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【読みきりショートストーリー】恋と罪 「友達の彼」

KOIGAKU / 2014年8月13日 13時0分

“友達”から彼に LINEが届いた時
“私”は“友達の彼”と ベッドにいた

20140801花火

“どうして返信くれないの?”
ミカからシンちゃんにLINEが届いた時、私はシンちゃんとベッドにいた。
シンちゃんは黙ってスマホをサイドテーブルに置く。
「とりあえず何か返信したら?既読無視続けるなんて可哀想だよ」
私の言葉が聞こえてないみたいに、シンちゃんはまた覆い被さってきた。

“ちょっと時間くれ”でも、何でもいい。
返信さえくれれば、少しは気持ちが楽になる。
そんな女子の気持ちわかんないのかな、男は。
なんてね、彼氏奪っておいて言うことじゃないか。

 ミカは学生時代からの親友。
会社勤めはじめてからも、週に一度は会ってた。
飲みに行ったり、時間ない時はランチだけでも。
趣味も合うから、セールで色違いのニットを買ったり、一緒にヨガに通ったり。
恋人が出来たら一番に紹介しあうし、
お互いの彼氏と4人でBBQなんてのもしょっちゅうしてた。

 「こちらシンちゃん。デザイナーしてるんだ」
恥ずかしそうに紹介された時、正直羨ましかった。
私は彼と別れたばっかりだったし、ちょっと無愛想でシャイな感じが好みだったから。
ミカがトイレに立った隙にアドレス聞いてきたのはシンちゃんの方。
ってことはシャイでもないか。
だけど連絡来たのは一月も経ってからだった。
ミカから、映画に行ったとか、お泊まりしたとか、
「夏になったら花火大会に行くんだ」
なんて聞かされて、何だか苛立ち始めてたころ。

 シンちゃん、女の子っぽいミカより、サバサバ系の私みたいのが好みなんだって。
「オッパイもでかいしな」だってさ。
ミカは痩せてて、色白で、童顔だから、はたち位に見える。
反対に私は、大人顔で背が高いから年より上に見られるタイプ。
ずっとミカみたいになりたくてたまらなかった。
お揃いの服を買ったり、マネしてヨガ教室に行ったりしたのも、ミカになりたかったから。
このベッドにはじめて寝た時だって、
そりゃシンちゃんが好きだから嬉しかったんだけど、それより、
ミカも同じようにしたんだって想像したから、特別興奮したんだよね。

・・・シンちゃんのスマホが鳴いてる。
“ミズホといるんでしょ?”
“裏切りもの!何か言ってよ”
泣いてる。ミカが、すごく怒ってる。
どんな顔してるかまで私には分かる。

 シンちゃんは起き上がってテレビを付けた。
ニュースが花火大会の予告を流している。
“バイバイ。ミズホにも伝えて”
ミカのLINEは一方的に告げて・・・沈黙した。

「よし、花火大会でも行くか」
シンちゃんはスマホをリュックに放り込んで言った。
顔に似合わない低い声。でも今は何だか頼りない。
引き締まった身体。二の腕の筋肉も、しぼんで見える。
ミカに別れを告げられた。
もうミカのものじゃないと思ったら、なんだか急につまらなくなった。
小さい耳たぶ、背中のほくろや、汗の匂いだって好きだったけど、
この部屋や、ベッドと同じように色褪せて、突然過去の思い出に変わったみたい。

 急いで身支度をした。早く帰ってミカに連絡しなきゃ。
何とメールすれば?どういえば“裏切り者”じゃないって分かって貰える?
「どうでもいいじゃん、花火大会なんか」
私の声に反発するみたいに、どこからかドドーンという音が響き渡った。

                                                                     (おわり)

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