なぜ男は見ず知らずの女性に抱きつき服の中に手を入れ耳を舐めたのか 法廷で語られた予想外の理由
TABLO / 2019年2月11日 10時30分
牛島英輝(仮名、裁判当時28歳)は入廷してから退廷するまで、自分が話すときも裁判官や検察官の話を聞いている時も、極端に下を向いてうつむいたままでした。
彼は強制わいせつ罪で起訴されていました。午後1時頃、コンビニから出てきた面識のない女性の後をつけ、マンションのエントランス内で後ろから抱きついてブラジャー内に手を差し入れて胸を揉み左耳を舐め回した、という事件です。
被害者が大声で叫ぶと彼はすぐ走って逃げました。犯行時間は10秒ほどでした。
彼は少年時にも前歴がありました。また、成人後に同じ強制わいせつの前科があり懲役2年6ヶ月、執行猶予5年の判決が下されていました。
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「被害者の方に申し訳ないです。犯罪者を産んでしまって社会に申し訳ないです」
情状証人として出廷した彼の母親はそう言って深々と頭を下げていました。
母親は、職を転々とし犯行時は無職だったという彼をずっと養ってきました。前回の裁判の時にも証人として出廷しています。
「前回出廷したときはあまりにもキツくて...今回ははじめは出廷を拒みました。でも、息子に『1人で生きてるわけじゃない』と伝えたくて出てきました。1人じゃない、1人で生まれてきたんじゃない、あなたを待ってる人がいるんです。今後も親として努力していきます」
途中からは裁判官でなく息子に向かって語りかけるように話していました。母親のメッセージはまだ続きます。
「難しいと思うけど、ちゃんと自分のしたことに向き合ってほしいです。大それた人間じゃなくていいから、誰かの役に立つ生き方をしてほしいです。社会に貢献なんて大きなことは言わない、でも周りの人を大切にできる人になってほしい」
被害者への示談金は母親が用意しました。その金額は20万円、この種の事件の示談金としては少ない額ですが
「出来る範囲だとこれしか都合できなかった」
ということです。
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母親の法廷での発言を聞く限り、とても大切に育てられてきたように思えます。それなのに何故彼は罪を重ねるのでしょうか?
彼は正面にいる裁判官に目を合わせることもなく、うつむいて下を向きながら犯行動機を語りました。
「ずっと、ひどいアトピーで悩んでました。ひどい時は顔中常に血が滲んでいるような時もありますし、夜も眠れないような痒みになることもあります。それで精神的におかしくなって...ずっと自殺願望を抱いてました」
彼はずっと自分のアトピーに苦しみ、コンプレックスを抱いていました。そのコンプレックスはやがて憎悪に変わります。
「いつも人の目が気になって...。特に女性の目が気になりました。『気持ち悪いと思われている』、いつもそう感じていました。女性に対して被害妄想というか...女性に対して憎しみがありました」
彼のアトピーとそれに起因するコンプレックスは、彼に正常な人間関係を築くことを出来なくさせました。
「女性の後ろを歩いていると『襲ってやろうか』といつも思いながら生きてきました」
こう話していた彼は、もう憎しみが抑えられないところまで膨らんでしまっていたのだと思います。
「被害女性には関係ないことです。自分勝手な八つ当たりです」
彼自身もそれはわかっています。犯行後、後悔した彼は犯行を自白して逮捕されました。どのような理由があろうと、彼のしたことは許されるはずもありません。被害者の受けた心の傷も小さくありません。厳罰に処されるべきです。
しかし、ずっとうつむいて生きて来ざるを得なかった彼の苦しみにも目を向けたいと思います。彼は女性だけでなく、自分自身のことも憎くて仕方なかったのではないかと思います。いつか彼が自分自身のことを受け入れ、顔を上げて歩ける日はやってくるのでしょうか。
「周りの人を大切に出来る人間になってほしい」
その母親の願いが実現するためには、まずは彼が彼自身のことを大切に出来る人間にならなければ叶うことはありません。(取材・文◎鈴木孔明)
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