危険すぎる特定秘密保護法、仕掛ける米国の思惑...岡留安則の『編集魂』
TABLO / 2013年10月30日 17時0分
7月の参議院選挙以降、長い夏休みを取っていた国会がようやく動きだした。しかし、安倍総理の所信表明演説も衆参両院での予算委員会での質問に関しても野党の追及に鋭さは見られず、与党ペースで進行している。安倍総理の答弁には真剣さが見られず、詭弁や質問をはぐらかすパターンが多い。福島第一原発の高濃度汚染水の海への流出に関しても、IOC総会で完全にコントロールされている状態と胸をはった安倍総理は発言を微妙に修正している。小泉純一郎元総理の原発ゼロ提言に対しても、ありきたりの答弁で新味はみられない。原発のゴミの最終処分場も決まらないままに、原発を再稼働すれば、今後数万年に及ぶ危険な状態に置かれることは火を見るよりも明らかだ。独断的政権運営には意欲満々だが、判断力や決断力には欠けている政治家ということだろう。
その安倍政権が今国会で意欲を見せているのが、特定秘密保護法の法案通過である。この法案が国民の知る権利を侵害し、報道機関の取材や報道が規制される可能性の高い悪法であることは明らかだ。特定情報を決めるのも、取材の正当性を判断するのも、結局は政府や行政、司法当局である。政府にとって都合の悪い情報は恣意的に特定情報に指定され、取材の正当性を判断するのが司法当局では、知る権利や報道の自由は大幅な制約を受ける可能性が強い。特に情報を漏らした公務員には最大で懲役10年の刑罰が与えられれば、情報提供者に対する委縮効果は絶大になるはずだ。むろん、報道機関にも自主規制やブレーキが働くようになるだろう。
この特定秘密保護法を裏から仕掛けているのが、米国である。日米軍事同盟の強化を狙う米国にすれば、軍事や防衛に関する機密情報が流出することは最大のリスクになる。そのために、米国は日本に国家安全保障会議[NSC]並みの情報統制を要求しているのだ。米国追従政策で、日本の民主主義が破壊されたら、国民こそが最大の犠牲者になる事は明白だ。直近の共同通信の世論調査でも、法案反対の声は5割を超えている。碌な議論もないままに戦時下の治安維持法なみの効果を持つ秘密保護法を通過させたら、日本は確実に悲劇の途を歩むことになると断言しておきたい。メディアの一部ではこの特別秘密保護法を廃案にすべきとのキャンペーンも始まっているが、ここは世論もメディアも市民運動も歴史的な踏ん張り時ではないのか。
『週刊朝日』の編集長が、セクハラで懲戒解雇された。橋下徹大阪市長の出自問題で休刊の危機に追い込まれた事件の立て直しで就任したばかりの編集長である。権力を追及すべき週刊誌の編集長としては脇が甘すぎる。みのもんたも報道番組のキャスターの降板が決まった。みのの場合には、次男が窃盗未遂事件で逮捕されたことが直接の原因だが、親の七光りで長男はTBS、次男は日本テレビに送り込んだ親の責任から免れることは出来ないだろう。みの自身も記者会見でジャーナリストにあこがれていたとも語っていたが、銀座を大豪遊し、不倫やセクハラでも話題になること自体、ジャーナリスト失格ではないか。共同通信の人事部長もセクハラ事件があった。ストレスがあっただろうことは推測できるが、権力と対峙する職業を選んだ言論関係者がこの調子では、タカ派路線一直線の安倍総理がホクソ笑むだけではないか。その安倍総理は国会会期中にもかかわらず、二度目のトルコ訪問。総理就任以降、外遊ばかりの安倍総理だ。外交や防衛の重要性はあるにせよ、隣国の韓国や中国には足を踏み入れようともしないのだから、外交能力すら疑わざるを得ない。何よりも、国会軽視の姿勢は国民に背を向けていると判断するしかない。
外国産のコメを日本産として販売したり、阪急阪神ホテルなどのレストランメニュを偽装したり、メガバンク・みずほ銀行が暴力団関係者に融資したり、東京電力が事故の情報を隠ぺいしたり、この国のモラルの低下は目にあまるものがある。陰惨な事件も多発している。そうした世相も政治家たちの生き様が国民生活に反映しているのではないか。そうした時代だからこそ、メディアの権力チェック機能が求められているのではないか。安倍総理がNHKの経営委員にもお友達を送り込んでいる事実に対してもメディア鈍感すぎはしないか。もともと、NHKが時の政権に対しては弱腰で迎合的なことは歴史的事実だが、安倍総理の露骨な公共放送への介入は、憲法改正、国防軍創設、集団的自衛権確立、特定秘密保護法などの国策推進のための危険な武器になることは明白ではないか。
Written by 岡留安則
Photo by 国家の命運 安倍政権 奇跡のドキュメント/幻冬舎
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