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【読みきりショートストーリー】 恋と罪 「昔のカレ」

KOIGAKU / 2014年8月20日 3時0分

FBで昔のカレと繋がった!
大人になったカレと私は、
雨の故郷で 10年ぶりに再会して・・・

昔の彼

 久しぶりの神戸は生憎の雨やったけど、それはそれで良かった。
お店から出た時、傘がうまく開かへん振りして、自然に相合い傘できるやん。
そうでもなしに、恋人の距離まで近づくのって難しいから、特に大人は。
もう10年も経ってるし。

 “北高の松川です。佐織だよな?”
冬樹が、FBに友達申請してくるなんて思ってもみぃひんかった。
出身高校も顔写真も公開してへんし、そもそもノリで登録しただけで、
ほとんど記事なんかアップしてへんかったから。
共通の友達にテニス部の島本クンがいたから分かったんやて。
FB恐るべし。
けど嬉しかったんも、ほんまのこと。

 それからは、FBなんかそっちのけで、メッセージのやりとりをした。
冬樹は、子供の写真とかアップしてて、それは正直ちょっとショックやったけど、今の冬樹の顔が見れて安心したってのもあんねん。

“夏は帰省せぇへんの?”
“冬樹に会えるんやったら帰ろかな”
“会おうよ”
とんとん拍子に話が進み、親が亡くなって以来3年振りの神戸に帰ってきたけど、会うまではさすがに緊張した。
 ・・・三宮の西口は思ったほど変わってへんかったけど、メガネをかけた冬樹はやっぱり大人の男の人の匂いがした。
向こうも、ロングヘアの私を見た事なかったから最初は戸惑ったみたい。

 けど、それは最初のうちだけ。
生田神社お参りして、学生カップルみたいに異人館行って・・・お好み食べて、昔のままのカフェを発見してキャーキャー騒いで。
そうしてるうちに、10年の空白はあっという間に消えてった。
 「・・・東京行くってゆうた時、止めて欲しかったのに」
「3年間一緒やったし、受験もあったからな。若かったんや」
正直に話せる所が昔とはちゃう。大人になったんやな、二人とも。

 「大学行ったら、もっといい彼女出来ると思ったんやろ?」
まあな、なんて笑うから肩を小突いた。冬樹はその手を掴んでギュッと握った。
「けど、3年も付き合う子はできへんかったで」
体育会系男子だった冬樹も、随分恋の上級者になったみたい。

 ホテルはあの頃には行けなかった高いとこ。
けど、気分が10年前に戻ってたから緊張せぇへんかった。
そりゃ28才にもなって、ちょっとは経験積んでるから、同じの筈はないねんけど。
なんかね、やっぱり初めてとはちゃうっていう感覚で。

 「来月結婚するねん」
ベッドやとサラリと言えた。冬樹はそれには答えず、
「また帰って来いよ」って。
「5年に1回ならええかな?」
「長すぎやろ!俺、禿げてまうで」
「3年に1回?」
クビを振る。
「ほんなら・・・1年に1回?」
もうひと声! なんて、ばかだな。
でも、楽になるんだな恋だけは。大人になると。
 あの頃、冬樹の言葉1つで一喜一憂して眠れなかったのが嘘みたい。

婚約者に不満なんかない。好きやし。
喧嘩したままやけど、帰ったら謝ろうって服を着ながら思ってる。
そやからね、こんな秘密が大人には1つ位必要なんかも。
 いい奥さんになる自信はあるよ。それとこれとは別の話。

                                     (おわり)

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