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テロ、虐殺、旅客機墜落...「2020年東京五輪に迫る危機」を検証【藤木TDC】

TABLO / 2013年10月21日 17時0分

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 7年後に東京オリンピックがやってくる。景気回復、東京再開発、スポーツの振興、観光市場の拡大、そして若者たちに与える希望の大きさなど、そのメリットは計り知れない。

 しかしながらオリンピック開催にはデメリットもつきまとう。よく報道されているのは五輪開催後の経済的失速で、04年開催のアテネは財政破綻寸前で国内の混乱は収まらず、08年の北京大会開催後、中国の経済成長率が失速しているのは読者の皆さんよくご存知のとおりである。16年開催都市のリオデジャネイロは開催前から反政府デモで大混乱しているが、デモなどまだ可愛いものだ。第2次世界大戦後、17回の夏季オリンピックが行われ、多くの開催国・開催都市で、開会前および開会中に様々な大惨事、大事故が起きている。

 これから記述するのはその事実の記録だ。

 そして2020年の東京五輪開催まで、日本国内で同じような重大な災禍が起きないとは限らない。歴史を教訓とする見識があるならば、我々は以下の出来事に対応する準備をしておかなければならない。繰り返し言うがこれから記述するのはすべて実際に起きた出来事なのである。

1)オリンピック反対デモに対する発砲・虐殺(1968年メキシコシティ大会)

 開会式のわずか10日前、五輪競技場前で反政府・反五輪を掲げる一般市民のデモ隊約1万人に対し、軍が小銃を発砲、250人が射殺、1200人が負傷という大惨事が起きている。時は1968年メキシコシティ。デモに参加した庶民は「経済的基盤が充分でないのに五輪を開催するのは専制政府が仕組んだ陰謀」と叫び、五輪スタジアム前のトラテロルコ広場に集結した。事態終結を急ぐ政府は軍による排除を命令、非武装の市民に発砲して流血の大惨事へ発展した。「トラテロルコ虐殺事件」である。

 こうした重大な事件は開会式の障害になるかと思いきや、メキシコ政府は開催を強行、当時のIOC会長ブランデージも「開催の障害はない」とアッサリ容認した。60年代の出来事とはいえ、IOCの非情な感覚はおそるべきものだ。

 現在、夏季五輪を3年後に控えたリオデジャネイロでも同じように反政府デモが拡大しており、わが日本、東京でも福島第一原発における事故処理の進捗状況や、消費税増税後の経済状況次第で、五輪開催直前まで大規模なデモが連続しかねない。となれば、時の政権はどんな対応策をとるのか...。ちなみにどれほど残酷な虐殺事件が起ころうとも、オリンピックは粛々と進行されると我々は知っておかねばならない。IOCは国民の感情よりも、大会の収益と組織の面子を大事にするのだ。

2)真夏の五輪開催で出場選手に死者・病人続出(1960年ローマ大会)

 1964年の東京五輪は秋(10月10日開会式)に行われた。しかし2020年には東京では真夏の7月24日に開会し、8月9日まで開催されるスケジュールに決まっている。日本が今年のような酷暑襲われた場合、選手のコンディションに影響が甚大というのに、なぜ東京オリンピックは真夏に行われるのか?

 それは春秋は欧州サッカーやアメリカ大リーグ、アメフトNFLなどの終盤戦と競合するため、IOCがテレビ放映権を高く売ることができないからと言われている。陸上競技や水泳などをのぞき、五輪競技の多くはスポーツとしてそれほど人気が高くない。世界の人々は五輪とサッカー、アメフトなどが同じ時期に放映されるなら間違いなく後者を選択する。だからIOCはわざわざ他のプロスポーツと競合しない真夏に五輪を開催しようとしている。

 では、逆になぜ64年の東京五輪は秋に行われたか。それは前回の60年ローマ大会が8月25日から9月11日まで、現地が真夏の時期に行われ、連日40度を越す熱波に襲われてデンマークの自転車競技選手が競技中に死亡したり、水泳競技が行われたプールに細菌が繁殖し、伝染性胃腸炎になる選手が続出したからだ。野外競技では日射病で倒れる選手も多かった。真夏のオリンピックはこのように選手の身体へのダメージが大きく、気象条件によっては一流のプロ選手は出場をボイコットする可能性がある。

