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【ショートストーリー】恋してみたら? 第28話 「三姉妹 ①」

KOIGAKU / 2014年6月12日 9時32分

「ビビッとくるなんてドラマだけよ」
「男性は見た目じゃないの。誠実が一番」
           姉たちの言いそうな事は 想像が出来る

20140612

「彼女いない歴30年です」
などと言われて、一体どんな反応をすればいいのか。
それってギャグのつもり? 笑えってこと?
目の前の、もっさりした男性からそっと目を逸らして、恭子は溜息をつく。

三人姉妹の末っ子。
姉二人は学生時代からの恋を実らせ、すんなり嫁いだ。
美人姉妹とも言われ、自分も同じ様に“すんなり”いくと信じて疑わなかった。それなのに。

川原との出会いが恭子の人生を狂わせた。

出会いはーーー
大学2年の時アルバイトした喫茶店。
川原はマスターのヨット仲間だった。
IT企業経営、一回り年上の大人、スマートで優しい・・・
憧れが恋に変わるのに時間はかからなかった。
「可愛いね」、と誘われ、夢見心地でついていった。
もちろん彼に奥さんがいる事は知っていたけれど、若い恭子にはそれさえ刺激的な恋の要素に思えていたのだ。
結婚なんて眼中にない19才の頃には。

その関係が10年以上も、30才になるまで続くなんて想像もしていなかった。
30才?! 自分がそんな年齢になることだって、あの頃には考えられなかった。

もう限界、と思い始めたのはいつごろからだったろう。
姉たちにも心配されている。
「恭ちゃん、川原さんとどうかなれるなんて思ってるんじゃないでしょうね」
思ってるわけないでしょ!、笑って言ったが、
本当は心のどこかで期待していた。してきた。でも。
「相談室に入ったって言ったでしょ。お見合いしてみようと思うんだ」
冗談めかして告げた時、彼は笑って言ったっけ。
「俺お見合いってしたことない。どんな感じだったか後で教えてよ」
         ×       ×      ×

「・・・・・?」
「え? すいません、もう一度」
川原の事を考えていて聞き逃した。
「あ・・・ご趣味は?」
どうしてこうつまらない事しか聞けないのかしら?いっそ、
「そんな事言ってるから30年彼女できないんですよ!」
くらい言ってやりたくなる。一応、
「趣味はヨガと温泉巡りです」
にっこり笑って答えたけど。
川原に話したら、
「6才の時の元カノはどんな方だったんですか?、ぐらい聞いてやれよ」
なんてゲラゲラ笑うんだろうな。あ、言いそう言いそう。
思わずクスッと笑ってしまう。
「え? なんかおかしい事言いました? 僕」
お見合い相手三浦芳男は丸い目を大きくして乗り出した。
額から汗が噴き出していて、そんな所も恭子には受け入れ難い。
無理・・・・答えは出ている。

「付き合ってみなきゃ分からないでしょ」
「ビビッとくるなんてドラマだけよ」 「男性は見た目じゃないの。誠実が一番」
姉たちの言いそうな事は想像出来る。自分達は、ビビッと来た!と散々さわいで、見た目のいい恋人と結婚したくせに。

堅苦しく退屈な時間を終えホテルを出た恭子は、バッグから携帯を取り出した。
もう連絡しないと決めた筈のアドレスを表示させる。
あと一度だけ・・・そう心に言い聞かせながら、指を動かす。すぐ破ってしまう決意だということは、自分が一番分かっていたけれど。

                                   (つづく)

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