韓国、産油国への期待で株価に熱気…だがエネルギー業界の反応は「静か」
KOREA WAVE / 2024年6月6日 9時35分
【KOREA WAVE】韓国政府が慶尚北道浦項(ポハン)の迎日(ヨンイル)湾沖で石油・ガスの埋蔵可能性を発表するなか、石油業界は様子見を続けている。株式市場は韓国が産油国になれるという期待感から関連する企業・機関の株価が急上昇し、熱気に包まれている。ただ、韓国企業参加に関する政府の言及がないうえ、経済性の評価結果がまだ出ておらず、関連業界は冷静さを保っている。
官庁と石油業界によると、東海(日本海)の深海石油・ガス田埋蔵基礎探査を実施した「アクトジオ(Act―Geo)」のビトール・アブレウ代表が5日、韓国を訪れた。
アクトジオ社は昨年末、浦項一帯の東海深海で少なくとも35億バレルから最大140億バレルの石油・ガスが埋蔵されている可能性があるとの分析結果を発表した地質探査専門コンサルティング企業だ。
韓国政府と韓国石油公社はアクトジオ社の結果を検証し、3日にユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が石油・ガス埋蔵の可能性を発表した経緯がある。ユン大統領は産業通商資源省の探査掘削計画を承認し、今年末には最初の掘削作業に入る。
◇「喜ぶには『時期尚早』…経済性評価が出てから」
掘削を通じて確認される量が本当に140億バレルあれば▽天然ガスは韓国国民が29年間▽石油は最大4年以上使用できる量だ。政府は東海の石油・ガス田の埋蔵価値が現時点でサムスン電子の時価総額の5倍の水準だとも述べている。サムスン電子の時価総額が約440兆ウォンであるため、約2200兆ウォンの価値があるということだ。
関連業界と専門家らは「まだ石油・ガスが埋蔵されている可能性が提起されただけであり、実際に掘削してみないとわからない。早急に喜ぶのは避けるべきだ」という雰囲気だ。
現在、韓国の資源開発探査は韓国石油公社が担当している。国内企業が掘削の経験が比較的少ないため、経験豊富な海外企業とまず組むことになる。原油掘削船としては、ノルウェーの油田開発企業シードリル社の「ウェストカペラ」が選ばれた。
石油開発事業を担うSKアースオンを子会社に持つSKイノベーションも“恩恵企業”として取り上げられているものの、やはり国内の掘削や探査とは関係がないとの立場だ。他のエネルギー・石油会社も「まだ見守る段階」という姿勢で共通している。
業界関係者は「経済性評価が出てから業界に与える影響力がわかるだろう」とみる。
また、別の業界関係者は「石油会社は原油を買う立場なので、バレル当たりの原油の価格がどれくらいか見当がつかなければ立場を明確にできない。現時点では政府が発表したことについてあれこれ言うのは難しい」と話している。
企業が注視する経済性評価は来年に出る予定だ。韓国石油公社の関係者は「通常、掘削作業には3カ月ほどかかる。来年上半期にはある程度の経済性がわかるだろう。掘削作業に国内企業が含まれるかどうかはもう少し時間がかかりそうだ」との見解を示す。
◇環境団体に反対の声
石油・ガスの存在を確認するためには深海に穴を掘る必要がある。掘削探査を進めるには1カ所につき1000億ウォン以上の予算がかかる。政府が石油・ガス田探査の掘削成功率を20%と推定している点を考慮すると、少なくとも5回以上の試行が必要だ。
つまり、掘削だけで5000億ウォン以上がかかる可能性がある。掘削に成功して資源の存在を確認しても、それを生産した時に経済性があるかどうかも計算する必要がある。全部掘ったのに経済性がなければ、数千億ウォンの費用がそのまま飛んでしまうことになる。
漢陽大資源環境工学科のイ・グンサン教授は「経済性の評価以前に実際に石油があるかどうか井戸を掘ってみなければわからない。(韓国石油公社が)深海掘削をしたことがなく、他の地域よりも時間や費用が多くかかるだろう」とみる。そのうえで「あまり知られていない地域なので、掘削作業中に爆発などのさまざまな変数が発生する可能性がある。掘削経験が豊富な海外企業を招いて進める可能性が高い」と指摘する。
近年は、各国政府が化石燃料から再生可能エネルギーへのエネルギー転換を進めている時期だ。再生可能エネルギーへの投資にも不足する公的資金を、化石燃料生産に注ぎ込むという政府の計画に、環境団体は不満を隠せない。
韓国の環境団体「気候ソリューション」は「政府が国際社会に約束したカーボンニュートラル計画に全面的に反するだけでなく、経済的にも妥当性のない旧時代のエネルギー安保スローガンの踏襲に過ぎない。韓国が毎年排出する温室効果ガスの7倍を超える規模の温室効果ガスを出すかもしれないガス田を掘り出して燃やすという計画は、カーボンニュートラル達成を数年遅らせるのと同じだ」と批判している。
(c)KOREA WAVE/AFPBB News
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