Googleが暴力団に毎月数十万円を広告代として計上した件 暴排条例違反として警視庁は動けるのか
TABLO / 2022年3月9日 6時0分
![Googleが暴力団に毎月数十万円を広告代として計上した件 暴排条例違反として警視庁は動けるのか](https://media.image.infoseek.co.jp/isnews/photos/knuckles/knuckles_44329_0-small.jpg)
写真はイメージです。
「驚きました。そんな事あるのか、と。世界的企業がそんな事をしていたのでしょうか。我々銀行がそんな事をしたら金融庁から『次からは業務停止』という警告を受けるでしょう」と、ある銀行関係者は言います。
2月18日、住吉会組員坂井俊太容疑者ら4人が都内で覚醒剤製造で逮捕。販売目的で覚醒剤を国内で製造していたのですが、こういったケースは初めてと言われています。その坂井容疑者は
「坂井俊太容疑者(39)は現役のヤクザでありながら、「敵刺(テキサス)」という名前で、ラッパーやYouTuberとして活動していたことで知られている。(日刊ゲンダイ2022年2月19日)
いわゆる「アウトローYouTuber」と呼ばれている坂井容疑者ですが、このジャンルは、今に始まった事ではなく、10年以上前に隆盛を誇った「ニコニコ生放送」では「アウトロー生主」と言われる人たちが存在していました。YouTubeが盛況になってから、ニコ生からYouTubeへ大移動をしたり、新たにYouTubeを始める「アウトロー」も増えました。坂井容疑者はその中の1人な訳ですが、「現役ヤクザ」を堂々とタイトルや動画で宣言する人物は生主時代にはいなかったので、これも初めてのケースではないかと思われます。
ここで、さほど問題視せず、スルーされているのが「(坂井容疑者が)YouTuberとして活動」(前出・日刊ゲンダイより)の部分。
一説にはYouTubeで月70万円の収入を得ていたという報道もあります。問題視するべきはここで、これが本当だとするとGoogleが警察が言うところの反社会的勢力に月に70万円–ここではざっくり数十万円としておきますが―ー広告代として払っていた事になります。
2011年に暴力団排除条例(暴排条例)が東京都を最後に全国へ施行されました。警察庁の幹部が「この条例で全国からヤクザはいなくなる」とまで豪語した条例です。ところが結果、準暴力団、世間で言う半グレが「誕生」(警察庁がこの名称を発表)する羽目になってしまいヤクザはいなくなるどころか新たなアウトローの形態を生み出してしまった訳です。
東京都の暴排条例の基本理念には、こうあります。
《【条例の基本理念】「暴力団を恐れない」「暴力団に金を出さない」「暴力団を利用しない」「暴力団と交際しない」》(東京都暴力団排除条例ホームページより)
これにより、銀行や上場企業などの公共性の高い企業は、ヤクザとの付き合いを断つよう自粛しました。読者の皆さんも家や銀行で契約する時に、必ずと言ってよいほど「暴力団関係者の有無」をチェックする項目があるのを目にした事ではないでしょうか。
暴排条例は裏社会に影響を与えただけでなく、芸能界、出版業界にも波が押し寄せました。いわゆる「ヤクザ雑誌」と言われる媒体が廃刊に追い込まれ、書き手も困窮しました。またVシネマ業界も新作が作れなくなりました。
「ヤクザがこういう状況の中、YouTubeで稼げるのなら参入するだろう。車は買えない、銀行の通帳も作れない。人権を奪っているのだから食う為に何でもする」(指定暴力団三次団体幹部)。
ヤクザとはそういうものです。問題はGoogleのYouTube開設の仕組みと、それを見過ごしていたのかどうなのか問われる警視庁です。我々出版業界にも波が寄せ、仕事を奪われたライターもいる暴排条例はGoogleという外資系の会社に適用しないのでしょうか。
改めて暴排条例を見てみましょう。
東京都の暴排条例のホームページにはこうあります。
《【都民の役割】
(3) 事業者の契約時における措置
契約時に相手方が暴力団関係者でないことを確認。契約時に、相手方が暴力団関係者と判明した場合、催告なく契約を解除できる旨の特約を定めるよう努めること》
これを素直に読めば広告代を通帳記入の際にはGoogle合同会社と記入されているはずで、すなわち現役ヤクザへGoogle合同会社が資金を提供していた―ーと言えなくもありません。
