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醤油ラーメンが懐かしい? ふざけるな! 昭和には二郎系も家系も存在しておったのだ!|中川淳一郎

TABLO / 2018年12月11日 11時0分


 ラーメンは日本の国民食である。中国発祥のものを日本流にアレンジし、様々なジャンルが誕生した。しかしながら、昨今「昭和のラーメン」を語るにあたっては、やたらと「東京風醤油ラーメン」が代表格とされておるっ! いわゆる「街の中華料理店」で食べる醤油ラーメンを食べたところ「懐かしい味」という毒にも薬にもならぬクソつまらぬコメントをするバカな芸能人やらブロガーが勝手に「昭和のラーメン」を規定しているこの由々しき事態をどう捉えるか。

 もちろん、今は「家系」「煮干し使用」「鯖節使用」「アゴ出汁使用」「二郎系」「二郎インスパイア系」などに加え、「徳島ラーメン」「尾道ラーメン」「ハマグリ使用」「エビ使用」「タイだし使用」など様々あるが、えぇい! ラーメンなんてもんは、昭和の時代から多様化しておったのだ!

 ここでは、昭和末期・昭和63年(1988年)に文藝春秋から発売された『ベストオブラーメン ヌーボー』を基に昭和のラーメンのジャンルをふり返ってみよう。同書はジャンル別に項目が立っているが、まずはそれをすべて紹介する。


1:ラーメンの故郷 横浜でみつけたさまざまなる意匠
2:東京ラーメンはスープが澄んで味はあっさり醤油味
(サブカテゴリー):東京ラーメン激戦地を行く
(サブカテゴリー):中国人製作
(サブカテゴリー):シンプル
3:思わず生ツバがドドドと出てしまうチャーシューメンの迫力
4:昔の大御馳走 五目ソバよ永遠なれ
5:五目ソバがラーメンの伯父さんならワンタンメンは伯母さんだ
6:本当のテンシンメンを見いつけたッー
7:アネチャもトーチャンも朝から食べる喜多方は日本一のラーメン店過密地帯だべー
8:エキス分たっぷりやけんスープが白濁しよるったい 九州ラーメンは中毒になるとよ
9:コペルニクス的発想が生んだ北海道ラーメン 塩味 味噌味 醤油味三つの世界
10:本当の"京風"はこってりしてまんにゃ
11:大阪ラーメンはさっぱりしとるんやでえ
12:なにがなんでも具で勝負 絢爛たる東京ラーメン百変化
13:極限まで超濃厚ギラギラギラギラ スタミナラーメン
14:一食たちまち汗みどろ 恐怖の激辛ラーメン
15:異母兄弟の研究(ちゃんぽん、沖縄そば、コーヒーラーメン、とりそば、牛臓辣麺)
16:サンマーメン


 ここまで16種類もの種類を全部読んでくださった皆様には感謝の念を禁じえないが、基本的には現在のラーメンのベースはほぼあると言っても良いだろう。しかも「喜多方」「大阪」「京風」「北海道」など様々な地域を網羅している。「魚粉」や「牛骨」「鶏ポタージュ」的なものはないものの、もはやそこは些末なものである。

 この本は昭和の最後の年(昭和64年を除く)に発刊された書だが、日本のラーメンはこの時代にかなり完成の域に近づいていたのだ。二郎系も今は人気だが、「13」の「ギラギラギラギラ」のトップを「ラーメン二郎」が飾っており、「ぶたダブル」が350円とある。

 トッピングにしても「とろ~りとした味付け玉子」はなく、ナルトがやたらと多い印象はあるものの、そこまで時代遅れ感はない。今でも人気店である「大勝軒」「春木屋」「丸福」「田丸」「阿部食堂」「小金ちゃん」「桂花」「ラーメン二郎」「芳蘭」「ホープ軒」なども掲載されている。

 本連載は画一的な「昭和」を批判するためのものである。第一回でも述べたが、基本的に「昭和」というものは「戦争の時期」「高度成長期」「バブル時代」の3つにのみ集約されており、それに無用な批判と郷愁の念を抱いていると批判した。

 それが東京の醤油ラーメンが出た時に「懐かしい昭和の味」というバカ丸出しのクソ批評に繋がっているとオレは考えている。いいか、オレみたいな1973年生まれの男が見た昭和を抹殺するんじゃねぇよ、オラ。というわけで、その一つの現れたる昭和のラーメンがいかに多様性に富んでいたかを今回は紹介した。夜露死苦。(文◎中川淳一郎 連載『俺の昭和史』)

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