「関東連合 六本木アウトローの正体」を読んで...プチ鹿島の世相コラム『余計な下世話!』連載14
TABLO / 2013年10月22日 17時0分
「関東連合 六本木アウトローの正体」(久田将義)を読んだ。
関東連合とは何か? を様々な角度から検証しているのだが、興味深かったのが「サブカルチャーのシーンから捉え、解釈するという手法もある。」という切り口。
関東連合の勢力拡大に一役買ったチーマーを考える際、久田将義はある漫画の影響力をあげる。「BE-BOP-HIGHSCHOOL」だ。
それまでのファンタジーあふれる不良漫画から大転換をした同作品は日常や身近という徹底的なリアルを描いた。
『このようなサブカルチャーの洗礼を受けたバブル期の少年たちで結成された、チーマーという新しい不良少年のスタイルが1980年代半ばに出現する』
そして日本で初めてのチーマーは、久田将義の母校、明治大学付属中野高校の生徒が1985年に作った「ファンキース」という説が有力なのだ。久田によると明大中野とは、
『元々人口が多い年代もあって明大中野には遊び人も含めた不良少年の人数も多かった。また有名人の子息も多く通っていた。政治家や実業家、俳優、タレント、有名フィクサーやヤクザの息子もいた。』 『平均して小金持ちの家庭の子が集まっている学校』
そしてファッションからの考察が始まる。
『アメカジは、チーマーブームのきっかけとなった。つまり不良少年は、まずファッション・外見から入る。一言で言ってお洒落なのである。』
後にファンキースに入る同級生がファッション誌で読者モデルのような感じで掲載されていたエピソードを語り、
『総じて、これらの服、靴は高校生からすれば高価である。自然とある程度の資産を持つ家庭の子息が通う学校の生徒がチーマー化していく。』
チーマーの出現、武闘化が関東連合にどう影響を与えたのか。本書にくわしく書かれているのでぜひ読んでほしい。
私が今回ここで書きたいのは「久田将義とは何か」である。以前から薄々感じていたことが本書で確認できた思いなのだ。
昨年末に久田将義と青木理が共著で出した「僕たちの時代」という本がある。
終章でジャーナリズムへの入り口、お互いが10代だったバブルの時代を語り合っているのだが見事に育ちが対照的だった。
「イ ナゴをつかまえて遊んでいた」「冬の長野は尋常じゃない寒さだから、鼻の中が凍る」と語る青木に対し、久田は「渋谷に行って女の子をナンパして、当時できたばかりの六本木の『マハラジャ』や西麻布の『328』とか『トゥールズバー』とかに連れて行ってデカい顔をするという遊び方でしたね」と述べて青木を絶句させている。
さらに青木が「冬はソリで学校に通っていた」と語ると「楽しそうですね」と久田は一言で片づける。「楽しそうって......。それが僕の生活環境だから。」とまた絶句する青木。
最後に久田は「今、アメカジが流行っていますよね。あれは僕たちが昔やっていたファッションですよ。音楽もブラックミュージックがずっと流行の底流にありますけど、僕らの時代がバブルの頃に夢中になった音楽ですよね。だから僕には、今のカルチャーは当時の延長線上に見える」と述べている。
その言葉を裏付けるように、久田将義の最新刊は「お洒落で喧嘩が強い不良少年」というチーマーを生み出した当時の東京の空気がくわしい。「日常や身近という徹底的なリアルを描いた」のだ。久田版「BE-BOP-HIGHSCHOOL」。
イナゴ捕りで遊んでいた青木理を絶句させた久田の遊び場所・西麻布の「328」や「トゥールズバー」の名前は本書でも登場している。
「関東連合 六本木アウトローの正体」とは、「久田将義 シティーボーイの正体」でもあるのだ。
ちなみに久田は本書で、関東連合だけでなく「関東連合系」まで丁寧に書いているのだが、この発展・分派していく様子は何かに似ていると思ったら「横浜家系ラーメン」だった。
もちろん、両者はまったくかかわりは無いのだが。
Written by プチ鹿島
Photo by 関東連合:六本木アウトローの正体/ちくま新書
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