【ショートストーリー】恋してみたら? 第19話 「理想と妥協<恭平 ③>」

恋学 / 2014年4月10日 6時0分

問題は、年齢ですか?見た目ですか?

カップル/公園

 いきなり泣き出した彼女
お見合い相手の杉本美波さんをどうにか立ち上がらせ、恭平は、とりあえずホテルのロビーへ向かった。
杉本さんはなかなか動いてくれないから、やむを得ず肩を抱きかかえるような形になる。ホテルには戻りたくないが、外で泣き続けられてはかなわない。
フロントから離れた、人の少ないベンチシートをみつけ、なんとか二人腰を下ろした。

「お見合い、もう5度目なんです。でもロクに顔も見ず、話もせずに帰ろうとされたのは初めて。それに・・・気分が悪いなんてミエミエの嘘つかれてぇ・・・」
大人の女性が、なりふり構わず泣いているのを初めて見た。母や姉が韓流ドラマなど観て涙を流すのとは訳が違う。困り果てた恭平は、
「すみません、実は・・・」と、つい絵美ちゃんの事を説明した。
ひどい・・・話を聞き終えた杉本さんは呟いた。
「騙されたみたいなものじゃない!」
「いや、でもまあ約束とかしてたわけじゃないし」
この期に及んでも、恭平は絵美ちゃんを悪く言う気になれない。だが、
「その子の方こそルール違反よ。相談所に言ってやるべきよ」
落ちたマスカラで目の周りを黒くしたまま杉本さん、今度は怒りだした。
とそこへ、よりによって絵美ちゃんがお相手男性と連れだってやって来るではないか!
恭平の態度から敏感に察知したらしい杉本さんが、
「もしかして、あの子?」と、聞いてくる。
否定しようとすればするほど、分かりやすい反応をしてしまうのが恭平だ。
止める間もなく、杉本さんはツカツカと絵美ちゃんに近寄っていく。
“え?ちょ、ちょ、ちょっとぉ・・・”
 だが杉本さんは、絵美ちゃんの傍まで行くと、黙ってまたUターンして戻ってきた。
「赤井さん・・・お酒飲みに行きませんか?」

 アルコールはお付き合い程度。
プロフィールにはそうあったが、杉本さんはどう考えても「お付き合い」以上にワインをガブ飲みした。
「大して可愛くないじゃない。若いから?赤井さん若ければそれでいいの?」
いきなり絡み酒?
「若いとか関係なくて、彼女とは話が合ったと思っちゃって・・・」
「絵美ちゃんがよ、40才だったとして、それでも贈り物とかしましたぁ?」
「40才だったら最初から会いませんよ」
「じゃ、年齢関係あるんじゃないですか!」
あ、いや・・・どうもすぐ劣勢になる。
「あ〜あっ、もう私やんなっちゃった。カウンセラーが理想ばっかり求めるなっていうから、年齢も見た目も、どんどんランク落として、妥協してお見合いしたのに、赤井さんみたいな人にまであんな態度とられて・・・そんなに自分だめなのかなって」
「みたいな人って、そりゃないでしょう?!」
そこまで言われちゃ恭平も黙っていられない。
だが杉本さんの勢いは止まらなかった。
「だって赤井さん、最初から私なんか眼中になかったじゃないですか。38才の地味なおばさんって思ってたでしょ。そっちだって、理想ばかり言わずに会ってみろってカウンセラーに言われたから会ったんじゃないの?」 それは・・・
「ほら、そうでしょう?でもね、結局妥協なんてだめなのよ。そうだ赤井さん、お互い答えはもう出てるから、ここでカウンセラーにNGの“お見合い報告”しちゃいましょうよ」
何杯目かのワインを飲み干して、杉本さんはさっさと携帯を取り出した。
                                          つづく

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