バツ3女性の生きざま『大豆田とわ子と三人の元夫』 松たか子・岡田将生・松田龍平・角田晃広らが好演 坂本裕二脚本が秀逸
TABLO / 2021年5月20日 11時6分
フジテレビ系で4月から始まった連続ドラマ「大豆田とわ子と三人の元夫」(火曜夜9時)に、脚本家・坂元裕二の持ち味が前面に出た作品として注目している。くせのある登場人物に本音と皮肉を語らせながらの思い通りにいかない人生の描き方以上に、手の内を見せながら「感動」や「どんでん返し」に頼らない型破りな独自のドラマづくりへの挑戦が斬新な快作だ。
「大豆田」は主人公とわ子(松たか子)と離婚した三人の男性(松田龍平、角田晃広、岡田将生)との関わり、新たな女性とのつながりを中心に、中年男女の今ふうの人間関係を見つめる。
坂元が2013年に手がけた「最高の離婚」(フジ系)は、東日本大震災の当夜に出会い結婚した二人がすれ違いから離婚する男女(瑛太、尾野真千子)のやり取りが評判になった。日常生活で様々なこだわりを見せる神経質な夫と、ずぼらな妻とのずれが苦笑とリアリティーを伴って視聴された。網戸が外れることが許せない点で、とわ子と「最高の離婚」の夫は共通している。
トレンディードラマを代表する1991年の「東京ラブストーリー」(フジ系)で脚光を集めた坂元は、児童虐待が隠れたテーマとなった2010年の「Mother」(日本テレビ系)、犯罪加害者を正面から取り上げた11年の「それでも、生きてゆく」(フジ系)など、連ドラで未踏の領域を開拓しながら活躍してきた。「大豆田」は「最高の離婚」と連なる作風だ。人間心理の微妙な動きや成熟しきれない大人の実態を余すことなく伝える。
5月11日放送の第5話で、3回離婚した男性がプロポーズされたとわ子は「離婚は男性にとって勲章、女性にとっては傷」と相手から見下すように言われ、「離婚に勲章も傷もないと思うんですね。別れた人たちだって、幸せでいてほしい。人生に失敗はあっても、失敗した人生はないと思うんです」と穏やかに反論した。
未練を残す二番目と三番目の元夫にとわ子は半ばあきれながら、やり過ごすこともできる。別の女性に片思いをしたことに気づき離婚した最初の元夫が心寄せる相手が親友かごめ(市川実日子)であることも第五話でわかったが、平静を保とうとしていた。
その一方で、三番目の元夫・中村慎森(岡田将生)は自らの言動について、「いいことは言いますよ。ただ実践できないだけで」とつぶやく。男性の未成熟ぶりを際立たせたシーンだった。
18日の第6話でも、慎森は「こんなだめな三人なのに、彼女はそこを怒らなかった。僕たちは大豆田とわ子に甘えてたんです」と振り返った。前編が完結した第6話で、かごめが急死した。カギを握ると思った人物がいなくなり、「大豆田」の後編はどこへ向かうのか。腰が定まらない男性の未熟さをより掘り下げていく予感がする。自らのこだわりを強調することによるおかしさを打ち出した「最高の離婚」と違い、幼稚さを自覚しながら改められない男性のこじらせぶりが「大豆田」のテーマとなっているからだ。
「大豆田」では毎回、冒頭でストーリーの展開を予告するドラマでは異例の進め方をしている。語りもコミカル調。伏線を張って最終
盤で回収してうならせるような従来のドラマ手法とは真逆の姿勢を取っている。物語を堪能させて視聴者にカタルシスを与えることはあえて狙わない。映画監督是枝裕和との対談で、「テレビっ子ではなかったので、テレビドラマはほぼ観ていないんです」(「是枝裕和対談集 世界といまを考える1」、PHP文庫)と語る坂元らしい選択と思える。
日常生活の一瞬や会話にこそ人生の真実がある—-そんな坂元ドラマの哲学が「大豆田」で存分に発揮されている。主要な登場人物の半生について詳細な履歴書を記すという坂元の持ち味が、とわ子と取り巻く人物でも生きている。とはいえ、それだけに後編の運びは読みづらいが、ありふれた終わり方だけにはならないに違いない。(敬称略)<文@川本裕司(朝日新聞記者)>
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