シリーズ「ネットウヨク論」第9回:インターネットで情報収集する際の基礎知識 「ネット上での声の大きさには理由がある」補足 ネットウヨクと "こじらせちゃった" 人々1

TABLO / 2013年9月22日 10時0分

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 前回の記事の〆に「ネットで声の大きなヤツの大多数は暇人か病人である」と書いたが、後者については詳しく掘り下げなかった。ほんの数行で説明できる対象ではないため、下手なことを書いていらぬ誤解を招きたくなかったというのが理由である。 

 ネットウヨク問題に詳しくない方からすると「ネトウヨが嫌いだからって病と絡めて語るのはいかがなものか?」と思われるかもしれない。しかし以前から(軽口や偏見も含めてだが)ネットウヨクとは一種の症状なのではないか、という指摘や議論があった。

 中には「心の均衡を崩すとネトウヨになる」と断言する声もあったほどなのだが、これは正しい言い方ではない。ネットウヨクとカテゴライズされる人間の中でも、「特にこじらせてしまった人間の声がやたらと大きい」という表現が現実に近いだろう。

 しかもこれはネトウヨに限らず、インターネットを使って情報発信(ブログ・BBS・SNSなどへの書き込み含む)をする人間すべてに言えることである。実は昔からインターネットはその依存のし易さから「メンヘラーの巣窟だ」といった心ない言われ方をしていた空間なのだ。

 絶対数を調べれば、際立って心のバランスのおかしい人間が多いというわけではないのだが、心のこじらせ具合とネット依存度によっては「声の大きさ」が普通の人間とは段違いになるため、とにかく彼らの言動は目立ってしまう。手数(記事数・書き込み数=作業に費やせる時間)でも、文章内容の異常さでも、良くも悪くも人目を惹きやすいのである。

 それ故に、一部の声の大きい目立つ存在だけを取り上げられ、「ネットにはこんな頭のおかしい人間がいるぞ!」と、面白がった人間の手によって情報が拡散されていったのだ。言ってみれば、バイト先でバカをヤラかす若者の情報がTwitterで拡散されているのと似たような光景だったように思う。

 ではそうした "こじらせちゃった人間" と "ネトウヨ" がどういう理由で融合するのかといえば、まず最初に「自分がこうなった理由」を求めて「陰謀論」に流れ、それを繋ぎ役・触媒として「政治思想」と絡み、気付いたら「自分を苦しめる加害者は中国・韓国・北朝鮮・創価学会......のどれかである」といった結論に至ってしまうようだ。

 一昔前の陰謀論の主役といえば、ユダヤ・フリーメーソン・ロスチャイルド・アメリカ&ロシアの諜報部......といった面子だったはずなのだが、近頃はこれらのネームバリューが低下し、代わりに中朝韓や宗教の類が主流になっているように感じる。 

 それが何故かと言うと、答えは簡単で 「陰謀論(妄想)を構築するには、外部からの燃料補給(情報収集)が欠かせない」 からだ。

 例え酷い妄想癖を持った人間でも、100%自分の妄想力だけで世界を構築できるわけではない。どうしたって外界から得た情報を元に、それらをパーツとして取り込み(組み込み)、妄想を強化していくといった作業が必要となる。

 それでは、今現在このような病状に苦しむ人間が情報収集の場として使っているのはどこだろうか? いきなり答えを言ってしまって申し訳ないが、そりゃまあインターネットだろう。ネット接続にどのような端末を使うかまでは把握していないが、モバイルにしてもPCにしても、最も手軽に自分好みの情報に触れられるツールである。

 じゃあそのインターネット上で、彼ら・彼女らが「妄想の構築に使えそう」と判断する可能性が高い情報はどのような内容だろう? ここはとても大事な部分なので、もう少し角度を変えて考えてみよう。

 80年代~90年代頃にもこじらせちゃった人々は大勢いたが、彼らが今流行りの「韓国・在日・売国奴......」といった文言をあまり使わず、「ユダヤ・フリーメーソン・CIA......」などを好んで使っていた理由は何だろうか?

 それは「その当時の情報収集先でよく使われていた単語だから」である。したがって、今ほど嫌韓が叫ばれていなかった時代には、陰謀論の主役に韓国が選ばれることはなかった。"妄想を育む"ためには、外部から何らかの情報を持って来て、それを題材にする必要があるため、外部に存在しない、また滅多に目に付かない情報は、妄想のパーツとして選ばれ難いのだ。

 また、その時代に「右翼的」な言動が好まれなかった理由はもうひとつある。当時は「売国奴」だの「売国政治家」だのといった右翼的な物言いをすると弱者に見えなくなってしまい、妄想で責任転嫁・自己弁護したい人々にとって不都合だったのである。

 まだまだ右翼が軍服コスプレをして元気に街宣活動や企業恐喝をしていた時代だから、彼らの言動に似寄ると「強さを重視した肉体言語キャラ」になってしまい、それでは「弱者アピール」になり得ない。

 陰謀論に逃げる人は、原則として「自分はこんな酷い目に遭っている」「自分が苦しい立場に置かれているのは○○のせいだ」といった、弱さや苦しさの言い訳を求めているものだから、自分が肉体言語な強者に見えてしまっては元も子もないのである。

 だが、今ではネットウヨクらが平然と『自分達は弱者である → 何故なら朝鮮人が日本人差別をするからだ → 朝鮮人は敵だ → ヤツらを日本から追い出さなければ自分達が危ない → 朝鮮人をコロせー!』 という連合弛緩かのような言動をぶちまけるため、「自分がいかに社会的弱者かをアピールするために右翼的な物言いをする」という、昔では考えられなかった手法が可能となった。

 中にはデモや街宣活動で「自分は女にモテないから社会的弱者である!自分は保護されるべきだ!朝鮮人を叩き出せ!」とまで言い放つ人間がいる始末だから、「自己弁護と鬱憤ばらしができれば何でもあり」になってしまっているのだ。

 したがって、今ならば妄想用パーツに嫌韓・反韓系のネタが選ばれても何ら不思議ではない。それを補足・補強してくれる情報がネットに溢れ返っており、また同じこじらせちゃってる仲間同士で容易にコミュニティを構築できるのだから、嫌韓をテーマにした妄想世界の構築が必要以上に捗ってしまうのだ。

 これが昔と今とで陰謀論の主役が様変わりし、"こじらせちゃった人間" と "ネットウヨク的言動" が結び付いてしまった理由である。

 妄想と一口に言っても、過去にはそれが優れた表現・創作物に昇華された時代もあったし、今でもその可能性がなくなった訳ではない。脳内世界を現実の文字や絵や音で表現するという作業は、苦しさを伴うが救いとなる可能性を秘めている。それに比べたら、ネットで便所の落書きをして他者を攻撃するとか、陰謀論を根拠に攻撃性を剥き出しにしてストレスを発散するという行為は、容易・お手軽ではあるが救いがない。 

 蛇足かも知れないが、「医者にUFOと宇宙について考える事を止められた大槻ケンヂ兄さん」という存在もいるのだから、もし「こじらせちゃってるな~」と自覚できたら、他者を攻撃する以外の自己表現・ストレス発散・(言葉は悪いが)マスターベーションの方法がないか考えてみて欲しい。

 この手のテーマは批判を受ける事が目に見えているため、出来ることならば触れたくないのだが、こんな記事でも誰かの手助けになれれば幸いである。

<続く>

NDO(日本のダメなオトナたち)http://ch.nicovideo.jp/ndo

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Written by 荒井禎雄

Photo by 日刊ナックルズ編集部

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