これは鬼か!? それとも仏か!? 住宅街のお寺に静かに祀られている衝撃の仏像|Mr.tsubaking
TABLO / 2019年3月1日 9時43分
新宿まで20分という便利さから、ファミリー層に人気で一戸建てが立ち並ぶ、京王線つつじヶ丘駅の周辺。静かな住宅街に武者小路実篤の旧邸などの見所もあるこの街に、一軒のお寺があります。
今回は、このお寺に祀られる衝撃の仏像をご紹介いたしましょう。まず、このお寺で最も有名なのは意外にも歌。
「思い出のアルバム」という曲をご存知でしょうか。「いつのことだか 思い出してごらん」の歌い出しを聞けば、多くの方がノスタルジーとともに思い出すのではないでしょうか。この曲の作曲者である本多鉄麿が常楽寺が設立した幼稚園の初代園長だったのです。境内には歌碑もたっています。
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観光地のお寺ではないので、仏像の祀られているお堂は、フラっと立ち寄っていつも拝観できる訳ではありません。事前に拝観させていただく旨を電話でお願いし伺います。インターホンを押すと、ご住職の奥様が出てこられました。
電話した者であることを伝え、本堂に案内していただきます。
こちらの本尊は、阿弥陀如来座像。勢至菩薩と観音菩薩を従えた三尊形式の美しい姿です。奈良時代に日本中を飛び回り活躍した高僧である行基が、一本の木から六体の阿弥陀如来を彫ったものが都内各地に安置されており「江戸六阿弥陀」として進行を集めています。この美しい阿弥陀如来像は、六阿弥陀のうちのひとつなのです。
両脇侍が片膝をあげて前傾姿勢なのは、私たちが死の間際になると、浄土へすくいとるために阿弥陀如来が迎えにきてくれる「来迎(らいごう)」といわれる性質を表現しているものと考えられます。
ご本尊にお参りを済ませて、同じお堂の厨子に安置されている「お目当の仏像」を開帳していただきました。一目見るなり、声が漏れてしまうような衝撃的な姿がお目見え。
ご覧の通り、左半身が仏の姿で右半身が鬼の姿をしている見たこともないお姿。像高50センチほどのさほど大きくないサイズで、半分は仏の姿であるのに、不思議と恐ろしいような感覚に襲われます。かつて専門家が何人かで文化財調査に来た時にも、江戸時代に作られたことまではわかったけれど、こうした仏像は他に例がなく、制作された意図もわからなかったといいます。
左半身側から手の形を見ると、流れるような衣紋の袖口から出る手が、人差し指と親指を輪にした印を結んでいることから、仏の姿は御本尊と同じ阿弥陀如来であることがわかります。
右半身側から見ると、鬼の存在感が増します。不動明王や仁王など「忿怒相」といわれる、怒りの表情をした仏像もありますが、この姿はそれらともまた違って、はっきりと「鬼」。わずかに残った色彩から、お馴染みのトラ柄のパンツを履いていることもわかります。
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余談ですが、鬼がトラ柄のパンツを履いている理由をご存知ですか? これにはまず「鬼門」について考える必要があります。鬼門は方角でいうと北東に当たりますが、方位に十二支を配すると鬼門は「丑寅」の方角になります。こうしたことから鬼は、丑(牛)のツノを生やして、寅(トラ)柄のパンツを履いた姿で表されるのです。
閑話休題。この仏像を何に例えればいいだろうと考えると、キカイダーやマジンガーZのあしゅら男爵、もしくは清水アキラの半分が谷村新司でもう半分が研ナオコのモノマネといった具合に、見事に昭和なものしか思い浮かばないことに愕然としてしまいました。
さて、驚くべきはこの仏像の製作方法。プラモデルのようにいくつかのパーツを組み合わせて作る寄木造(よぜきづくり)ではなく、一本の木から彫り出したた一木造(いちぼくづくり)なのです。両極の姿を一本の木から同時に表現する技術の高さはものすごいものがあります。
ご住職にお話を伺うと、ご住職なりの推測を語ってくださいました。お話によると、仏像にも、阿弥陀如来や観音菩薩のように穏やかな姿をしたものがある一方、その穏やかさでは救えない人々を怒りの姿で救おうとする不動明王などもあります。この仏像は、その両面を同時に表現したのではないかとのことでした。
付け加えてご住職はこうおっしゃいました。
「もしかしたら、二体作るお金がないから一体にまとめちゃったのかもね(笑)」
素敵な仏像と、素敵なお寺でした。合掌。(Mr.tsubaking連載 『どうした!?ウォーカー』 第28回)
■常楽院
東京都調布市西つつじヶ丘4丁目9−1
042-484-0900
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