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衆院選直前 四国新聞はなぜ小川淳也氏に当てないで報道したのか│プチ鹿島

TABLO / 2021年10月18日 6時0分

衆院選直前 四国新聞はなぜ小川淳也氏に当てないで報道したのか│プチ鹿島

自民のネット工作か?(撮影・編集部)

先日、配信トークライブをおこないました。メンバーはTABLO編集長の久田将義さん、ジャーナリストの青木理さんと私プチ鹿島の3人

Twitteアカウント「Dappi」について青木理さんがライブ開始と同時にぶち込むという開幕ダッシュならぬ開幕ダッピ。後半では衆院選からの「地方メディアが権力を牛耳る実態」についても話が出た。地元紙は大きな権力であり、その影響力は計り知れないと。
話を聞いていて直近の記事を思い出した。香川の四国新聞が書いたこれ。

『維新新人に出馬断念迫る 香川1区 立民・小川氏』(10月12日)

香川1区は自民党の平井卓也氏と立憲民主党の小川淳也氏による一騎打ちとみられていたが、今月8日になって、元国会議員秘書で新人の町川順子氏が維新の公認候補に決まった。

《町川氏の動きにすぐに反応したのが小川氏。街頭活動やツイッター上で、町川氏が以前、国民民主党代表の玉木雄一郎氏(衆院香川2区)の秘書だったことを紹介し「知らない人でないだけに少しショックを受けている」「選挙区選挙はどの党であれ、野党一本化すべき」などと主張した。》(四国新聞)

そして読みどころはここ。

《町川氏によると、公認発表後、小川氏本人から電話があり「出られたら困る」などと言われたという。小川氏は町川氏の実家の家族のところまで訪れ、出馬断念を求めた。》(四国新聞)

読んでとにかく不思議だったのが、記事の主役である小川氏のコメントが一切無いこと。小川氏に取材していないのである。
他紙を見てみよう。毎日新聞WEB版で報じた記事の冒頭を抜粋する。

《立憲民主党公認で衆院選香川1区から出馬する予定の小川淳也衆院議員が、日本維新の会に対し、同区で競合する維新立候補予定者の取り下げを要請し、維新が困惑している。維新は立憲、共産党などが進める野党共闘に加わっていないが、小川氏は取材に対し「野党が一本化を目指すのは当然で、できなければ立候補の自由がある」と説明した。》(10月13日)

真っ先に小川氏に取材していた。新聞だから当然だろう。読者としては、四国新聞が書いた「町川氏の実家の家族のところまで訪れ、出馬断念を求めた」という部分にザワザワしたはずだ。この書き方だと「実家に乗り込む」的なニュアンスにもとれるからだ。小川氏に取材してほしくなる。
すると、私とYouTube配信「ヒルカラナンデス」をやっているラッパーのダースレイダーが14日に小川氏とニコ生で共演したので本人にぶつけてくれた。

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小川氏は「町川氏は前から知っている人で、家がどこにあるかも知っている間柄。今回の選挙は自民党VS野党で1対1で対決しないとダメ、だから維新の候補であっても自分を応援してくれないかと伝えたかった。しかし電話をしたらつながらない。家に行ったらいなかったので親御さんに御挨拶をした。そのあと維新の会議に連絡していった」と述べたという。

ここから想像できるのは「電話をしてもつながらなかった」というがおそらく相手は「出なかった」のではないか。しかし小川氏は「話せばわかる」とばかりに会いに行ったのだ。失礼を承知で言えばクソ真面目すぎないか? 一直線すぎる行動には「ネタにされる」警戒感が感じられない。
一方で「実家の家族のところまで訪れ、出馬断念を求めた」(四国新聞)とはニュアンスがだいぶ異なることがわかる。驚いたことに小川氏は四国新聞に「一度も取材されたことはない」という。両論を併記したら「四国新聞が書きたい記事のバランスが崩れるからなのでしょう」と。
このへんのことが面白くなってきたので、さらに調べてみた。すると朝日新聞の現地記者がWEB版に書いていた。

《町川氏によると、小川氏本人や自民党の関係者から立候補を断念するよう求める電話が相次いだという。》(10月15日)

これを読むと、自民党サイドからも立候補断念についての電話があったことがわかる。選挙前だから各党必死なのだ。だから読み比べは面白い。
ちなみに四国新聞はそのあと『自民県議から提案「3区から出馬を」 香川1区、維新町川氏』(10月16日WEB)と報じた。『県議から町川氏本人へのコンタクトはこの1回のみで、自民陣営や県連からの働き掛けはないという』と。町川氏への取材はしているのだ。

ではなぜ四国新聞は小川氏には取材もせずにキツく書くのか。

ヒントになるのは四国新聞は平井卓也議員の弟が社長、母が社主を務めるファミリー企業ということ。選挙で常に接戦の小川氏は平井ファミリーの天敵なのである。

デジタル大臣になった平井氏を四国新聞では大々的に報じた。しかしデジタル庁の相次ぐ不祥事はベタ記事扱いだった。さらに『平井デジタル相が出席の会議、音声データ保存せず 私文書扱いに』(毎日新聞WEB)というスクープを各紙は後追いしたが四国新聞は紙面で報じていなかった。いかがだろうか。「書いていない」部分に読みどころがある。

そして今回の小川報道の「書き方」である。

新聞の政治部記者を知っている人に四国新聞の今回の書き方について聞いてもらった。すると、
「街頭活動で話したりツイッターに書いているという事実があるにしても、普通は小川氏にあてて(取材をして)、双方の言い分を書くでしょうし、ノーコメントだったとしてもその旨を書くと思います。選挙前ならなおさら気を使うところなのですが。」
予想通りの見解だった。新聞であるなら「選挙前」はなおさら双方の言い分を書く。あ、四国新聞は「選挙前」だからむしろああいう書き方にしたのか。

私は新聞は偏っていて当たり前だと思っている。だからこそ論調の違いを読み比べするのが楽しい。しかし新聞社の経営一族から政治家が出ていて、その政治家を紙面でゲキ推ししていたら話は別だ。それは紙面の「偏り」ではなく「私物化」である。
選挙前の四国新聞はヤバいほど面白い。もっと追い続けなければいけないと思いました。

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※衆院選ネタ、地方メディアが牛耳る実態、「Dappi」問題、ノンフィクション作家には種類がある、など話題がたくさん。視聴期限は10月28日(木) 23:59 までです。ぜひご覧ください。
“タブーなきニュース空間へようこそ” vol.5【出演】青木理、久田将義、プチ鹿島 https://twitcasting.tv/loft9shibuya/shopcart/1068 (文@プチ鹿島 連載「余計な下世話」)

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