【恋学 読み切りショートストーリー】恋愛カウンセラー日記「妄想の恋人」
KOIGAKU / 2014年9月24日 7時53分
妄想の世界はたのしい・・・
でも閉じこもってていいのかな?
小説を読むのが好きだ。
退屈過ぎる日常を忘れて、刺激的な世界を妄想できるから。
妄想するのが、好きだ。
妄想の世界の私は、自由に恋が出来る。
奔放にだってなれる。
大きくて、肉厚な手で身体を撫でられて、喘ぎ声なんかあげちゃうんだ。
「年齢や職業、年収以外でこだわりの条件はありますか?」
と聞かれ、
「手の大きい人」
思わず言ったら、カウンセラーに笑われてしまった。
そんな項目はないらしい。
どうしても譲れない条件なのに。
私が、いいなと思う小説の主人公は、みんな大きな手だ。
なんて、会ったことはないけれど、妄想だから誰にも文句は言わせない。
文具メーカーに勤める36才。
20代の頃、人に紹介された男の人と何度かデートしたけれど、いつのまにか連絡が途絶えた。
一度だけキスした相手が、どんな手をしていたか思い出せない。
数ヶ月前、後輩の男性社員に理想的な手の持ち主をみつけた。
モチヅキ君は、重いファイルを運ぶのを手伝ってくれるし、私のことを、陰で「ババア」なんて言わない。それに・・・
昼休みにカフェで会ったら、手を振って隣を空けてくれた。気づかない振りして携帯を見たり、慌てて煙草を揉み消して出て行ったりもしなかった。
やっぱりって思った。理想の手の持ち主だから。
「タキタさんみたいに仕事が出来る人、憧れなんスよ」
「姉貴がいるせいか、年下より年上の方が話しやすいんだよなあ」
煙草をくわえると、手の平で顔が半分くらい隠れる。
カップを持ち上げる太い指にドキドキした。
いつのまにか“妄想の恋人”はモチヅキ君になった。
でも、妄想は唯一度のメールで唐突に終わった。
【お疲れ様。ミスのこと引き摺らずに頑張って下さい。望月さんの手は男らしくて、成功を掴める手だと思います。】
カフェで相談事をされた日の夜、考えに考えて送ったメール。
だが翌日、私は給湯室で派遣の女の子たちが喋っているのを聞いてしまった。
「何よいきなり、男らしい手って。ヤラシくない?」
「お局さま、手フェチなんじゃないの」
「ゲーだよね。モッチ−、キモいって騒いでたよお」
―――お見合い相手は写真に輪を掛けて平凡な感じの男性だった。
45才。趣味は読書と映画鑑賞。
「この頃、妄想の世界に浸るようになっちゃって。映画観たら、夢に金髪の美女が出てきたり、本を読んじゃ薄幸のヒロインを助けたくなったり。いやね、会社の女の子より、余程身近に感じられたりするんですよ。彼女らは異星人みたいで・・・」
よく喋る男だ。ひらひらと身振りを交える小さくて薄っぺらい手を見ている内に、なぜだか惨めで堪らなくなった。涙が込み上げて立ち上がる。
「待ってくださいよ!」
妄想男は、エレベーターの前まで追いかけて来た。
「怒らせたんならスミマセン。僕が言いたかったのは、それでもやっぱり本物がいいって事なんです。僕、楽しいんです。本物の女性と話すの久しぶりのせいかもしれないけど・・・いや、だって会ったばかりだし、好きになるかどうかは分からないけど・・・何て言うか」
荒い息が顔にかかった。現実の男は、それほどいい事は言ってくれない。でも。
「・・・何て言うか、好きになりそうな予感がします!」
妄想と違うのは、次に何が起こるか全く分からないところだ。
「戻りましょう」
差し出された小さい手は汗ばんで温かく、意外に強い力で私の心を包み込んだ。
(おわり)
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