HKT48の「唯一輝く碧い宝石」本村碧唯さん卒業前インタビュー フォトブック『未来の手前』に込められた意味
TABLO / 2023年6月20日 6時0分
HKT48最後の一期生、本村碧唯さん。
このインタビュー後、「アイドルとは何なのだろう」。本当に深く考えさせられました。
1人の、大人の雰囲気を醸し出してる女性がインタビュー席に現れました。「妹キャラ」「泣き虫キャラ」。デビュー当時はファンやメンバーから、そんなニックネームで愛されてきたアイドルです。
けれど、目の前の彼女はHKT48という記号をまとった「正統派女性アイドル」に見えました。本村碧唯さん。HKT48「最後の1期生」。
2011年から福岡を中心に活動しているHKT48は6期生を迎えています。本村さんはHKT発足当初からメンバーだった現在、唯一の1期生になります。総選挙最高36位。チームKⅣ前キャプテン。14歳からメンバーになって青春の全てをHKT48に捧げた、本村碧唯さん。芸能界、そしてHKT48メンバーとしての活動に静かに幕を閉じます。
7月17日卒業コンサート(福岡サンパレスホテル&ホール)。
7月23日卒業公演(HKT劇場)。
そして、7月7日に念願のフォトブック『未来の手前』(双葉社刊)が発売。タイトルはHKT48(48グループの)の生みの親・秋元康が付けました。そこには、ある意味が込められていました―ー。
●「卒業してからの夢が見つかりました」
――僕の友人が本当に本当に、純粋に本村さん推しなんです。
本村碧唯さん(以下・本村さん) そうなんですか!!(満面の笑顔)
――それで彼から本村さんの事を聞いて、2016年ぐらいから存じ上げていまして。
本村さん だいぶ前ですね。
――その頃にYouTubeなどを見ていると、本村さんが泣いてるようなシーンがよくアップされてました。「あおいたん」の時代ですね。
本村さん (照れたように)フフフフ。
――ところが、先日の生誕祭(5月31日)ではビックリするほどしっかりなさっていたMCを拝見しました。
本村さん 嬉しい! ありがとうございます(満面の笑顔)
――まずは12年間お疲れさまでした。
本村さん ありがとうございます。
――卒業をされたタイミングをお聞かせ願いますか?
本村さん HKT48の10周年までは、この場所にいたいという気持ちはありました。他の1期生もみんな同じ気持ちだったと思います。10周年過ぎた頃から、同期が徐々に卒業していったんですね。そのときに、私も自分の未来を考えることも多くなり、徐々に徐々に……ですね。きっかけというきっかけはなかったんですけど、自分のやりたいことも見つけていきました。実は私、未来の道がしっかり見えないと次に進めないタイプなんです(笑)。
――堅実なんですね。
本村さん だからどうやっていったらいいかを調べたり勉強しました。それで「大丈夫だ」って思ったので「一歩踏み出そう」という感じですね。
――なるほど。ところで本村さんのダンスは定評がありますよね。振付も担当されています。僕は=LOVE(指原莉乃プロデュースのアイドルユニット)の『スタート!』も拝見しました。あの振り付けはプロの仕事だなと思いました。
本村さん えーっ。うれしい!(満面の笑顔)
――そういう感じでの、お仕事面でやりたいことが見つかったっていうことですか?
本村さん 私は12年アイドルを続けてこれたので、自分が表に出るのはそろそろいいかなと思いました。アイドルになりたい子たちのオーディションを見ていて感じたのは、ダンスの種類によって「上手すぎ」とか「アイドルのダンスじゃない」という理由で悔しい思いをする子がいなくもなかったんです。だから、アイドルを目指している子のサポートが出来たらとは思っています。すぐにはきっと無理ですけど、いつか「ダンス教室」を持てたらなと思っています。
――なるほど! それは素晴らしいです。アイドルのセカンドキャリアについて、一部業界では考えられているじゃないですか。
本村さん はい。
―ー例えば元AKB48の島田晴香さんなんかそういう取り組みをしています。そういった事も意識されているように今の言葉を聞いて感じました。
本村さん そうですね。いつか本当に「ダンス教室」を持てればいいなと思っているんです。
―ーHKTでの12年間ってほぼ青春時代を捧げているわけじゃないですか。
本村さん そうですね。
――その青春を捧げたHKT48って本村さんにとって何だったのかを是非、お聞きしたいです。
本村さん ホントに青春ですし、私を作り上げてくれたものがHKT48なので。入ったとき子供だったっていうのもありましたし。色々学んで成長をして大人になった場所がHKT48なんですね。だから……「私そのもの」なんじゃないかなって思います。
●フォトブックのタイトルに込められた意味
――『未来の手前』というフォトブックのタイトルは秋元康さんがつけてくださったということですよね。
本村さん そうです。
――意味は聞かれましたか?