Googleは坂井容疑者がYouTubeチャンネルを開設するにあたってこのチェックをしなかったのでしょうか。また開設後もヤクザを公言あるいは匂おわす発言で警視庁は放置していたのでしょうか。
国内他業種に多大な影響を与えた暴排条例は、外資系世界的会社Googleには適用されないのでしょうか。問題はYouTube開設の際のゆる仕組みにあると思われます。
まず、Gメールのアドレスでアカウントを作成する際に、虚偽の情報でもアカウントを作成できるのですが、アカウント作成時に銀行などのような反社チェックは行われていない点が挙げられます。
また、アドセンス等のGoogle広告の売上の振込先は、銀行口座さえあれば可能。振込先に設定したい銀行口座を設定後、Google側が当該銀行口座にデポジットを入金し、そのデポジット額を設定画面で申告するだけなので、どの口座でも振込先に変更する事が出来るのです。
こういったGoogle側の緩い手順に対して、当サイトでは警視庁広報課第四係下園氏に質問状を送りました。警視庁から返事が来たので掲載します。
「YouTuberの坂井俊太容疑者に対して、YouTubeを運営するグーグル合同会社が毎月70万円もの広告費を支払っていたことが報じられています。これは暴力団に対する利益供与ではないのでしょうか。」
⇒個別の案件についての回答は控えさせていただきます。なお、一般論として事業者の暴力団員等に対する利益供与について東京都暴力団排除条例違反等に抵触することがあれば適切に取締り等を行なって参ります。
「YouTuberが反社会勢力に該当するかどうかの確認、及び反社会勢力への利益供与の防止についての確認を怠ったことで、暴対法違反としてグーグル合同会社に対して警視庁は捜査、取り締まりなどなさらないのでしょうか。」
⇒個別な案件についての回答は差し控えさせていただきます。
「暴排条例にそって実話誌が休刊したり、「ヤクザVシネマ」のメーカーが廃業したりしましたが、外資系企業、IT企業の暴力団への利益供与等に関しては警視庁はどのように取締りをなさっているのでしょうか。」
⇒法令等に抵触することがあれば各種法令と証拠に基づいて、適切に取締り等を行なっています。
「一般市民に対して、ヤクザと付き合ったら取締りしておきながら、YouTubeで現役ヤクザを自称していた坂井容疑者を警察も野放しにした理由を教えて下さい。」
⇒個別な案件についての回答は差し控えさせていただきます。
「サイバー警察は、売春、事件の温床のパパ活、ネット詐欺以外に、ヤクザに関しての取り締まりはしていないのでしょうか。2019年には日本のインターネット広告がマスコミ四媒体を上回ったことも報じられており、ネット広告市場が暴力団員に寄与していることについて警視庁の対策を教えて下さい。」
⇒一般的に企業では契約書や取引約款等で暴力団排除条例を導入し、暴力団との関係遮断を推進していると承知しており、一般企業に対しては警察として、暴力団排除のための必要な支援を行なっておりますが、法令等に抵触することがあれば各種法令と証拠に基づいて適切に取締り等を行なっています。
「子供が将来つきたい職業にYouTuberが挙がっていますが、暴力団員YouTuberに憧れた子供が弟子入りしたら、暴力団の新規人材獲得にもつながるような事案ではないでしょうか。無料で観れるインターネットメディアにおいて、現役の暴力団員広告番組の取り締まりに関して警視庁はどのようになさいますか。」
⇒法令等に抵触することがあれば各種法令と証拠に基づいて、適切に取締り等を行なっています。
※
なお、Google合同会社には取材依頼書を送ったものの回答は現在(3月8日)までありません。警視庁組織犯罪対策部の刑事は「実は坂井容疑者のYouTubeにはタレコミが来てはいた。ただし今は覚醒剤製造について追及するので、暴排条例に関しては何とも言えない」と語っています。
今回の件、暴排条例でヤクザを締め付けた結果、このような事態を招いたとも取れるのです。日本国内におけるアウトローのピラミットの頂点はヤクザです。このピラミッドを崩すそうとすると裏社会から表社会にまでひずみが出る。今回はその一例に過ぎないのではないでしょうか。(文@編集部)
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