しまむら店員への土下座強要事件を考察...シリーズ「ネットウヨク論」番外編

　Twitterで話題になっていた 「しまむら土下座事件」 の実行者が、店に対する強要の容疑で逮捕された。

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　衣料品店で商品にクレームをつけ、店員に土下座をさせたとして、札幌東署は７日、札幌市白石区菊水元町１０の１、介護職員、青木万利子容疑者（４３）を強要容疑で逮捕した。

　容疑は、９月３日午後６時ごろ、札幌市東区本町の「ファッションセンターしまむら苗穂店」で、前日に購入したタオルケットに穴が開いていたとして、店員の女性２人に土下座をさせ、携帯電話で撮影したほか、自宅に謝罪に訪れることを約束する文書を書かせていたとしている。（後略）

（毎日jpよりhttp://mainichi.jp/select/news/20131007k0000e040152000c.html）

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　毎日さんはなんで住所の詳細まで載せちゃってるんだろう？（素朴な疑問）

　さて、この問題は拡散され始めた当初からあまりのキャラクターの濃さに「これは悪質だ！叩け！」と反応する人間以外に、「友達がしまむら店員でネタツイートしたんじゃないか？（＝店員の悪ふざけ炎上と同じ）」や「本当に病気のひとなんじゃないの？触らない方がいいんじゃないの？」という意見まであったほどだ。 

　ところが、異常なまでの攻撃性で他人を誹謗中傷したり、自己の正当性を主張するといったツイートが次々と見付かった事により、段々と 「あ～ガチなんだぁ～」 という意見に偏っていき、最終的には日本の秘密警察こと鬼女の皆様（2ちゃん既婚女性板の住人） が出動するに至る。

　こうした流れの中で、今回逮捕された青木容疑者の本名（旧姓も）・使用していた各ハンドルネーム・年齢・住所（部屋番号まで）・職業（親族の職業含む）・容姿（子供含む）・自動車のナンバー・家族構成・出身校・不法行為や違反行為の疑惑......と、何もかもがさらされる結果となり、流行りのTwitter炎上問題の好例としてマスコミにも（どちらかというと炎上被害者として）取り上げられもした。

　この青木容疑者は、Twitter以外にも様々なハンドルネームであちこちに書き込みをしており、一方ではネトウヨのテンプレ的な言動で韓国を批判し、もう一方では朝鮮系のサークルに参加したり、朝鮮学校の集いに生徒保護者として参加していた証拠が出て来るなど、掘れば掘るほどネットユーザーが食い付きそうなネタが続出してしまい、まったく鎮火するタイミングのないケースとなってしまったのである。

　そして遂に警察が動き、強要の疑いで逮捕と。

　前置きが長くなったが、この 「しまむら土下座事件」 を、当シリーズの内容に当てはめてみると、どのような考え方ができるだろうか？

　まず第一に、異常者に石を投げ付けて騒ぎ立て、それによって耳目を集めて商売をするというのは、TVに代表される大手マスコミのシノギの手法である。鬼女板のスネーク行為（探偵ごっこ）は批判される事も多いが、少なくともそれをマスコミが批判する資格はない。他人のプライバシーを暴く権利はネットユーザーにはないが、同様に本来はマスコミ業界人にもないのである。その気になれば人権と国民の知る権利（＝報道の自由）のどちらが上かの戦いになってしまうのだが、個人で報道機関を相手に戦うのは無謀すぎるため、やられた側は泣き寝入りをするしかないというのが実情だ。

※補足

　取材側があくまで合法な手段のみで調査するなら話は別だが、大手メディアの記者であっても細かいうっかりミスをしてるケースが多いので、ケンカする気ならば前もって法律の勉強をしておくといいです。

　極論を言ってしまえば、日本人は 【金・セックス・ドラッグ・キ○ガイ】 の話題が大好きなのである。だからこそマスコミは金欲しさに人気のある話題を入手しようとどんな事でもしてしまう。単に需要と供給の問題でしかないのだが、それってようはネットユーザーの 「動機」 と同じだよね？ みんな暇つぶしと正義漢ぶって他人に石を投げる機会が欲しくて炎上させるんだよね？ ならば、マスコミにネットユーザーを批判する資格がないように、一部のネットユーザーにもマスゴミだの何だのと批判する資格はないんだよ。そいつらもまったく同じ事をやっているのだから。

　もしそうじゃないならば、みんなで所轄の警察に通報するくらいでいいんじゃないのか？ それをなぜ探偵気取りで他人のプライバシーを暴き立ててはしゃいでいられるんだ？

　こうした素人とプロの暴走によって引き起こされた問題の一例として、2007年に香川県で起きた50代女性と2人の幼女が殺害された事件を思い出してみよう。最終的に親族が犯人と発覚して死刑判決（2012年に確定）を受けた事件なのだが、この時はTV報道を見たネットユーザーの大多数が 「父親が犯人だ」 と決め付け、今回のようにプライバシーを暴き立てる人間が続出した。

　またその一方で、この時は大手マスコミも父親が犯人と決め付けるかのような報道姿勢でおり、みのもんた氏などは 「なんですぐに通報しないのか、父親の挙動がおかしい、疑わしい」 といった趣旨の発言をしてしまっている。

　こうしたメディアの大暴走が捜査妨害・人権侵害の域まで達してしまい、香川県警が記者クラブの総会で各メディアに対して苦言を呈し、報道機関の支社局長らでつくる高松報道責任者会も報道関係者に「節度ある取材を心がけろ」と呼びかける事態となった。

　今回はたまたま 「皆で異常者だと石を投げていた人間が逮捕される」 という結果が出たものの（あくまで逮捕されただけという点をお忘れなく）、だからといって寄ってたかってイナゴが畑を荒らしまわるような行為に正当性があるだろうか？

　香川の事件では、マスコミにもネットにも犯人と決め付けられて袋叩きにされた 「単に母と娘2人を亡くした父親」 という絶対的な被害者がいたのだが、彼に対して正式に謝罪したマスコミやネットユーザーはいただろうか？

　話題になっている出来事を追求する姿勢まではヨシとしても、都合のいい情報だけ切り貼りして他人を攻撃する根拠にするな。その点では、最低限の訓練を受けているマスコミ記者の方が、暴走し放題のネットユーザーよりは安全である。どちらも批判されて当然の立場ではあるが、何かヤラかした場合の苦情窓口がハッキリしているという意味でも両者は大きく違う。プロと素人では背負っているリスクが違うという言い方もできるだろう。

　「しまむら土下座事件」の青木容疑者の母校の校訓は 「恥を知れ」 だそうだが、今はその言葉を青木容疑者個人に向けている人間ばかりが目に付く。しかしその言葉は青木容疑者だけではなく、面白がって火を付けて遊んでいるあなた方すべてに向いていると思うべきだろう。

Written by 荒井禎雄

Photo by 映画「謝罪の王様」オリジナル・サウンドトラック/バップ

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