本村さん 私がこのフォトブックを撮影したいと思ったのも卒業を決めてからなんですね。最後に卒業アルバムのようなものを、ファンの方にプレゼントできたらなと思って作らせていただいたので、その卒業の前の私のすべてをお見せできたらなっていう気持ちもあります。秋元先生は、こうやって書いてくださったんですよ(と、色校のプリントアウトを見せてくれる)。
――ちょっと読ませて頂いて宜しいですか?
本村 是非読んでください! この言葉がすごく嬉しくて。
――(読み終わりつつ)ああ、なるほど! いいですねえ。
本村さん 発表してから卒業まで半年以上設けさせてもらいました。それも込みでこうやって卒業前を楽しんで、噛みしめているっていうように、秋元先生には見えているんだろうなっていうのが私はとても嬉しくて。でもホントにそうなので。それを分かってくださって、このタイトルを付けてくださったんじゃないかなって。
――本村さんが推す、見どころはありますか?
本村さん どこだろうなあ。いっぱい(と写真を探す)。
――旅行がテーマなんですよね。
本村さん そうですね。卒業旅行みたいな感じでいろいろやらせてもらいました……。えっと、湖に浮いたのが一番印象的ですね。
――白鳥と戯れているカットですか?
本村さん いえいえ。あれ? ないな。あ!これです(笑)。水の上に立ったんです。この時、ホントに寒すぎて(苦笑)。
――おお、幻想的ですよねえ。
本村さん 初めて水の上に立ちました。すごい寒い顔してるんですけど。
――(スマホ上で顔をアップにして)ホントだ、寒そうな顔してますね(笑)。
本村さん あ、バレちゃう(笑)。
―ーでも湖も青いし服装も青で、本村さんらしいですね。
本村さん うれしいです!(満面の笑顔)
――僕がジーンときたページを言って良いですか? 最後ですね。指原さんやメンバーからのコメント。それとお父様とお母さまの言葉が……。しかも本村さんの幼い頃からの写真がもう。
本村さん 私、まだ見ていないんですよ(笑)。
――う。そうなんですか!
本村さん はい。メンバーからのコメントとお父さんとお母さんからのお手紙は、本になってから読もうかなと思って。だから資料(校正)をもらってもそこだけは飛ばしています(笑)。
――では内容は言いません。
本村さん お願いします(笑)。卒業アルバムって一番後ろにお友達からのコメントをもらえるじゃないですか。そういう感じで最後に皆からコメントをもらっているので。すごく嬉しいですね。
――(読んだら)泣いちゃうんじゃないですか?
本村さん はい、絶対泣いちゃうと思うー。
――僕でさえジーンときました。旅行というシチュエーションですけど、普段は旅行されます?
本村さん もう、ずっとしてないですね。家族旅行も私がHKT48に入ってからは私抜きになってしまって、写真だけ送られてきて、うらやましいなと思いながら(笑)。卒業したら家族で旅行したいですね。
●総選挙とチームKⅣキャプテンで得たもの
――アイドル人生のなかでも総選挙ってけっこう大きかったと思うんですよ。
本村さん そうですね。
――人間的に成長できるようなものでした?
本村さん 当時はホントに苦手で。
――ですよね(笑)。
本村さん しかも5月31日の私の誕生日が終わった頃なんですよ。毎年6月に選挙をやっていたので。ちょうど選挙期間中が誕生日。だから生誕祭もあの頃は苦手だったんですよ、何か言わなきゃいけないから。総選挙が終わってからの生誕祭だと、「ありがとう」ってファンの方に言えるんですけど、まだ始まってもいないので、何をどう言ったらいいのかすごい苦しい気持ちのままの生誕祭でした。
でも思い返してみると、あんなに色んなことを考えて自分を必死にアピールして、ファンの方との距離が縮まって、皆で協力して。どのメンバーとも支え合えず、一番支え合えるのがファンのみなさんだったんですね。だから総選挙があったからこそ、ファンの方との絆が深まったというか。だからあって良かったんじゃないかなと思います。ホントに苦しかったですけどね(苦笑)。
――キツいと思います。
本村さん でも、今は選挙を経験したことがないメンバーがたくさんいるので、1回ぐらいは経験してみてほしいなって思います。経験した方が自分のためだし、メンバーやファンの皆さんへの考え方が変わってきたりするので、そういうところを経験してみてほしいなとも思います。
――2016年の総選挙は新潟の会場で取材させて頂きました。36位でしたよね。
本村さん そうです。36位が一番高い順位でした。
――その次が沖縄で、台風だったんで行けなかったんですけど。司会の徳光さんが尺を埋めなきゃいけなくて、本村さんのコメントがめちゃ長かったんですよね(苦笑)。
本村さん そうなんです、本当に長くて(笑)。「私どんぐらいしゃべるんだろう」って。
――残念ながら、ランクダウンされてしまったにもかかわらず、徳光さんがしつこく聞いていましたからね。あのときは本村さん推しが「徳光許さない!」って言ってました(苦笑)。
本村さん そうだったんですね(笑)。ランクアップしたメンバーに聞けばいいのに、なんで私ばっかりと思って(笑)。
――そりゃ思いますよね。僕、息子さん(徳光正行さん)と知り合いなんで言っておきますね。
本村さん ハハハハハハ!
