違法ドラッグ売買専用のホテルまで存在...様変わりする現代「みかじめ」事情
TABLO / 2013年10月8日 17時0分
裏社会で古くからあるシノギに「みかじめ」がある。これは本来、飲み屋などから守り料として暴力団が徴収してきたものだ。おしぼりの卸や植木、絵画のリース、正月のお飾りなどの取引に見せかけ巧妙に偽装されてきた。
だが、西成の「みかじめ」はちょっと違う。とくに裏仕事師に対しての扱いは特殊だ。たとえば、覚せい剤(シャブ)の売人に対しては面倒臭いことはせず、ただ単純に「このドヤで他の人間が覚醒剤の売買をしない様に見張ってやるから金を出せ」なのである。西成の住民が語る。
「有名だったのが西成の『Tプラザ』と言うホテルだな。そのホテルの各部屋には違ったルーツを持つ売人が部屋を借りていて、客が個別にその部屋を訪ねて覚醒剤を買うというスタイルを通していた。それは『ミカジメ』を徴収するヤクザが取り仕切っていた」
問題は警察が容疑事実を固めたときだ。家宅捜査の令状を取って踏み込もうとしても、フロントの管理人がその部屋に連絡をして、その部屋から他の部屋に覚醒剤を移してしまうため、容疑事実である覚醒剤が発見されず空振りに終わってしまうのだ。ホテル全体の家宅捜査令状を取らないと意味がないので、「Tプラザ」を根城にしたシャブの売人は悠々自適にビジネスを続けることができた。しかし、現在はこのホテルが覚醒剤の温床となっていることが有名になってしまい、健全な運営を様変わりしている。
一時期この界隈の喫茶店、コンビニ、ビデオボックスのトイレに「トイレに注射器を流さないで下さい」との貼り紙が多く見られた。改めてその張り紙を探したが、今はどこにも貼っていなかった。それどころか、コンビニはトイレの貸し出しを拒否するくらいだった。ある地元のコンビニ店主はこう証言する。
「一時はトイレに注射針を流されたりして故障の原因にもなっていたけど、今は完全に貸し出し禁止にしている。貼り紙を貼っていると、この店には覚醒剤を使用しているお客さんが多いですよ、と自ら言っているようなもの。店の信用に関わってくるから、周辺の経営者と話し合って、トイレの貸し出し自体を禁止したんです」
だが現在、西成で覚せい剤の売買が減ってるという話は聞かない。シャブ売買専用ホテルが消滅した現在、彼らは路上で堂々と売買することを選んだ。裏社会のビジネスも様変わりしている。
Written by 西郷正興
Photo by PanDx1
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