 同じ7~8月の開催でも昨年のロンドンは北海道よりも北に位置し涼しく、16年のリオデジャネイロは南半球なので真冬である。温暖化の影響か、近年は酷暑が続く日本。このまま気温上昇が続けば20年の五輪は猛烈な熱さの中で行わなければならない。選手の熱中症が多発するようでは国際的な避難を受けなければならない。とはいえ、人間に気象現象を変えることなどできない。さて、その時東京五輪はどうなるだろう。

3)旅客機、ヘリコプターなどの墜落(1988年ソウル大会、96年アトランタ大会ほか)

 五輪開催を翌年に控えた87年11月29日、大韓航空のイラク発ソウル行ボーイング707型機が爆発墜落、乗員と乗客の115名が死亡する大事故が起きた。北朝鮮工作員・金賢姫によって引き起こされたこのテロ事件は、すぐに北のオリンピック妨害工作だと判明していたが、開催が間近で選手のエントリーに影響が出かねない情勢だったため、事実関係は隠蔽されソウル五輪は何事もなかったように始められた。

 幸い、その後、事故は起きなかったから良かったものの、出場選手にすれば事実を耳にしてゾッとしたことだろう。北朝鮮によるなりふり構わぬ妨害工作を防ぐため、開会式直後の9月19日、アメリカ海軍の空母ミッドウェイやミサイルフリゲート艦カーツが佐世保港から出港、海上監視の任務についた。

 また開催中には日本赤軍による五輪妨害テロがあるとの噂が流れ、観客が会場での観戦を避け、ガラガラの観客席となった。

 このように対外的な対立問題を抱えた国家での五輪開催は、大きな犠牲や軍事的緊張をはらむ。7年後に安倍政権が存続しているかは分からないが、現在のように北朝鮮、中国、韓国などとの緊張が続くならば、同じような妨害テロ事件が起きてもおかしくはない。

 アメリカが守ってくれるだろうという考え方は甘い。アメリカで行われたふたつのオリンピックでも似たような事故が起きている。84年ロサンゼルス大会では閉会式直前にハイウエイパトロールのヘリコプターが会場に隣接する高速道路上に墜落、96年アトランタ大会開会2日前にはトランスワールド航空機がニューヨーク州ロングアイランド沖で爆発墜落する事故が起き、乗員18名、乗客212名が死亡している。これらのふたつの事故について現在もなおテロ説は否定されているが、五輪観戦にくる大勢の観客に強い不安を与えたことは間違いない。これだけ事故があるのだから、すべてをアメリカに委ねても安心なわけがないのである。

4)そしてもちろん開催前後・開催中のテロ(1972年ミュンヘン大会ほか)

 スピルバーグの映画「ミュンヘン」(05年)に描かれたことでも有名な72年ミュンヘン大会のブラック・セプテンバー事件。パレスチナゲリラが選手村に侵入し、イスラエル選手2名を殺害、コーチ9人を人質にとりイスラエルで拘束される同胞の釈放を要求した事件だ。この惨劇の結果、76年モントリオール大会では1万6千人の警察・兵士による空前の警備体制をしいた。これは神奈川県警察の全警官数をも超える数である。

 テロはミュンヘンに留まらない。ロサンゼルス大会では近代五種会場に爆弾を仕掛けたとの電話予告があったし、アトランタ大会では開催中に五輪公園の野外コンサート会場で爆破テロが起き、死者1名、負傷者111名を出した。アメリカでもこのようなていたらくなのに、はたして日本は五輪開催期間のテロ対策を充分にできるのだろうか。中東、アジア、アフリカ、ロシア...世界各地で紛争がなくならない現在、アメリカの同盟国日本で行われるオリンピックでも同じようなテロ事件が起きないとは限らない。そしてテロ防止のための強力なセキュリティを準備すると、空港などでの煩雑な手続きのために外国人観光客が入国しづらくなるジレンマが生まれる。

 日本には福島第一原発というセキュリティ上の大きなボトルネックがすでにある。また近年、続々と起きる自然災害で被災し苦しむ人々がいる。そうした問題を放置するような形で五輪開催が強行されることがあってはならないが、現状でも事故や被災者の救済・復興が後手後手な状況に、さらに上乗せで五輪リスクへの対応が必要になる。はたして東京都政は、日本政府はその重い負荷に対処できるのだろうか?

「日本は世界一安全、虐殺や大事故やテロなど起きるはずがない」...そんな安全神話がもはやどんな分野でも通用しないことは、我々自身、充分に知っている。オリンピックの安全に力を注ぐ余裕が、わが国や東京にあってくれれば良いのだが。

Written by 藤木TDC

Photo by ミュンヘン(DVD)

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