――それと、もう一つの転機がありました。妹キャラと言われていたところからいきなり、キャプテン(チームKⅣ)になりましたけど、心構えの変化は必要でした? たくさんの女の子をまとめるって想像もつきません。
本村さん そうですよね(笑)。コンサートでのサプライズ発表だったので、そこからの準備でした。前任の多田愛佳ちゃん(初代キャプテン)が卒業する最後の公演まで短かったので、やりながらどんどん自分を変えていくっていう感じでしたね。最初はホントに泣いてばっかりだったんです。
――泣いていた? そうだったんですか?
本村さん 裏では泣いてばかりで。でも、私のチームは同期が多かったので、支えてもらっていました。キャプテンってしっかりしなきゃというイメージがありましたし、頑張らないと、という気持ちが大きかったんですけど、周りのメンバーに支えてもらいながらやっていると、途中からはみんなで作り上げていくものだって感じたんですね。
「私が一人で頑張らなくていいんだ」「私ができないことは支えてくれる」と、みんなすごく頼りになる事にちょっとずつ気づいて、そこからはあんまり気負うこともな泣くこともなく、楽しくキャプテンを出来ました。
●「私にとってファンは、私以上に私を分かってくれる方たちです」
――キャプテン歴は、長かったですよね。
本村さん はい、5年ぐらいですね。
――それから、すごくしっかりされてトークもバッチリでしたもんね。
本村さん 嬉しい。ありがとうございます。
――別人かのように。
本村さん そんなにですか?(笑)
――14、15歳の頃の本村さんを思い出すと、こんなにも成長するものかと思いました。
本村さん はい、何とか成長できました(笑)。私のファンの方はすごい甘々で。何でも誉めてくれるんですよ(笑)。だから誉めて延ばしてくれました。
――ファンの話が出たのでお伺いします。本村さんにとってファンってどんな存在ですか?
本村さん 「(私を)一番わかってくれる方たち」かもしれないですね。「私より私のことを知っていて、なんでそんなことわかるの?」っていうぐらい私のことを知ってくれていて。ホントにすごいなと思いますし。支えてくださいました。
――アイドルってファンあってのものですからね。
本村さん そうですね。
――そんな優しいファンを呼び寄せたのは本村さんの人柄じゃないですか?
本村さん だったらいいんですけど(笑)。嬉しいです。
●後輩に向けてのメッセージ
――卒業コンサートや公演で恐らく言うとは思いますが、今の時点で後輩にHKT48をこうしてほしいっていうのは何かありますか?
本村さん 私たちが入ったとき、秋元先生に「仲のいいグループでいなさい」って言われて、その言葉をみんな心に刻んで全てを楽しんでHKT48をやってきたので、何でも全力で楽しんで頑張っていくところは変わらないでほしいです。
でも卒業メンバーもいて、歌うメンバーによっても曲の聴こえ方や、見え方も違うと思うので、コンサートの作り方や曲の表現の仕方は私たちにとらわれ過ぎず、自分たちなりに「これがいまのHKT48です」って魅せていっていいと思います。
変わっていくのはちょっと勇気がいりますけど、それを楽しんで見てくださる方もいますし、自分たちでも刺激がないと成長していけないと思います。だから、自分たちなりに楽しいことを新しく見つけつつ成長していってほしいなと思います。
――将来は本村さんのダンス教室で学んだ方がメンバーになったら良いですよね。
本村さん そうなったら嬉しいですね!(満面の笑顔)
※
カメラマンの菊池茂夫さんが、本村さんに撮影中、リクエストを出します。「笑顔でお願いします」。菊地さんは国内外の有名ミュージシャンや俳優をや主に撮影しているベテランです。そのベテランカメラマン菊池さんが撮り終えた一言が忘れられません。
「(リクエストするまでもなく)全カット笑顔でしたね(笑)」。
本村さんの人柄を象徴する言葉だなと感じました。
唯一輝く碧い宝石・本村碧唯さんは僕らの前でも輝いていました。誰にでも。どこでも。いつまでも。
【本村碧唯の前には、未来が広がっている。卒業を決めた彼女なら、今すぐにでも駆け出してもいいのに、その手前で、ゆっくり、一歩一歩、踏みしめるように歩いているのが、本村碧唯らしい。秋元康】(『未来の手前』より)
(文@久田将義 撮影@菊池茂夫 写真提供@双葉社)
●次ページ『未来の手前』(双葉社刊7月7日発売)から写真(一部抜粋)
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