックNo.1』は、キャラクターを見せる舞台ではなく、『アタックNo.1』を通して"アンジュルムを見せる"舞台なのです。そして、鮎原こずえが個性豊かな部員を集めながら、全国大会に向かっていくという物語もまた、個性がバラバラなメンバーが集まって同じ夢に向かって進んでいるアンジュルムに重なっていく。コミカル要素が多かったり、非現実的な"技"が出てきたり、まったくもって"普通じゃない"あたりもとてもアンジュルムらしい舞台です。
そういう意味では"アイドルグループの主演舞台"としては、まさに正統派な舞台なのです。主人公を演じているのは和田彩花だけど、"主演・和田彩花"ではなく、あくまでも"主演・アンジュルム"。ただ単にメンバーを役に割り当てただけではない、この10人で主演をする意味がある作品となっています。
リーダー和田彩花は、来年の春ツアーをもってグループを卒業します。この『アタックNo.1』は、和田彩花がアンジュルムのメンバーとして出演する最後の舞台作品となるわけです。アンジュルムに青春を捧げてきた和田彩花にしてみれば、最後の舞台で「これがアンジュルムだ!」という姿をしっかり表現できるのですから、とても意義深い作品であり、そして、10人体制のアンジュルムの集大成だとも言えるはずです。
まさか和田彩花本人も『アタックNo.1』が集大成になろうとは思ってもいなかっただろうし、ファンもそこはあまり期待していなかったと思います。でも、実際に作り上げられた『アタックNo.1』は、"アンジュルムそのもの"だったのです。まさに、"アイドルグループの主演舞台"の素晴らしき成功例にして、アンジュルムを堪能できるのが『アタックNo.1』なのです。近い将来、DVD化されるはずなので、是非ともご鑑賞を。(文◎大塚ナギサ)
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